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第六章 悪女
別れ
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その夜、一台の荷馬車がひっそりと都を出た。
都から十分に離れた場所で、馬車は止まった。
荷台にかぶせられていた布がもぞもぞと蠢き、そこから旬果と泰風、そして洪周が出てくる。
旬果は洪周の手をぎゅっと握りしめる。
「洪周。元気でね」
洪兄妹はすでに処刑された。二人を追う者はもう誰もいない。
領地は失ったが、洪周たちは改めて人生をやり直すことになる。
洪周は目を伏せる。
「……公主様」
「旬果で良い。ううん、旬果って呼んで欲しい」
「……旬果、ありがとう」
「お礼なんて言って貰えるようなことはしてないわ。結局、領地は失ってしまうし……」
「大丈夫。陛下より御下賜金を頂いたから、それで十分」
仁傑は頷く。
「私もおります。妹一人養うだけの甲斐性はございます」
旬果は微笑んだ。
「……本当にあの馬鹿な弟のせいでごめんね」
すると、洪周は小さく吹き出す。
旬果はきょとんとした。
「どうしたの?」
「ごめん。でも本当に陛下のお姉さんなんだ、って」
旬果は苦笑する。
「まあ……実感はまだ薄いんだけど」
洪周は微笑んだ。
「心配しないで。私はこれで良かったと思ってるの。ずっと名門っていう名前を背負わされて、でもそれに実が伴わないから、自分たちを繕う為に無駄な苦労を続けて……。そこから解放してもらえて、新しい人生を生きることを許して頂けた……。これだけでもう十分過ぎるから」
「洪周がそう思ってくれるのなら、良かった」
洪周は表情を曇らせ、握りあった手に力を込めた。
「ね、旬果。私と一緒に来ない? あんな場所……あなたには似合わないわ……。優しすぎるもの」
旬果は微笑みながら、小さく首を横に振った。
「ありがとう。でも、これが私の生きる道だから」
「そう……。あなたが、今の気持ちを失わないよう、祈ってるわ」
「うん」
洪周は兄と一緒に御者席に乗り込むと、一度旬果を振り返る。
旬果は、洪兄妹の乗った馬車が見えなくなるまで見送った。
空を見る。
今日はよく晴れ渡り、冴え冴えとした月明かりも、満点の星空も見ることが出来た。
旬果は小さく息を吐き、泰風を振り返った。
「泰風。帰ろっか」
「はい」
泰風がそっと手を差し出してくれる。
旬果を手を取り、ぎゅっと握りしめた。温かさが心地よい。
「泰風。これからも、よろしくね」
「こちらこそ……よろしくお願い致します」
泰風は片膝を付き、旬果の目を見て言った。
都から十分に離れた場所で、馬車は止まった。
荷台にかぶせられていた布がもぞもぞと蠢き、そこから旬果と泰風、そして洪周が出てくる。
旬果は洪周の手をぎゅっと握りしめる。
「洪周。元気でね」
洪兄妹はすでに処刑された。二人を追う者はもう誰もいない。
領地は失ったが、洪周たちは改めて人生をやり直すことになる。
洪周は目を伏せる。
「……公主様」
「旬果で良い。ううん、旬果って呼んで欲しい」
「……旬果、ありがとう」
「お礼なんて言って貰えるようなことはしてないわ。結局、領地は失ってしまうし……」
「大丈夫。陛下より御下賜金を頂いたから、それで十分」
仁傑は頷く。
「私もおります。妹一人養うだけの甲斐性はございます」
旬果は微笑んだ。
「……本当にあの馬鹿な弟のせいでごめんね」
すると、洪周は小さく吹き出す。
旬果はきょとんとした。
「どうしたの?」
「ごめん。でも本当に陛下のお姉さんなんだ、って」
旬果は苦笑する。
「まあ……実感はまだ薄いんだけど」
洪周は微笑んだ。
「心配しないで。私はこれで良かったと思ってるの。ずっと名門っていう名前を背負わされて、でもそれに実が伴わないから、自分たちを繕う為に無駄な苦労を続けて……。そこから解放してもらえて、新しい人生を生きることを許して頂けた……。これだけでもう十分過ぎるから」
「洪周がそう思ってくれるのなら、良かった」
洪周は表情を曇らせ、握りあった手に力を込めた。
「ね、旬果。私と一緒に来ない? あんな場所……あなたには似合わないわ……。優しすぎるもの」
旬果は微笑みながら、小さく首を横に振った。
「ありがとう。でも、これが私の生きる道だから」
「そう……。あなたが、今の気持ちを失わないよう、祈ってるわ」
「うん」
洪周は兄と一緒に御者席に乗り込むと、一度旬果を振り返る。
旬果は、洪兄妹の乗った馬車が見えなくなるまで見送った。
空を見る。
今日はよく晴れ渡り、冴え冴えとした月明かりも、満点の星空も見ることが出来た。
旬果は小さく息を吐き、泰風を振り返った。
「泰風。帰ろっか」
「はい」
泰風がそっと手を差し出してくれる。
旬果を手を取り、ぎゅっと握りしめた。温かさが心地よい。
「泰風。これからも、よろしくね」
「こちらこそ……よろしくお願い致します」
泰風は片膝を付き、旬果の目を見て言った。
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