皇帝(実の弟)から悪女になれと言われ、混乱しています!

魚谷

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第六章 悪女

処刑劇

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 朝議での決定から五日後。
 都大路に大規模な処刑場が、設けられた。
 処刑場の周囲は錦衣衛が囲み、さらに錦衣衛の外側には、数百人はいるであろう群衆がひしめている。

 瑛国建国以来の公開処刑である。
 刑場を見下ろす位置に設けられた桟敷にいるのが、瑛景と旬果である。
 いや。瑛景と旬果のみ、と言うべきだろうか。

 他の空席は劉皇太后を始め、他の妃嬪《ひひん》たちが欠席したからだ。
 刑場に手枷足枷《てかせあしかせ》をされた二人の人間が引っ立てられると、群衆のざわめきの声は一層高まった。
 二人の罪人は、頭にずた袋をかぶせられていた。
 その後に、死刑執行人が続く。

 執行人もまた覆面をしているが、その中身は泰風である。
 何故、泰風でなければ駄目なのか。それは処刑される者が、洪兄妹ではないからだ。
 元々死刑が決まった罪人だ。無論、二人が声をあげられないよう、袋の下では猿轡《さるぐつわ》を噛ませていた。
 それを眺める桟敷席《さじきせき》。

 瑛景は旬果に言う。
「姉上。たとえ罪人でも、死刑は見て気持ちの良いものではないでしょう。目を閉じられていても構いませんよ?」
 しかし旬果は首を横に振る。
「そういう訳にはいかないでしょ。私が下した結果でもあるんだから、見届ける責務があるわ」
「立派ですね」
「当然のことよ」
 瑛景は小さく笑う。
「そんなに変?」
 瑛景は、「いいえ」とかぶりを振った。
「やはり姉上は皇帝の器です。父上が期待されていたことはあります。……正直、嫉妬してしまいます」

 弟の表情の翳《かげ》りを晴らそうと、旬果は笑いかけた。
「そんなこと言わないの。あなたは立派よ。少なくとも、この国をどうにか立て直そうとしているんだもの」
 瑛景は小さく頷く。
「ありがとうございます。姉上にそう言って頂けて、私は幸せ者です」
 二人の罪人が、首切り台に縛り付けられる。

 泰風が一瞬、座敷席を見上げる。
 旬果は、泰風に見えるかどうかは分からなかったが、首を力強く縦に振った。

 そしてこの国初めての、貴顕の死刑(あくまで外から見れば、だが)が執行された――。
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