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独占欲
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――暴室に閉じ込められてどれほどの時間が経っただろうか。
明かり取りの窓から差し込む日射しが翳り、身体の冷えが一段と深くなったことで、日が落ちたのだと分かった。
臥榻の上で膝を丸め、じっとしていると不意に扉が開く。
燭台の灯りに射られ、目をすがめた。
「蒼花」
目が馴れ、ゆっくりと視野が広がる。
「……陛下」
自分をこの牢獄においやった張本人――英麟が、白皙のなかにたたえたその切れ長の瞳のなかには一年前にはなかったはずの、険の強い光があった。
「下がれ」
付き従っていた宦官たちに命じれば、恭しい礼と共に去って行く。
背後で扉がギシギシと軋みながら閉じられた。
「蒼花」
目の前にいるのが本物の英麟であることが、信じられなかった。
春風のように和やかな雰囲気は微塵もなく、獰猛なけだものと対峙しているようなまがまがしく、何よりも笑顔が似合っていた彼の顔が、今はただただ恐ろしかった。
「陛下……」
「元気でいたか」
英麟の戯れ言を無視して、蒼花は跪いた。
何をするつもりだと、英麟は怪訝そうにした。
「私がここにいるのは陛下の求めを拒んだから、でしょうか」
英麟は面白そうに口元にうっすらと笑みを湛えて、続きを促す。
「奢るな。俺は皇帝だ。すべては望みのまま。それが、貴様ごとき元奴隷一人のために、そこまでするわけがない」
「ではなぜ、皇太后様の居室へあのような仕打ちを……。私など、もとより陛下と皇太后様の慈悲を賜り、今、こうして生きている身の上。どうなっても構いませんが、あれは……」
「死んではもう使えまい。死人のためにとっておくには贅沢すぎる。処分するほかあるまい?」
「皇太后様は、陛下のお母上代わりでは――」
「よく回る口だ。お前など、皇太后の処分のおまけにすぎないというのに。皇太后のそばで長く仕えすぎて、この俺と対等に口がきけると、錯覚したかっ!」
顎を乱暴に掴まれ、無理矢理に仰がされる。
顎が今にも砕かれんばかりに軋る。
「お前は、どうして皇太后にそこまで忠節を尽くす? お前は不興を買って遠ざけられ続けたんだぞ」
心に刃が刺さる。ひとたび口を開くと、胸を衝き上げるものがこぼれてしまいそうで、必死に噤んだ。
「……自分が俺の慈悲を賜り生きている、と言ったな?」
小さく頷いた。
英麟の目の中にある残忍な光が強くなったように見えた。
「ならば、お前は俺のものだ。お前の心も、身体も……。そうだ。一週間前、最初からこうしておけばよかった」
(陛下……っ)
本当に、あの穏やかな方なのかと、話を聞くたびに頭が混乱してくる。何か悪い夢をみているよう……。
英麟は顎を掴んでいた手を跳ね上げた。
「陛下、一体、どうされたのですか……っ」
「黙れっ!」
平手が強かに頬を打てば、石の床に、倒れ伏す。
その衝撃で簪が外れ、髻がほどけた。
起き上がろうとすると、英麟が覆い被さってきた。
その重みに、息が苦しくなり、身動ぐこともままならない。
英麟の無骨な手が衣を引き剥がしてくる。
「い、いやっ……」
石室に悲鳴が劈くが、たちまち凍り付いてしまうかのように消えてなくなってしまう。
「俺の情けを受けられるんだぞ。なぜ逆らう? 誰もが悦ぶことだろうが」
「や、やめてください……陛下っ!」
身体をどれほど必死に守ろうとしても、男の力に逆らえるわけもない。
「ぁっ!」
首筋に顔を埋められ、舐められる。ぞくりと肌が震えた。
胸元で結ばれていた紐がほどかれ、裙がはだけられ、胸を露わにさせられてしまう。
「や!」
胸を隠そうとするが、手首を痛いくらいに掴まれ、こじ開けられてしまう。
豊かな胸丘を握りしめられる。
「い、痛い!」
力加減のない接触に、肌がひりついた。
揺らいだ視界の中にいる英麟の獰猛な眼差しが恐ろしく、たまらず顔を背けてしまう。
「俺を見ろっ」
顎を掴まれるや、無理矢理振りかえさせれ、唇を奪われてしまう。
英麟の唇はかさつき、厚みが薄い。
こんなことは嫌なのに、触れあう唇同士は吸い付いてしまう。
「っ!?」
行為そのものは愛する男女がおこなう営みのはずなのに、蒼花の心は悲しみに戦慄いた。
じたばたと四肢を動かし、英麟を押しのけようとするが、厚みのある男の体躯は巌のようにびくともしない。
「じゃじゃ馬めッ」
英麟は余裕を感じさせる笑みをみせ、抜き去った腰帯で蒼花の両手首を後ろ手に縛り上げてしまう。
「い、痛いっ……」
さらに唇に温かく柔らかなものが押しつけられる。
それが舌と分かり、驚きのあまり口元の力が緩んでしまえば、口内を塞ぐような舌の動きにたちまち絡めとられてしまう。
(あぁ、ダメです、陛下。こんなこと……っ)
口内を探られれば、首筋がゾクゾクとした。
縮み上がった舌を痛いくらいきつく吸われる。
それと共に分厚く、皮膚の硬い手が乳房を絞ってきた。
「んう……っ」
痛みがはしり、いやいやとかぶりを振ったが、英麟の手はとまらない。
乳房のいただきを指の腹でまさぐられれば、硬く充血してしまう。
「なんだかんだとお前の身体はやる気のようじゃないか」
言葉の刃が、心を無残に切り裂く。
「ち、違い……ます……これは……っ」
目の前にいるのが英麟という同名の、まったく別人だと信じたい。
しかしその顔や声は、紛れもない、想い人だった。
「強情なヤツだ」
唇を塞いでいた英麟の顔が離れたかと思えば、胸元に唇が寄せられ、甘紅色に色づいたとがりを口に含まれた。
「あぁっ」
英麟の口内の熱が染みいれば、身体が勝手に反応してしまう。
舌で転がされ、こねられ、そうかと思えば、チュッ……と吸われる。
「んッ……」
意思を裏切った肉体はあまりに単純に反応してしまう。
(ダメ。こんな声をあげたら、まるで悦んでるみたいだわ……っ)
歯を立てられれば痛みがえる。
「陛下、痛い……っ」
「その割に良い声を出すな」
英麟はくつくつと笑った。
「へ、陛下、ああ……っ!」
両の乳丘をそっと寄せ集められ、いただきをいっぺんに吸い尽くされる。わざとらしく唾液を弾けさせ、吸われているという肉感を嫌が応にも感じさせられてしまう。
「な、なりません、殿下、なりません……っ!」
「感じているくせに」
「そ、そんなこと、ありません……っ」
目を潤ませ、頬を色づかせていることなど、蒼花は思いもよらなかった。
「聞き分けのない女だ」
裾をまくりあげられ、足の間に腕が押し入ってくる。
「ひゃっ……」
股の付け根に指が到達すれば、声が戦慄いてしまう。
指が無遠慮に秘裂をまさぐってくる。
恥毛をかきまぜられ、敏感な部分を刺激された。
「だ、め……っ!」
違和感に腰を揺らしてしまう。
「駄目だと? こちらはそうは言っていないぞ」
狭い秘道を乱暴に掻き混ぜられれば、くちゅくちゅという糸引く音が弾けた。
その音を聞かせられると、首筋まで紅潮してしまう。
「あぁっ、ああっ……」
とろとろになった蜜がほじくり出されてしまえば、肉芯が熱を帯び、背筋をゾクゾクと震えた。
英麟の手戯にあわせてどうしようもなく感じてしまう弱い身体への情けなさと、戸惑うばかりの理性とが、胸中で絡み合い、涙が頬を伝う。
「牝め、すっかり濡れそぼっているじゃないか。いやだ、やめてというのは男を誘う文句か? そう言えばお前は売られたのだったな。お前はあの時、何もしていなかったと言っていたが、本当か? 商家の主人の粗末なものを一体何度、ここで咥えこんだんだ。その主人にどれだけ乞うた?」
動きは荒々しくなり、狭隘を嬲る。
「い、痛いです! 指を、ぬ、脱いてください……っ!」
腕を封じられただけでこんなにも不自由になるとは思えなかった。やれることといえば、身体を左右に小さく揺することくらいだ。
「こんなに狭苦しく、俺の指を今にも食いちぎらんばかりか。処女を装うことすら覚えさせられたかっ」
英麟の言葉は発されるごとに憎悪の色が深く滲んでいる。
「見ろ」
股の間から抜いた手を、灯りにかざしてみせる。指先はびしょびしょに濡れ、ふやけ、温かな光を浴びててらてらとぬめ輝いた。
「や、やめてください……っ!」
とても見てはいられず、目を伏せてしまう。
「それは、へ、陛下が、い、いじったから、です……」
「ならば、お前はあくまで俺のせいだと言い張るのか、己の淫乱を棚上げしてか。ならば、確かめてやろう。お前も皇太后同様、俺を騙して、裏で笑っていたことを示してやるっ!」
(え?)
聞き返すことなどもちろんできなかった。
英麟は衣を脱ぎ捨て、牡を剥き出しに舌。
藻掻くことしかできない身ではどうしようもない。両足を抱えられ、足の間に英麟が身をねじこんでくる。
身体に汗が浮いている。
こんな状況なのに、そのうつくしさに、一瞬、見とれてしまう。
均整の取られたその身体に。
「っ」
指なんて問題にならない太さの肉塊が押しつけられ、ねじこまれる。
身体が股から二つに引き裂かれんばかりの痛みに強張る。悲鳴なんてあげることもできないほどの窒息感に、眉間に深い皺を刻んでしまう。
皇太后様に召し抱えられて以来、感じたことのなかった苦悶。
「見ろ、化けの皮をはいでやったぞ、お前は……」
言葉が途切れた。
英麟は、蝋燭の揺らぐ光によって浮かび上がる、太柱に貫かれ滲んだ鮮やかな色を目にしたのだ。
(陛下。決して、穢れた身などではございません……わ、私は……っ)
英麟は無言で身体を揺する。
「ん……ん……」
下腹を押し上げ、ねじこまれる陽根の存在感に、呻きがこぼれる。
膣壁と牡暴が擦れるたび、傷口を躙られるような痛みがはしる。
蒼花は身をかすかにねじり、少しでも痛みから遠ざかろうとした。
揺それでも全身を揺さぶられ、掻き混ぜられる。
「ぁ……ああ……」
そんな激流のような動きの中で、ひりつく下腹部の痛みが薄れ、温かいぬるま湯につかるような感覚が芽生えはじめる。
(どうして……)
抉られ、擦られするたびに甘いひりつきが走る。
手足がそのたびに緩く動く。
(お願いします。陛下、お気づきにならないで下さい……っ)
ついさっきまで生娘であったのに、もう感じ始めている。
しかし幸運にも貪ることに夢中な英麟は気づかないようだった。
口づけが容易にできてしまうほどの距離に迫る英麟が激しく前後に身体を揺らしつづけ、肌にかかる熱い息吹が、汗ばんだ身体を溶かす。
(だ、だめえ……これ以上されちゃったら、おかしくなって……)
秘園から巻き起こる愉悦の波が身体に波紋をつくる。
このまま身をゆだねてしまいそうだった。
必死に抗おうとするが、どうにもならない。
最初こそ身体が引き裂けてしまいそうだと思うほどの剛直を、締め付けるのが自分でもはっきりと分かる。
「っく……!」
戦慄く逸物が膨れあがる。
嵐のような突き込みが急迫へと変貌する。
その小刻みな動きは、人買いから口伝で教えられたから知っている。
――男の達する瞬間をよく考えるんだ。中に出されるな。そうしたら将来、妓楼へ行った時に商売がやりにくくなるからな……。
「だ、だめ」
ついこぼれた声が英麟を刺激する。
「お前は妊娠しろ。お前の子までも俺が嬲ってやろうっ!」
子種だけは……。懸命に逃がそうとする腰を掴まれ、引き寄せられる。
ガンと頭の底にまで響くような刺激に、「ぁああっ」と涕泣を漏らしてしまう。
そう思った次の瞬間、精液が迸る。
「ああっ……だ、め……です……ああぁぁっ……」
汗ばんだ総身を戦慄かせ、蒼花は果ててしまう。
お腹の中に、温かいものがどろどろと注がれてしまえば、意識は真っ赤に爛れ、深い絶頂感に身を打たれた。
揺らめき、波打ち、茫洋とする意識の中、
(だめ、に、妊娠……して……)
自分のような慈悲を賜り、ようやく生きているような人間が、万が一にも子を孕むことなどあってはならない。
たとえそれが陵辱の結果であったとしても――。
とうの救いの主の英麟に嬲られながら、蒼花の心はそれを第一に考えてしまうのだ。
身体を離した英麟は衣をつけていく。
蒼花は乱れたまま臥榻に横たわり、心身は疲労していたが、それでもまだ意識はしっかりと保っていた。
ゆるゆると身を起こし、臥榻から降り立ち、跪く。
「……陛下」
英麟が振り返る。その眼差しは汚物を見るような蔑みに満ちていた。
「一つ、お教えください」
「何だ」
英麟の声が石室に、冷たく響いた。
「先程、陛下は仰せになりました――皇太后同様は陛下を騙して、裏で笑っていた……と。それは、どういうことなのでしょうか」
「何だ、皇太后から何も聞いていなかったのか。――皇太后はな、俺の母を殺したんだ。そのことをおくびにも出さないどころか、己の欲求に従って権力を欲しいままにした」
「そんな、皇太后様が……」
「まぁ、皇太后から遠ざけられたお前には分からないだろうな。」
言葉に詰まる。
英麟の母親が亡くなったのは、彼がまだ十歳の時らしいということが、話し好きの女官から聞いたことがあった。流行病とそのときには言っていたが。
「俺は、あの女が築いてきた、そばにおいていたもの……すべてをぶちこわすつもりだ。もちろん、お前も」
英麟は閉ざされた扉に「開けろ」と言えば、扉が開き、かがり火で赤々と照らされた通路へと消えていった。
そして扉が重たい音を響かせ、閉ざされた。
明かり取りの窓から差し込む日射しが翳り、身体の冷えが一段と深くなったことで、日が落ちたのだと分かった。
臥榻の上で膝を丸め、じっとしていると不意に扉が開く。
燭台の灯りに射られ、目をすがめた。
「蒼花」
目が馴れ、ゆっくりと視野が広がる。
「……陛下」
自分をこの牢獄においやった張本人――英麟が、白皙のなかにたたえたその切れ長の瞳のなかには一年前にはなかったはずの、険の強い光があった。
「下がれ」
付き従っていた宦官たちに命じれば、恭しい礼と共に去って行く。
背後で扉がギシギシと軋みながら閉じられた。
「蒼花」
目の前にいるのが本物の英麟であることが、信じられなかった。
春風のように和やかな雰囲気は微塵もなく、獰猛なけだものと対峙しているようなまがまがしく、何よりも笑顔が似合っていた彼の顔が、今はただただ恐ろしかった。
「陛下……」
「元気でいたか」
英麟の戯れ言を無視して、蒼花は跪いた。
何をするつもりだと、英麟は怪訝そうにした。
「私がここにいるのは陛下の求めを拒んだから、でしょうか」
英麟は面白そうに口元にうっすらと笑みを湛えて、続きを促す。
「奢るな。俺は皇帝だ。すべては望みのまま。それが、貴様ごとき元奴隷一人のために、そこまでするわけがない」
「ではなぜ、皇太后様の居室へあのような仕打ちを……。私など、もとより陛下と皇太后様の慈悲を賜り、今、こうして生きている身の上。どうなっても構いませんが、あれは……」
「死んではもう使えまい。死人のためにとっておくには贅沢すぎる。処分するほかあるまい?」
「皇太后様は、陛下のお母上代わりでは――」
「よく回る口だ。お前など、皇太后の処分のおまけにすぎないというのに。皇太后のそばで長く仕えすぎて、この俺と対等に口がきけると、錯覚したかっ!」
顎を乱暴に掴まれ、無理矢理に仰がされる。
顎が今にも砕かれんばかりに軋る。
「お前は、どうして皇太后にそこまで忠節を尽くす? お前は不興を買って遠ざけられ続けたんだぞ」
心に刃が刺さる。ひとたび口を開くと、胸を衝き上げるものがこぼれてしまいそうで、必死に噤んだ。
「……自分が俺の慈悲を賜り生きている、と言ったな?」
小さく頷いた。
英麟の目の中にある残忍な光が強くなったように見えた。
「ならば、お前は俺のものだ。お前の心も、身体も……。そうだ。一週間前、最初からこうしておけばよかった」
(陛下……っ)
本当に、あの穏やかな方なのかと、話を聞くたびに頭が混乱してくる。何か悪い夢をみているよう……。
英麟は顎を掴んでいた手を跳ね上げた。
「陛下、一体、どうされたのですか……っ」
「黙れっ!」
平手が強かに頬を打てば、石の床に、倒れ伏す。
その衝撃で簪が外れ、髻がほどけた。
起き上がろうとすると、英麟が覆い被さってきた。
その重みに、息が苦しくなり、身動ぐこともままならない。
英麟の無骨な手が衣を引き剥がしてくる。
「い、いやっ……」
石室に悲鳴が劈くが、たちまち凍り付いてしまうかのように消えてなくなってしまう。
「俺の情けを受けられるんだぞ。なぜ逆らう? 誰もが悦ぶことだろうが」
「や、やめてください……陛下っ!」
身体をどれほど必死に守ろうとしても、男の力に逆らえるわけもない。
「ぁっ!」
首筋に顔を埋められ、舐められる。ぞくりと肌が震えた。
胸元で結ばれていた紐がほどかれ、裙がはだけられ、胸を露わにさせられてしまう。
「や!」
胸を隠そうとするが、手首を痛いくらいに掴まれ、こじ開けられてしまう。
豊かな胸丘を握りしめられる。
「い、痛い!」
力加減のない接触に、肌がひりついた。
揺らいだ視界の中にいる英麟の獰猛な眼差しが恐ろしく、たまらず顔を背けてしまう。
「俺を見ろっ」
顎を掴まれるや、無理矢理振りかえさせれ、唇を奪われてしまう。
英麟の唇はかさつき、厚みが薄い。
こんなことは嫌なのに、触れあう唇同士は吸い付いてしまう。
「っ!?」
行為そのものは愛する男女がおこなう営みのはずなのに、蒼花の心は悲しみに戦慄いた。
じたばたと四肢を動かし、英麟を押しのけようとするが、厚みのある男の体躯は巌のようにびくともしない。
「じゃじゃ馬めッ」
英麟は余裕を感じさせる笑みをみせ、抜き去った腰帯で蒼花の両手首を後ろ手に縛り上げてしまう。
「い、痛いっ……」
さらに唇に温かく柔らかなものが押しつけられる。
それが舌と分かり、驚きのあまり口元の力が緩んでしまえば、口内を塞ぐような舌の動きにたちまち絡めとられてしまう。
(あぁ、ダメです、陛下。こんなこと……っ)
口内を探られれば、首筋がゾクゾクとした。
縮み上がった舌を痛いくらいきつく吸われる。
それと共に分厚く、皮膚の硬い手が乳房を絞ってきた。
「んう……っ」
痛みがはしり、いやいやとかぶりを振ったが、英麟の手はとまらない。
乳房のいただきを指の腹でまさぐられれば、硬く充血してしまう。
「なんだかんだとお前の身体はやる気のようじゃないか」
言葉の刃が、心を無残に切り裂く。
「ち、違い……ます……これは……っ」
目の前にいるのが英麟という同名の、まったく別人だと信じたい。
しかしその顔や声は、紛れもない、想い人だった。
「強情なヤツだ」
唇を塞いでいた英麟の顔が離れたかと思えば、胸元に唇が寄せられ、甘紅色に色づいたとがりを口に含まれた。
「あぁっ」
英麟の口内の熱が染みいれば、身体が勝手に反応してしまう。
舌で転がされ、こねられ、そうかと思えば、チュッ……と吸われる。
「んッ……」
意思を裏切った肉体はあまりに単純に反応してしまう。
(ダメ。こんな声をあげたら、まるで悦んでるみたいだわ……っ)
歯を立てられれば痛みがえる。
「陛下、痛い……っ」
「その割に良い声を出すな」
英麟はくつくつと笑った。
「へ、陛下、ああ……っ!」
両の乳丘をそっと寄せ集められ、いただきをいっぺんに吸い尽くされる。わざとらしく唾液を弾けさせ、吸われているという肉感を嫌が応にも感じさせられてしまう。
「な、なりません、殿下、なりません……っ!」
「感じているくせに」
「そ、そんなこと、ありません……っ」
目を潤ませ、頬を色づかせていることなど、蒼花は思いもよらなかった。
「聞き分けのない女だ」
裾をまくりあげられ、足の間に腕が押し入ってくる。
「ひゃっ……」
股の付け根に指が到達すれば、声が戦慄いてしまう。
指が無遠慮に秘裂をまさぐってくる。
恥毛をかきまぜられ、敏感な部分を刺激された。
「だ、め……っ!」
違和感に腰を揺らしてしまう。
「駄目だと? こちらはそうは言っていないぞ」
狭い秘道を乱暴に掻き混ぜられれば、くちゅくちゅという糸引く音が弾けた。
その音を聞かせられると、首筋まで紅潮してしまう。
「あぁっ、ああっ……」
とろとろになった蜜がほじくり出されてしまえば、肉芯が熱を帯び、背筋をゾクゾクと震えた。
英麟の手戯にあわせてどうしようもなく感じてしまう弱い身体への情けなさと、戸惑うばかりの理性とが、胸中で絡み合い、涙が頬を伝う。
「牝め、すっかり濡れそぼっているじゃないか。いやだ、やめてというのは男を誘う文句か? そう言えばお前は売られたのだったな。お前はあの時、何もしていなかったと言っていたが、本当か? 商家の主人の粗末なものを一体何度、ここで咥えこんだんだ。その主人にどれだけ乞うた?」
動きは荒々しくなり、狭隘を嬲る。
「い、痛いです! 指を、ぬ、脱いてください……っ!」
腕を封じられただけでこんなにも不自由になるとは思えなかった。やれることといえば、身体を左右に小さく揺することくらいだ。
「こんなに狭苦しく、俺の指を今にも食いちぎらんばかりか。処女を装うことすら覚えさせられたかっ」
英麟の言葉は発されるごとに憎悪の色が深く滲んでいる。
「見ろ」
股の間から抜いた手を、灯りにかざしてみせる。指先はびしょびしょに濡れ、ふやけ、温かな光を浴びててらてらとぬめ輝いた。
「や、やめてください……っ!」
とても見てはいられず、目を伏せてしまう。
「それは、へ、陛下が、い、いじったから、です……」
「ならば、お前はあくまで俺のせいだと言い張るのか、己の淫乱を棚上げしてか。ならば、確かめてやろう。お前も皇太后同様、俺を騙して、裏で笑っていたことを示してやるっ!」
(え?)
聞き返すことなどもちろんできなかった。
英麟は衣を脱ぎ捨て、牡を剥き出しに舌。
藻掻くことしかできない身ではどうしようもない。両足を抱えられ、足の間に英麟が身をねじこんでくる。
身体に汗が浮いている。
こんな状況なのに、そのうつくしさに、一瞬、見とれてしまう。
均整の取られたその身体に。
「っ」
指なんて問題にならない太さの肉塊が押しつけられ、ねじこまれる。
身体が股から二つに引き裂かれんばかりの痛みに強張る。悲鳴なんてあげることもできないほどの窒息感に、眉間に深い皺を刻んでしまう。
皇太后様に召し抱えられて以来、感じたことのなかった苦悶。
「見ろ、化けの皮をはいでやったぞ、お前は……」
言葉が途切れた。
英麟は、蝋燭の揺らぐ光によって浮かび上がる、太柱に貫かれ滲んだ鮮やかな色を目にしたのだ。
(陛下。決して、穢れた身などではございません……わ、私は……っ)
英麟は無言で身体を揺する。
「ん……ん……」
下腹を押し上げ、ねじこまれる陽根の存在感に、呻きがこぼれる。
膣壁と牡暴が擦れるたび、傷口を躙られるような痛みがはしる。
蒼花は身をかすかにねじり、少しでも痛みから遠ざかろうとした。
揺それでも全身を揺さぶられ、掻き混ぜられる。
「ぁ……ああ……」
そんな激流のような動きの中で、ひりつく下腹部の痛みが薄れ、温かいぬるま湯につかるような感覚が芽生えはじめる。
(どうして……)
抉られ、擦られするたびに甘いひりつきが走る。
手足がそのたびに緩く動く。
(お願いします。陛下、お気づきにならないで下さい……っ)
ついさっきまで生娘であったのに、もう感じ始めている。
しかし幸運にも貪ることに夢中な英麟は気づかないようだった。
口づけが容易にできてしまうほどの距離に迫る英麟が激しく前後に身体を揺らしつづけ、肌にかかる熱い息吹が、汗ばんだ身体を溶かす。
(だ、だめえ……これ以上されちゃったら、おかしくなって……)
秘園から巻き起こる愉悦の波が身体に波紋をつくる。
このまま身をゆだねてしまいそうだった。
必死に抗おうとするが、どうにもならない。
最初こそ身体が引き裂けてしまいそうだと思うほどの剛直を、締め付けるのが自分でもはっきりと分かる。
「っく……!」
戦慄く逸物が膨れあがる。
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その小刻みな動きは、人買いから口伝で教えられたから知っている。
――男の達する瞬間をよく考えるんだ。中に出されるな。そうしたら将来、妓楼へ行った時に商売がやりにくくなるからな……。
「だ、だめ」
ついこぼれた声が英麟を刺激する。
「お前は妊娠しろ。お前の子までも俺が嬲ってやろうっ!」
子種だけは……。懸命に逃がそうとする腰を掴まれ、引き寄せられる。
ガンと頭の底にまで響くような刺激に、「ぁああっ」と涕泣を漏らしてしまう。
そう思った次の瞬間、精液が迸る。
「ああっ……だ、め……です……ああぁぁっ……」
汗ばんだ総身を戦慄かせ、蒼花は果ててしまう。
お腹の中に、温かいものがどろどろと注がれてしまえば、意識は真っ赤に爛れ、深い絶頂感に身を打たれた。
揺らめき、波打ち、茫洋とする意識の中、
(だめ、に、妊娠……して……)
自分のような慈悲を賜り、ようやく生きているような人間が、万が一にも子を孕むことなどあってはならない。
たとえそれが陵辱の結果であったとしても――。
とうの救いの主の英麟に嬲られながら、蒼花の心はそれを第一に考えてしまうのだ。
身体を離した英麟は衣をつけていく。
蒼花は乱れたまま臥榻に横たわり、心身は疲労していたが、それでもまだ意識はしっかりと保っていた。
ゆるゆると身を起こし、臥榻から降り立ち、跪く。
「……陛下」
英麟が振り返る。その眼差しは汚物を見るような蔑みに満ちていた。
「一つ、お教えください」
「何だ」
英麟の声が石室に、冷たく響いた。
「先程、陛下は仰せになりました――皇太后同様は陛下を騙して、裏で笑っていた……と。それは、どういうことなのでしょうか」
「何だ、皇太后から何も聞いていなかったのか。――皇太后はな、俺の母を殺したんだ。そのことをおくびにも出さないどころか、己の欲求に従って権力を欲しいままにした」
「そんな、皇太后様が……」
「まぁ、皇太后から遠ざけられたお前には分からないだろうな。」
言葉に詰まる。
英麟の母親が亡くなったのは、彼がまだ十歳の時らしいということが、話し好きの女官から聞いたことがあった。流行病とそのときには言っていたが。
「俺は、あの女が築いてきた、そばにおいていたもの……すべてをぶちこわすつもりだ。もちろん、お前も」
英麟は閉ざされた扉に「開けろ」と言えば、扉が開き、かがり火で赤々と照らされた通路へと消えていった。
そして扉が重たい音を響かせ、閉ざされた。
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