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酒を飲みながら英麟は身も心も蒼花のつま弾く音色にひたっていた。
(これだ。俺は、これが聞きたかった……)
鮮やかな襦裙に身を包んだ蒼花は、まるで気紛れに地上へ降りてきた天女のように神々しかった。
いや、きっとそれは、英麟の思いが見せたものなのだろう。
英麟は陵辱者でありながら、蒼花を好きだという気持ちを、図々しくも抱き続けている。
(俺は……こんなにも美しい女(ひと)を怒りにまかせて辱めてきたのか……)
最初から蒼花を辱めることはおかど違いだと分かっていた。
分かっていながら、皇太后が死に、鉾先を失った怒りを、蒼花にぶつけ続けた。
皇太后に面と向かって何も言えなかった己を棚に上げ、一番大切に想っていた蒼花を悲しませ、辱めることに、歪んだ喜びを見いだしていた。
すべて英麟の弱さがさせたことだ。
そしてさっき、耳にした客に会わせて曲調を変えたという話。
聞いて欲しいと、蒼花が奏でてくれた曲。
あれも、蒼花が曲調を変えたというのならば。
鼓動が早まる。
(いや、蒼花が俺を想ってくれていることが分かっただけでいいだろう……それだけで満足であろう……。これ以上、蒼花を苦しめてはならない……)
※
皇帝の目が変わった。
鸞果はそれを見逃さなかった。
蒼花が奏でる箏の音を聞きながら、英麟の目はそれまでのように硬い玄武岩のような硬さがすっかりなくなっていた。
その瞳の奥底には温かな光が兆し、口元には笑みがある。
この宴の誰より蒼花の箏の音に身も心も任せている。
鸞果の時とは大違いだった。
それでも鸞果は微笑を湛えていた。
※
(……なんだかとても疲れたわ……っ)
英麟の求めに応じて一体何曲くらい弾いただろう。
指先が攣ってしまいそうなくら強張っている。
それに、実際、箏を弾いているだけだったが、久しぶりにたくさんの人の中で過ごしたせいか、少し酔ってしまったかもしれない。
変な話だが喧噪の遠い石室の冷たい部屋のほうが妙に落ち着いた。
と、扉が不意に開いた。
「蔡両……私は疲れたわ。悪いけど、少し一人で……」
蔡両は俯いたまま言うと、
「……悪い。少し、時間をくれるか」
聞き覚えのありすぎる声に、はっと顔をあげた。
「陛下……っ!」
「そのままで良い」
ひざまずこうとして、制せられる。
「箏の腕前は衰えてはいなかったようだな」
「お耳汚しではありませんでしたか」
「気に入らない箏を、そう何曲も弾かせるわけがないだろう」
と、それから、英麟が黙ってしまうので、二人の間には何とも言えないような沈黙が下りてしまう。
英麟は口を噤んだまま。
蒼花といえばまた押し倒されるのかと考えながら、それを決して不愉快に感じていない自分に気づいてもいた。
そんな自分を、はしたないと自己嫌悪する。
そして長い沈黙に絶えられなくなった蒼花は、
「あの……陛下……っ」
不安に包まれ声をあげた。
と、そのとき、何かを擦るような音音がした。
「誰だっ」
英麟が振り返ると、開きっぱなしの扉から女官が入ってくるところだった。
「なんだ、お前は。用はない、去れっ」
「侍中が参りまして、陛下に御用事がある申しております」
「……分かった」
英麟が蒼花から離れたそのとき、
「姦婦《かんぷ》めえ……っ!」
女官が懐から取り出した短剣を腰だめに構え、蒼花めがけ突っ込んでくる。
「っ!?」
蒼花は突然のことに動けなかった。
鋭い刃先は真っ直ぐ心の臓へと吸いこまれる――。
「蒼花っ!」
刃が英麟の脇腹に突き刺さる。
みるみるうち衣がどす黒い色に染まってしまう。
「へ、陛下……っ」
「貴様っ」
英麟は刺されたまま、女官の手首をとり、ねじりあげる。
呻きをあげた女官はその場にくずおれた。
「蔡両っ!」
蒼花が叫ぶと、すぐに蔡両が駆け込んでくる。
「蒼花様……あ、これは……陛下……!?」
血みどろになる皇帝を前に、蔡両を目を剥き、それから、手首をひねあげられた女官とを交互に見た。
「この人を拘束してください。それから、清潔な布と裁断鋏、薬と、お湯をっ」
「か、畏まりましたっ」
すぐに兵士が現れ、女官を連行する。それからお湯が盥や必要な道具が運ばれてきた。
「蔡両、ありがとう」
「蒼花様、何かあれがすぐにお命じを」
「ええ」
蒼花が振り返ると、英麟は短剣を抜こうと鞘に手をかけようとしていた。
「いけません」
英麟は弾かれるように英麟に駆け寄ると、その手をそっと押さえる。
脂汗を浮かべた英麟の目が動く。
「今抜いたら血が溢れ、かえって危険です。とりあえず横になってください。大丈夫ですか?」
「……ああ」
英麟は小さく頷く。
主上の肩を支え、重みをこらえながら、何とか臥榻に寝かせる。
「あの宦官は、なかなか、動きが良いな」
天井をを仰ぎみながら英麟が呻きまじりに呟いた。
「蔡両と申します。名を覚えてもらえれば、きっと喜びましょう」
「そうか……。覚えておこう。ところで、あいつは、お前のことを様付けで呼んでいるんだな」
「え? あ……は、はい……どうしてでしょうね。そんなことより、傷の治療を……」
蒼花は鋏《はさみ》で衣を断ち、上半身を裸にする。
女の力だったことや、英麟の筋肉のおかげか、刃はそれほど深くは刺さっていないらしい。
「陛下、痛いかも知れませんが我慢してください」
「……俺は子どもじゃないんだ。さあ、やってくれ」
「は、はい」
お湯にひたした布をしっかりと絞り上げると、滲み出る血をぬぐい取っていく。
「っ……」
英麟がかすかに呻きを漏らすや、反射的に手をひっこめてしまう。.
「だ、大丈夫ですか」
「続けろ」
「はい」
血を拭っていくことを繰り返すと、次第に出血量が少なくなる。
それから刺さっている剣の柄を握る。
「抜きます」
「いいぞ」
ぐっと力を入れる、短剣がするすると抜けた。
英麟の声がかすかに石室を震わせる。
新しい血がかすかにこぼれるのを拭ってから、薬草を塗りつけた当て布を傷口にあて、布を何重にも巻き付けた。
「少し締め方がきつくないか?」
「出血を止めるためと、こうしたほうが傷の塞がりが早いんです。でも、あとは宮廷のお医者様にちゃんと見てもらったほうがいいです。これはあくまで、応急措置ですので」
「そうだな……。だが、お前に治療してもらったほうがいいな、俺は」
英麟は口元にうっすらと笑みを浮かべながら手を握ってくる。
そこにはちゃんと力がこもっていて、それにほっと一安心した。
「手当が手慣れていたのはどうしてだ?」
「……それは」
蒼花は目を泳がしてしまうと、英麟は顔を顰めた。
「どうした? 言えないのか?」
いえ、と言葉を濁らせると、「俺に言えないのか」との一言がとんでくる。
「……皇太后様の体調が悪くなられた時、せめて少しでもお世話ができればと思いまして、医学書を読んだんです。その折、一通りの治療はざっと覚えたんです」
不興を買うかも知れない、蒼花は首を竦めたが英麟はかすかに笑うだけだった。
「そうか……。では、俺は皇太后に助けられたようなものか。お前の助言がなければ、あのまま剣を抜いてしまっていただろうからな。……ところで、お前、あの女官に何をしたんだ」
「何もしていません……。第一、ずっと、ここに閉じ込められているのに、何ができるというんですか」
「……それもそうだな」
「陛下。さあ、そろそろお休みください。私がしっかり見守らせていただきますので」
蒼花は布で汗の浮いた額を拭うと、手首をそっと掴まれた。
「陛下……?」
「欲情した」
「へ?」
英麟は腰をかすかに身動がせる。
下裳の股間部分が大きく膨れていた。
蒼花は頬を染め、目を伏せる。
「で、ですが、陛下はおけがを……」
「このままではどうであれ、眠れない。なんとかしろ」
英麟の双眸の奥底が、妖しく底光りしていた。
「……わ、分かりました」
蒼花は襦裙を脱ごうとしたが、
「口でしてくれればいい」
最初、何を言われているのか分からなかった。
「え?」
「口だ。口をつかって、咥えて、しゃぶってくれ」
「口で……」
「嫌か?」
「いえっ」
否定の言葉は勝手に口を突いて出た。
「なら、まずは帯をほどいてくれ」
「はい」
蒼花は言われた通り帯をほぞき、裙を下着もろとも脱がせれば、これまで何度となく貫かれ続けてきた怒張が飛び出す。
それは反っくり返り、ひくひくとかすかに打ち震える。
こうしてまじまじと見るのはじめてのこと。
(これがいつも私のなかを掻き混ぜて……)
「舐めろ」
蒼花は小さくうなずく。
「ん……」
鉾先に舌を這わせればかすかにしょっぱ味と、ねばねばしたものが舌の上に広がる。
「っ」
英麟はかすかに吐息をこぼす。
(陛下……)
その悩ましい顔つきに惹かれる。
「れろ」
「……っ」
これまでは猛々しい嵐のような突き込みに翻弄されるばかりであった。
蒼花はいつも身悶えさせられ、余裕など微塵もなかった。
でも今は違う。
男根を味わい尽くすたびに英麟が眉間に皺を刻み、悩ましいため息を漏らすのを逐一、眺めることができてしまう。
皇帝の閨でしか見られない姿を今、自分だけが見ている――その背徳感に背筋がぞくりとしてしまう。
身体的ではなく心象としての悦び。
刺激を与え続ければやがて、とろりとした粘汁が滲んだ。
英麟に言われるまでもなく蒼花はそれを舌で掬い取っていた。
刺激を続けるごとにびくびくと肉棒が震えにおいが強くなる。
くさいということはなかった。
ただ、このにおいを嗅ぐと、お腹のあたりがとろとろと蕩けていくような気がして、たまらずもじついてしまう。
癖になるようなにおいだった。
こぼれる露を吸い取るたび、男根は過敏に戦慄いて反応する。
英麟自身も、「ぁっ」とかすかに上擦った声を漏らした。
(陛下、気持ちよくなられているんですね……)
英麟は声を出してしまうことが恥ずかしいのか、唇を噛み縛っていた。
(そんなことをせず声を出してくださいっ)
いつも自分ばかりが責められ思い出すだけで赤面せずにはいられないくらいのあられもない声をあげられるのは、不公平な気がした。
英麟にも自分と同じくらいの声をあげて欲しい。
蒼花は屹立の先端部に刻まれた小さな穴へ舌先を押しつけるや、ほじくるように遣った。
「ぐッ……」
これまでで一番の声が出た。
我慢しようとしても相好が緩んだ。
(陛下。もっと……もっと、声を出してくださいっ)
言葉には出せない。
でもその気持ちをのせ、上目遣いに英麟の顔を窺いながら根元から先端部にかけて繰り返し繰り返し舌を這わせる。
英麟が声を我慢しても、ぼれる雫までは抑えられない。
(陛下。我慢しないで。気持ちよくなってください)
最初は口でするという突拍子のないことに戸惑ったもののいざやってみると、もっとしたいという思いがこみあげる。
「ん……ちゅっ……んふっ……ちゅぅっ……」
(陛下のあそこが、とくんとくんってして……可愛いっ……)
これまで涕泣を絞り上げられるばかりで凶器も同然だったが、こうしてあやすたびにみせる反応に口元が緩んだ
英麟は精悍な顔を歪め浅い息をくりかえす。
(これを、口に含んだら、もっと気持ちよくなってもらえるかもしれない)
それはちょっとした思いつきだった。
英麟の勃起はそれでもとても太い。
蒼花が両手をつかっても、完全に覆いきれないほどに。
それでも、少女を突き動かすのは、英麟をもっと気持ちよくしたいという奉仕の心。
「ん……」
口を大きくひらき、肉鉾をゆっくりと含む。
(……顎が外れてしまいそう……)
さすがに先端までが限界だった。これ以上は息ができなくなってしまう。
「蒼花っ!?」
言われもしないのに咥えこんだことに、英麟が驚いたように声をあげた。
(陛下。大丈夫でございます。私は、ちゃんと陛下を気持ちよくいたしますからっ……)
口腔内に、英麟のにおいが満ちる。
頬を痩けさせ、唇をすぼめ、「ぢゅる、ぢゅるっ」としゃぶりとれば、英麟のくぐもった声はさっきよりも大きくなった。
口内にどろりとしたものが満ちる。
舌をそよがせるように動かせば、怒張はびくんびくんと大きく跳ねた。
(もっともっと震えさせてあげる)
頬紅《ほおべに》を散らしたように頬を色づかせ、蒼花は顔を上下に弾ませるようにして細かい凹凸のある逸物を舐りあげる。
体液が混ざり合い、絡み合い、糸引く音が顔を動かすのにあわせてしっとりと響いた。
「蒼花……ま、待て……ッ」
呻きの中に混じる声も、無我夢中でしゃぶりあげる少女には届かない。
ただ口の中でビクビクと戦慄く息づかいを確かに感じる。
(陛下っ、陛下っ)
蒼花は貪るように男根を責め立てた。
頭を上下に弾ませるたび簪についた瑪瑙の玉が弾んだ。
「ぐ、う……ッ」
口に含んでいた逸物が膨張する動きに目を瞠る――次の瞬間にはドクドクと、口内めがけどろりとしたものが爆ぜた。
むっとした熱気を孕んだ栗花臭が広みるみるがっていく。
(へ、陛下……)
それは、いつも、自分の胎(はら)めがけ注ぎ込まれる劣情の迸りにほかならなかった。
英麟を気持ちよくさせられたという満足感が胸を満たしていく。
「ん……っ」
蒼花は噎せ返る。掌の上に吐き出し、肩を大きく上下させて喘ぐ。
涙ぐんだ眼差しで英麟を仰いだ。
英麟の目の奥の光はさっきよりもさらに強くなっていた。
瞬時に蒼花は察する。
「い、いけません――」
身を翻そうとしたがたちまち囚われてしまう。
「蒼花ッ……」
「陛下、き、傷口がっ」
「開く前に終わらせるっ」
「いけません……」
無茶苦茶な物言いに反論しようとするがたちまち呑み込まれる。
唇を塞がれ、激しく口内を熱い舌先でかきまぜられ、掻き混ぜられてしまう。
(だ、め……)
いつもならここで、あっという間に頭の奥底まで蕩けさせられてしまうところだが、今は英麟の身の安全のほうが大事だ。
精一杯の気力をもって抵抗しようとする。
「だめ、ですっ!」
「逆らうか」
押しのけようとする手首をとりあげた英麟の顔には、これまで何度も辱めてきたその時の顔があった。
腰帯を剥かれ、裙を乱暴にはぎ取られてしまえば、股のなかに身体をねじ込まれ、蒼花によって達したあともまだ、意気軒昂としている肉の楔が花処へ押しつけられた。
「あっ……」
甘い声が勝手に口を突く。
「濡れているな。俺のをしゃぶりながらいやらしいやつだ。そんなに俺のがうまかったか?」
ひどい言葉を言われながらも身体は押しつけられたままの雄竿に感応して、ひくひくと戦慄き、さらに熱い雫を滲ませてしまう。
「陛下。駄目、です。お体をもっと大切に……っ」
「ならばすぐに俺が終われるようにしろ」
言うや、英麟が腰を押しつけてくる。
しかしぐりぐりと擦りつけてくるばかりで、なかなか入れようとはしなかった。
「駄目? 本当に駄目か?」
こぼれる愛液が鉾先にまとわりつき、てらてらと淫靡にぬめ光る。
「あっ、はっ、ぁあっ……」
理性をすり減らされるような、もどかしさに、溜まらず腰がうねった。
しとどに溢れる蜜は今や臥榻の敷布に大きな染みを描いてしまうほど。
「欲しい、だろ」
ねっとりと耳元で囁かれると共にかすかに挿入される。
火傷してしまいそうな熱気を湛えた剛直の力強さに、腰が激しく微痙攣を紡いでしまう。愉悦が火柱のように蒼花を貫く。
「へ、い、か……っ」
もはや陵辱という形でなくなり、蒼花自身、心の底でのぞむようになったのは、はじめからのようにも気がするし、ついこの間だったような気もする。
「く、ください……」
はっ、はっ、と落ち着かない息づかいに、声をまぜらせた。
肉の鏃がずぶりずぶりと押し寄せる。
「んううう……!」
蜜穴を奥へ奥へと肉塊が押し進んだ。
英麟が入ってくる。そう思うだけで蜜壺はきつくきつく狭まった。
「あぁぁぁ……っ」
蜜底を叩かれるまでの間、息の詰まるような挿入感が延々と続き、蒼花は震える嬌声を我慢できなかった。
歓喜が、結合部から脳天へと稲妻のようにとどろき渡った瞬間、またも、目の前で鋭い明滅が起こった。
(また――)
しゃぶり、咥えた時とは明らかに違う。
英麟の逸物は別物のように容赦なく膣洞を蹂躙した。
短時間のうちに二度も絶頂するのははじめてのことだ。
このままでは壊されてしまう。
しかし英麟が言った通り、変に長引いてしまえば傷口が本当に開いてしまうかもしれない。
蒼花は唇を噛みしめ、戦慄く身体を起こす。
「蒼花?」
「陛下っ」
自分の意思で英麟の首に腕を回し、両足を腰へ絡め、唇を近づけかけ――思い出す。
「どうした?」
「その……私は、先程、殿下のものを……く、咥えて……」
「俺がそんな穢らわしいものを、お前に咥えさせると思ったか?」
「いえっ……」
「なら、お前が今、したかったことをしてみせろ」
いざ、そう言われても、ためらいはぬぐえない。
「早くしろ。それとも、ずっとこのまま何もせず、俺を焦らし続けるか?」
「焦らすなんで……」
「なら、早くするんだ。せっかく、ここまでしたんだ。もっと、お前から求めてみろ。そうでなければ、……我慢できなくなる」
そう言われ、蒼花は意を決し、唇を寄せた。
温かい唇に触れた。いつものようにかさりとした質感だが、それはまるで雪解けがおこるように、蒼花の朱唇に馴染んでいく。
吸いあい、重ね合う唇から、甘い痺れが全身へ浸みていく。
欠けていたものが満ちた――そんな実感がある。
さらに精一杯、腰を振り、息づく男根を咥えこんだ。
「早く動いてくれ」
英麟が満足そうな微笑を覗かせた。
「はいっ……んっ……ぁあっ……はぁっ!」
腰をもちあげれば、銛のような形をした樹茎と柔壁が擦れ、淫らな火花が脳裏で弾けた。 背筋がぞくりとし、腰が甘く戦慄いてしまう。
子宮の入り口が快く痺れ、秘処からははしたない水音が間断なく響いた。
秘芯全体が逸物を収斂してきつく咥えこんだ。
「はっ、あぁっ、んんっ!」
かつて純潔を無残に奪い去ったものが、今は蒼花の身に一生消えない快楽の爪痕を植え付ける。
英麟の手が披帛や半臀を脱がし、襦を乱暴にくつろげ、乳房がこぼれだされる。
襦は中途半端な格好で両肘のあたりでまとわりつき、半裸という格好になってしまう。これは裸に剥かれるよりずっと羞恥心を刺激させられる。
「鮮やかなものだ。処女のときのままだ」
「ぁあ、はぁっ……!」
痼った乳暈を弾かれ、蒼花はいやいやとかぶりを振った。
刺激の強さのあまり反射的に身を引いても、自分から巻き付けた両腕、両足があるため、ほとんど意味がない。
甘く噛まれ、吸い上げられる。
ひりつくような疼きと痛みにさらされながら、腰のうねりは熱を帯びてしまう。
ぶつかりあうたび、水瓶をかきまぜるような淫らで騒がしさい水音が響いた。
「はぁぁっ……ああんんっ……っ!」
「うまいな、蒼花。お前の肌は甘い、まるで菓子だっ」
呟きながら、貪るように乳丘の突端に歯を立てられる。
ちぎられてしまう、そう思うような力の強さなのに、悦楽が襲い来る。
「うまいぞ、蒼花、たまらないっ」
まるで傷跡を癒やすように、噛んだあとは舌を這わされる。
胸のいただきがジンジンと疼き、それがまた快感という名の尾を長く引かせた。
「ひゃっ、あぁっ!」
涙が目の端に盛り上がり、頬を濡らすほどの快美感に晒されながら、肉悦は底なし。
身体が甘美に蕩けてしまう。
(わ、わたしっ……し、死んじゃう……っ!)
それでも蒼花の桃尻は何度ももちあがっては英麟の股間を根元まで呑み込んだ。
半ばそれは英麟のためではなく、さらなる大きな愉悦の波をつくろうという、自分のためへと変化しつつあった。
「すごいな、蒼花。お前の身体は嬲れば嬲るほどに、いやらしくなっていく……っ」
英麟はかすかに顔を歪めた。
それでもまだ果ては遠いように首筋に顔を埋め、唇をきつく吸ってきた。
「英麟様!?」
かすかな痛み。そのあとは、じんわりという赤い斑点が出来てしまう。
それはまるで獣が、自分のものだと主張するかのような、ひどく原始的で、本能の極みをみせられるようだった。
首筋から胸元そして脇腹――。
唇でつけられた痕が白い肌へ、南天の実のように鮮やかに浮かび上がる。
身体が喜悦で、心臓が止まってしまいそうだった。
「また、きつく絞ってきたな」
蒼花は衝動に突き動かされるように腰を大きく回す。
「陛下ぁっ、ぁあっ……っ!」
もはや、自分が正気なのかどうか分からない。
愉悦と絶頂の端境が曖昧になり、常に自分が昇りつめている、そんな幻想に囚われてしまう。
「ひゃぁっ!」
顔をくしゃくしゃに歪めた英麟が我慢できないとばかりに腰を打ち付けてきた。
しかしそれは弾ける間際のうなりだといことは、これまで何度となく胎内深くで受け止めてきた蒼花には分かった。
だから、蒼花もまた蜜壺を伸縮させ、英麟を絡め摂る。
「へ、陛下、来て下さいっ!」
「ああ、いくぞ、蒼花」
うなりの呻きが石室に劈けば、はちきれんばかりに膨張しきった陰茎が痙攣を刻み、灼熱が媚穴めがけ迸った。
「ん! んぅぅっ……ううぅぅぅぅぅ……っ!!」
頭の中でいくつもの極彩色の火花が爆ぜ、激しい目眩に襲われる。
仰け反って倒れそうになる危ういところを、英麟に抱き留められた。
「大丈夫か」
全身を包む痙攣の波に息を切らせながら、口を開く。
「陛こそ、動いてはいけないのに最後は……あのようなことをっ……」
「問題はなかった。見ろ。お前の手当のおかげでな……助かる」
英麟が微笑む。かすかに火照った頬を汗の雫がたらりと伝い落ちた。
さきほどの宴席の時とは違う無邪気な笑顔。
心臓が今にも口からこぼれそうなくらい高鳴り、息苦しくなってくる。
そっと蒼花の頬に手を添えてきた。
「眠れ。見ていてやろう――」
「陛下……」
何か呟いたような帰するが、そう思った時には眠りの繭に意識が包まれていた。
※
蒼花を抱き留めながら、英麟の表情には苦みがあった。
(言えなかった)
お前をここより解放する――。
お前が望む金額を、お前が死ぬまで払いつづけよう。
朝廷を離れ、好きな場所で暮らせ。
もし見つからないというのなら人をやって捜させよう。それまでお前には別に部屋を与えるし、侍女や宦官を望む人数、付けよう――。
それが英麟が、蒼花を尋ねた目的だった。
彼女を自分のようなけだものから解放しようというのが。
しかし、結局、言い出せなかった。
目の前の少女が、自分の目の前から永遠にいなくなる。
そう思うと耐えられなかった。
この温もりを失いたくない――絶対に嫌だった。
(俺はなんて、臆病、だ……)
(これだ。俺は、これが聞きたかった……)
鮮やかな襦裙に身を包んだ蒼花は、まるで気紛れに地上へ降りてきた天女のように神々しかった。
いや、きっとそれは、英麟の思いが見せたものなのだろう。
英麟は陵辱者でありながら、蒼花を好きだという気持ちを、図々しくも抱き続けている。
(俺は……こんなにも美しい女(ひと)を怒りにまかせて辱めてきたのか……)
最初から蒼花を辱めることはおかど違いだと分かっていた。
分かっていながら、皇太后が死に、鉾先を失った怒りを、蒼花にぶつけ続けた。
皇太后に面と向かって何も言えなかった己を棚に上げ、一番大切に想っていた蒼花を悲しませ、辱めることに、歪んだ喜びを見いだしていた。
すべて英麟の弱さがさせたことだ。
そしてさっき、耳にした客に会わせて曲調を変えたという話。
聞いて欲しいと、蒼花が奏でてくれた曲。
あれも、蒼花が曲調を変えたというのならば。
鼓動が早まる。
(いや、蒼花が俺を想ってくれていることが分かっただけでいいだろう……それだけで満足であろう……。これ以上、蒼花を苦しめてはならない……)
※
皇帝の目が変わった。
鸞果はそれを見逃さなかった。
蒼花が奏でる箏の音を聞きながら、英麟の目はそれまでのように硬い玄武岩のような硬さがすっかりなくなっていた。
その瞳の奥底には温かな光が兆し、口元には笑みがある。
この宴の誰より蒼花の箏の音に身も心も任せている。
鸞果の時とは大違いだった。
それでも鸞果は微笑を湛えていた。
※
(……なんだかとても疲れたわ……っ)
英麟の求めに応じて一体何曲くらい弾いただろう。
指先が攣ってしまいそうなくら強張っている。
それに、実際、箏を弾いているだけだったが、久しぶりにたくさんの人の中で過ごしたせいか、少し酔ってしまったかもしれない。
変な話だが喧噪の遠い石室の冷たい部屋のほうが妙に落ち着いた。
と、扉が不意に開いた。
「蔡両……私は疲れたわ。悪いけど、少し一人で……」
蔡両は俯いたまま言うと、
「……悪い。少し、時間をくれるか」
聞き覚えのありすぎる声に、はっと顔をあげた。
「陛下……っ!」
「そのままで良い」
ひざまずこうとして、制せられる。
「箏の腕前は衰えてはいなかったようだな」
「お耳汚しではありませんでしたか」
「気に入らない箏を、そう何曲も弾かせるわけがないだろう」
と、それから、英麟が黙ってしまうので、二人の間には何とも言えないような沈黙が下りてしまう。
英麟は口を噤んだまま。
蒼花といえばまた押し倒されるのかと考えながら、それを決して不愉快に感じていない自分に気づいてもいた。
そんな自分を、はしたないと自己嫌悪する。
そして長い沈黙に絶えられなくなった蒼花は、
「あの……陛下……っ」
不安に包まれ声をあげた。
と、そのとき、何かを擦るような音音がした。
「誰だっ」
英麟が振り返ると、開きっぱなしの扉から女官が入ってくるところだった。
「なんだ、お前は。用はない、去れっ」
「侍中が参りまして、陛下に御用事がある申しております」
「……分かった」
英麟が蒼花から離れたそのとき、
「姦婦《かんぷ》めえ……っ!」
女官が懐から取り出した短剣を腰だめに構え、蒼花めがけ突っ込んでくる。
「っ!?」
蒼花は突然のことに動けなかった。
鋭い刃先は真っ直ぐ心の臓へと吸いこまれる――。
「蒼花っ!」
刃が英麟の脇腹に突き刺さる。
みるみるうち衣がどす黒い色に染まってしまう。
「へ、陛下……っ」
「貴様っ」
英麟は刺されたまま、女官の手首をとり、ねじりあげる。
呻きをあげた女官はその場にくずおれた。
「蔡両っ!」
蒼花が叫ぶと、すぐに蔡両が駆け込んでくる。
「蒼花様……あ、これは……陛下……!?」
血みどろになる皇帝を前に、蔡両を目を剥き、それから、手首をひねあげられた女官とを交互に見た。
「この人を拘束してください。それから、清潔な布と裁断鋏、薬と、お湯をっ」
「か、畏まりましたっ」
すぐに兵士が現れ、女官を連行する。それからお湯が盥や必要な道具が運ばれてきた。
「蔡両、ありがとう」
「蒼花様、何かあれがすぐにお命じを」
「ええ」
蒼花が振り返ると、英麟は短剣を抜こうと鞘に手をかけようとしていた。
「いけません」
英麟は弾かれるように英麟に駆け寄ると、その手をそっと押さえる。
脂汗を浮かべた英麟の目が動く。
「今抜いたら血が溢れ、かえって危険です。とりあえず横になってください。大丈夫ですか?」
「……ああ」
英麟は小さく頷く。
主上の肩を支え、重みをこらえながら、何とか臥榻に寝かせる。
「あの宦官は、なかなか、動きが良いな」
天井をを仰ぎみながら英麟が呻きまじりに呟いた。
「蔡両と申します。名を覚えてもらえれば、きっと喜びましょう」
「そうか……。覚えておこう。ところで、あいつは、お前のことを様付けで呼んでいるんだな」
「え? あ……は、はい……どうしてでしょうね。そんなことより、傷の治療を……」
蒼花は鋏《はさみ》で衣を断ち、上半身を裸にする。
女の力だったことや、英麟の筋肉のおかげか、刃はそれほど深くは刺さっていないらしい。
「陛下、痛いかも知れませんが我慢してください」
「……俺は子どもじゃないんだ。さあ、やってくれ」
「は、はい」
お湯にひたした布をしっかりと絞り上げると、滲み出る血をぬぐい取っていく。
「っ……」
英麟がかすかに呻きを漏らすや、反射的に手をひっこめてしまう。.
「だ、大丈夫ですか」
「続けろ」
「はい」
血を拭っていくことを繰り返すと、次第に出血量が少なくなる。
それから刺さっている剣の柄を握る。
「抜きます」
「いいぞ」
ぐっと力を入れる、短剣がするすると抜けた。
英麟の声がかすかに石室を震わせる。
新しい血がかすかにこぼれるのを拭ってから、薬草を塗りつけた当て布を傷口にあて、布を何重にも巻き付けた。
「少し締め方がきつくないか?」
「出血を止めるためと、こうしたほうが傷の塞がりが早いんです。でも、あとは宮廷のお医者様にちゃんと見てもらったほうがいいです。これはあくまで、応急措置ですので」
「そうだな……。だが、お前に治療してもらったほうがいいな、俺は」
英麟は口元にうっすらと笑みを浮かべながら手を握ってくる。
そこにはちゃんと力がこもっていて、それにほっと一安心した。
「手当が手慣れていたのはどうしてだ?」
「……それは」
蒼花は目を泳がしてしまうと、英麟は顔を顰めた。
「どうした? 言えないのか?」
いえ、と言葉を濁らせると、「俺に言えないのか」との一言がとんでくる。
「……皇太后様の体調が悪くなられた時、せめて少しでもお世話ができればと思いまして、医学書を読んだんです。その折、一通りの治療はざっと覚えたんです」
不興を買うかも知れない、蒼花は首を竦めたが英麟はかすかに笑うだけだった。
「そうか……。では、俺は皇太后に助けられたようなものか。お前の助言がなければ、あのまま剣を抜いてしまっていただろうからな。……ところで、お前、あの女官に何をしたんだ」
「何もしていません……。第一、ずっと、ここに閉じ込められているのに、何ができるというんですか」
「……それもそうだな」
「陛下。さあ、そろそろお休みください。私がしっかり見守らせていただきますので」
蒼花は布で汗の浮いた額を拭うと、手首をそっと掴まれた。
「陛下……?」
「欲情した」
「へ?」
英麟は腰をかすかに身動がせる。
下裳の股間部分が大きく膨れていた。
蒼花は頬を染め、目を伏せる。
「で、ですが、陛下はおけがを……」
「このままではどうであれ、眠れない。なんとかしろ」
英麟の双眸の奥底が、妖しく底光りしていた。
「……わ、分かりました」
蒼花は襦裙を脱ごうとしたが、
「口でしてくれればいい」
最初、何を言われているのか分からなかった。
「え?」
「口だ。口をつかって、咥えて、しゃぶってくれ」
「口で……」
「嫌か?」
「いえっ」
否定の言葉は勝手に口を突いて出た。
「なら、まずは帯をほどいてくれ」
「はい」
蒼花は言われた通り帯をほぞき、裙を下着もろとも脱がせれば、これまで何度となく貫かれ続けてきた怒張が飛び出す。
それは反っくり返り、ひくひくとかすかに打ち震える。
こうしてまじまじと見るのはじめてのこと。
(これがいつも私のなかを掻き混ぜて……)
「舐めろ」
蒼花は小さくうなずく。
「ん……」
鉾先に舌を這わせればかすかにしょっぱ味と、ねばねばしたものが舌の上に広がる。
「っ」
英麟はかすかに吐息をこぼす。
(陛下……)
その悩ましい顔つきに惹かれる。
「れろ」
「……っ」
これまでは猛々しい嵐のような突き込みに翻弄されるばかりであった。
蒼花はいつも身悶えさせられ、余裕など微塵もなかった。
でも今は違う。
男根を味わい尽くすたびに英麟が眉間に皺を刻み、悩ましいため息を漏らすのを逐一、眺めることができてしまう。
皇帝の閨でしか見られない姿を今、自分だけが見ている――その背徳感に背筋がぞくりとしてしまう。
身体的ではなく心象としての悦び。
刺激を与え続ければやがて、とろりとした粘汁が滲んだ。
英麟に言われるまでもなく蒼花はそれを舌で掬い取っていた。
刺激を続けるごとにびくびくと肉棒が震えにおいが強くなる。
くさいということはなかった。
ただ、このにおいを嗅ぐと、お腹のあたりがとろとろと蕩けていくような気がして、たまらずもじついてしまう。
癖になるようなにおいだった。
こぼれる露を吸い取るたび、男根は過敏に戦慄いて反応する。
英麟自身も、「ぁっ」とかすかに上擦った声を漏らした。
(陛下、気持ちよくなられているんですね……)
英麟は声を出してしまうことが恥ずかしいのか、唇を噛み縛っていた。
(そんなことをせず声を出してくださいっ)
いつも自分ばかりが責められ思い出すだけで赤面せずにはいられないくらいのあられもない声をあげられるのは、不公平な気がした。
英麟にも自分と同じくらいの声をあげて欲しい。
蒼花は屹立の先端部に刻まれた小さな穴へ舌先を押しつけるや、ほじくるように遣った。
「ぐッ……」
これまでで一番の声が出た。
我慢しようとしても相好が緩んだ。
(陛下。もっと……もっと、声を出してくださいっ)
言葉には出せない。
でもその気持ちをのせ、上目遣いに英麟の顔を窺いながら根元から先端部にかけて繰り返し繰り返し舌を這わせる。
英麟が声を我慢しても、ぼれる雫までは抑えられない。
(陛下。我慢しないで。気持ちよくなってください)
最初は口でするという突拍子のないことに戸惑ったもののいざやってみると、もっとしたいという思いがこみあげる。
「ん……ちゅっ……んふっ……ちゅぅっ……」
(陛下のあそこが、とくんとくんってして……可愛いっ……)
これまで涕泣を絞り上げられるばかりで凶器も同然だったが、こうしてあやすたびにみせる反応に口元が緩んだ
英麟は精悍な顔を歪め浅い息をくりかえす。
(これを、口に含んだら、もっと気持ちよくなってもらえるかもしれない)
それはちょっとした思いつきだった。
英麟の勃起はそれでもとても太い。
蒼花が両手をつかっても、完全に覆いきれないほどに。
それでも、少女を突き動かすのは、英麟をもっと気持ちよくしたいという奉仕の心。
「ん……」
口を大きくひらき、肉鉾をゆっくりと含む。
(……顎が外れてしまいそう……)
さすがに先端までが限界だった。これ以上は息ができなくなってしまう。
「蒼花っ!?」
言われもしないのに咥えこんだことに、英麟が驚いたように声をあげた。
(陛下。大丈夫でございます。私は、ちゃんと陛下を気持ちよくいたしますからっ……)
口腔内に、英麟のにおいが満ちる。
頬を痩けさせ、唇をすぼめ、「ぢゅる、ぢゅるっ」としゃぶりとれば、英麟のくぐもった声はさっきよりも大きくなった。
口内にどろりとしたものが満ちる。
舌をそよがせるように動かせば、怒張はびくんびくんと大きく跳ねた。
(もっともっと震えさせてあげる)
頬紅《ほおべに》を散らしたように頬を色づかせ、蒼花は顔を上下に弾ませるようにして細かい凹凸のある逸物を舐りあげる。
体液が混ざり合い、絡み合い、糸引く音が顔を動かすのにあわせてしっとりと響いた。
「蒼花……ま、待て……ッ」
呻きの中に混じる声も、無我夢中でしゃぶりあげる少女には届かない。
ただ口の中でビクビクと戦慄く息づかいを確かに感じる。
(陛下っ、陛下っ)
蒼花は貪るように男根を責め立てた。
頭を上下に弾ませるたび簪についた瑪瑙の玉が弾んだ。
「ぐ、う……ッ」
口に含んでいた逸物が膨張する動きに目を瞠る――次の瞬間にはドクドクと、口内めがけどろりとしたものが爆ぜた。
むっとした熱気を孕んだ栗花臭が広みるみるがっていく。
(へ、陛下……)
それは、いつも、自分の胎(はら)めがけ注ぎ込まれる劣情の迸りにほかならなかった。
英麟を気持ちよくさせられたという満足感が胸を満たしていく。
「ん……っ」
蒼花は噎せ返る。掌の上に吐き出し、肩を大きく上下させて喘ぐ。
涙ぐんだ眼差しで英麟を仰いだ。
英麟の目の奥の光はさっきよりもさらに強くなっていた。
瞬時に蒼花は察する。
「い、いけません――」
身を翻そうとしたがたちまち囚われてしまう。
「蒼花ッ……」
「陛下、き、傷口がっ」
「開く前に終わらせるっ」
「いけません……」
無茶苦茶な物言いに反論しようとするがたちまち呑み込まれる。
唇を塞がれ、激しく口内を熱い舌先でかきまぜられ、掻き混ぜられてしまう。
(だ、め……)
いつもならここで、あっという間に頭の奥底まで蕩けさせられてしまうところだが、今は英麟の身の安全のほうが大事だ。
精一杯の気力をもって抵抗しようとする。
「だめ、ですっ!」
「逆らうか」
押しのけようとする手首をとりあげた英麟の顔には、これまで何度も辱めてきたその時の顔があった。
腰帯を剥かれ、裙を乱暴にはぎ取られてしまえば、股のなかに身体をねじ込まれ、蒼花によって達したあともまだ、意気軒昂としている肉の楔が花処へ押しつけられた。
「あっ……」
甘い声が勝手に口を突く。
「濡れているな。俺のをしゃぶりながらいやらしいやつだ。そんなに俺のがうまかったか?」
ひどい言葉を言われながらも身体は押しつけられたままの雄竿に感応して、ひくひくと戦慄き、さらに熱い雫を滲ませてしまう。
「陛下。駄目、です。お体をもっと大切に……っ」
「ならばすぐに俺が終われるようにしろ」
言うや、英麟が腰を押しつけてくる。
しかしぐりぐりと擦りつけてくるばかりで、なかなか入れようとはしなかった。
「駄目? 本当に駄目か?」
こぼれる愛液が鉾先にまとわりつき、てらてらと淫靡にぬめ光る。
「あっ、はっ、ぁあっ……」
理性をすり減らされるような、もどかしさに、溜まらず腰がうねった。
しとどに溢れる蜜は今や臥榻の敷布に大きな染みを描いてしまうほど。
「欲しい、だろ」
ねっとりと耳元で囁かれると共にかすかに挿入される。
火傷してしまいそうな熱気を湛えた剛直の力強さに、腰が激しく微痙攣を紡いでしまう。愉悦が火柱のように蒼花を貫く。
「へ、い、か……っ」
もはや陵辱という形でなくなり、蒼花自身、心の底でのぞむようになったのは、はじめからのようにも気がするし、ついこの間だったような気もする。
「く、ください……」
はっ、はっ、と落ち着かない息づかいに、声をまぜらせた。
肉の鏃がずぶりずぶりと押し寄せる。
「んううう……!」
蜜穴を奥へ奥へと肉塊が押し進んだ。
英麟が入ってくる。そう思うだけで蜜壺はきつくきつく狭まった。
「あぁぁぁ……っ」
蜜底を叩かれるまでの間、息の詰まるような挿入感が延々と続き、蒼花は震える嬌声を我慢できなかった。
歓喜が、結合部から脳天へと稲妻のようにとどろき渡った瞬間、またも、目の前で鋭い明滅が起こった。
(また――)
しゃぶり、咥えた時とは明らかに違う。
英麟の逸物は別物のように容赦なく膣洞を蹂躙した。
短時間のうちに二度も絶頂するのははじめてのことだ。
このままでは壊されてしまう。
しかし英麟が言った通り、変に長引いてしまえば傷口が本当に開いてしまうかもしれない。
蒼花は唇を噛みしめ、戦慄く身体を起こす。
「蒼花?」
「陛下っ」
自分の意思で英麟の首に腕を回し、両足を腰へ絡め、唇を近づけかけ――思い出す。
「どうした?」
「その……私は、先程、殿下のものを……く、咥えて……」
「俺がそんな穢らわしいものを、お前に咥えさせると思ったか?」
「いえっ……」
「なら、お前が今、したかったことをしてみせろ」
いざ、そう言われても、ためらいはぬぐえない。
「早くしろ。それとも、ずっとこのまま何もせず、俺を焦らし続けるか?」
「焦らすなんで……」
「なら、早くするんだ。せっかく、ここまでしたんだ。もっと、お前から求めてみろ。そうでなければ、……我慢できなくなる」
そう言われ、蒼花は意を決し、唇を寄せた。
温かい唇に触れた。いつものようにかさりとした質感だが、それはまるで雪解けがおこるように、蒼花の朱唇に馴染んでいく。
吸いあい、重ね合う唇から、甘い痺れが全身へ浸みていく。
欠けていたものが満ちた――そんな実感がある。
さらに精一杯、腰を振り、息づく男根を咥えこんだ。
「早く動いてくれ」
英麟が満足そうな微笑を覗かせた。
「はいっ……んっ……ぁあっ……はぁっ!」
腰をもちあげれば、銛のような形をした樹茎と柔壁が擦れ、淫らな火花が脳裏で弾けた。 背筋がぞくりとし、腰が甘く戦慄いてしまう。
子宮の入り口が快く痺れ、秘処からははしたない水音が間断なく響いた。
秘芯全体が逸物を収斂してきつく咥えこんだ。
「はっ、あぁっ、んんっ!」
かつて純潔を無残に奪い去ったものが、今は蒼花の身に一生消えない快楽の爪痕を植え付ける。
英麟の手が披帛や半臀を脱がし、襦を乱暴にくつろげ、乳房がこぼれだされる。
襦は中途半端な格好で両肘のあたりでまとわりつき、半裸という格好になってしまう。これは裸に剥かれるよりずっと羞恥心を刺激させられる。
「鮮やかなものだ。処女のときのままだ」
「ぁあ、はぁっ……!」
痼った乳暈を弾かれ、蒼花はいやいやとかぶりを振った。
刺激の強さのあまり反射的に身を引いても、自分から巻き付けた両腕、両足があるため、ほとんど意味がない。
甘く噛まれ、吸い上げられる。
ひりつくような疼きと痛みにさらされながら、腰のうねりは熱を帯びてしまう。
ぶつかりあうたび、水瓶をかきまぜるような淫らで騒がしさい水音が響いた。
「はぁぁっ……ああんんっ……っ!」
「うまいな、蒼花。お前の肌は甘い、まるで菓子だっ」
呟きながら、貪るように乳丘の突端に歯を立てられる。
ちぎられてしまう、そう思うような力の強さなのに、悦楽が襲い来る。
「うまいぞ、蒼花、たまらないっ」
まるで傷跡を癒やすように、噛んだあとは舌を這わされる。
胸のいただきがジンジンと疼き、それがまた快感という名の尾を長く引かせた。
「ひゃっ、あぁっ!」
涙が目の端に盛り上がり、頬を濡らすほどの快美感に晒されながら、肉悦は底なし。
身体が甘美に蕩けてしまう。
(わ、わたしっ……し、死んじゃう……っ!)
それでも蒼花の桃尻は何度ももちあがっては英麟の股間を根元まで呑み込んだ。
半ばそれは英麟のためではなく、さらなる大きな愉悦の波をつくろうという、自分のためへと変化しつつあった。
「すごいな、蒼花。お前の身体は嬲れば嬲るほどに、いやらしくなっていく……っ」
英麟はかすかに顔を歪めた。
それでもまだ果ては遠いように首筋に顔を埋め、唇をきつく吸ってきた。
「英麟様!?」
かすかな痛み。そのあとは、じんわりという赤い斑点が出来てしまう。
それはまるで獣が、自分のものだと主張するかのような、ひどく原始的で、本能の極みをみせられるようだった。
首筋から胸元そして脇腹――。
唇でつけられた痕が白い肌へ、南天の実のように鮮やかに浮かび上がる。
身体が喜悦で、心臓が止まってしまいそうだった。
「また、きつく絞ってきたな」
蒼花は衝動に突き動かされるように腰を大きく回す。
「陛下ぁっ、ぁあっ……っ!」
もはや、自分が正気なのかどうか分からない。
愉悦と絶頂の端境が曖昧になり、常に自分が昇りつめている、そんな幻想に囚われてしまう。
「ひゃぁっ!」
顔をくしゃくしゃに歪めた英麟が我慢できないとばかりに腰を打ち付けてきた。
しかしそれは弾ける間際のうなりだといことは、これまで何度となく胎内深くで受け止めてきた蒼花には分かった。
だから、蒼花もまた蜜壺を伸縮させ、英麟を絡め摂る。
「へ、陛下、来て下さいっ!」
「ああ、いくぞ、蒼花」
うなりの呻きが石室に劈けば、はちきれんばかりに膨張しきった陰茎が痙攣を刻み、灼熱が媚穴めがけ迸った。
「ん! んぅぅっ……ううぅぅぅぅぅ……っ!!」
頭の中でいくつもの極彩色の火花が爆ぜ、激しい目眩に襲われる。
仰け反って倒れそうになる危ういところを、英麟に抱き留められた。
「大丈夫か」
全身を包む痙攣の波に息を切らせながら、口を開く。
「陛こそ、動いてはいけないのに最後は……あのようなことをっ……」
「問題はなかった。見ろ。お前の手当のおかげでな……助かる」
英麟が微笑む。かすかに火照った頬を汗の雫がたらりと伝い落ちた。
さきほどの宴席の時とは違う無邪気な笑顔。
心臓が今にも口からこぼれそうなくらい高鳴り、息苦しくなってくる。
そっと蒼花の頬に手を添えてきた。
「眠れ。見ていてやろう――」
「陛下……」
何か呟いたような帰するが、そう思った時には眠りの繭に意識が包まれていた。
※
蒼花を抱き留めながら、英麟の表情には苦みがあった。
(言えなかった)
お前をここより解放する――。
お前が望む金額を、お前が死ぬまで払いつづけよう。
朝廷を離れ、好きな場所で暮らせ。
もし見つからないというのなら人をやって捜させよう。それまでお前には別に部屋を与えるし、侍女や宦官を望む人数、付けよう――。
それが英麟が、蒼花を尋ねた目的だった。
彼女を自分のようなけだものから解放しようというのが。
しかし、結局、言い出せなかった。
目の前の少女が、自分の目の前から永遠にいなくなる。
そう思うと耐えられなかった。
この温もりを失いたくない――絶対に嫌だった。
(俺はなんて、臆病、だ……)
5
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