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24 王太子カリストの胸は高鳴る
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「本当に締まりのない顔だな」
「黙れ」
王宮に帰り着き、馬車を降りれば、ずっと護衛を務め、一部始終を見守っていたソウルが口を開く。
「今日は楽しめて良かったな」
「ああ」
「まるで恋する乙女だな」
呆れたように笑われる。
「茶化すな」
今日、オリヴィエと一緒に過ごした時間を思い返す。
それだけで頬が緩み、本当に楽しかった。
愛する人と一緒にいることを尊いと歌う創作物はいくつも読んできたが、頭で理解しても、実感することはなかった。
でも今は──。
オリヴィエと歌劇と食事を楽しんだ。
彼女と一緒にいるだけで、意識もしないのに、話したいことが次々と頭に思い浮かんでくるのだ。
こんなことは初めてだ。
彼女が楽しそうに書物から聞き取った東大陸の噂話や伝統、文化について話してくれる。
想像することしかできないが、オリヴィエの話を聞いているだけでワクワクして、胸が弾んだ。
彼女の変わりように驚くよりも、芽生え始めた彼女への好意が日に日に、存在感を増していくのを実感する。
だからこそ、彼女に敬称ではなく、名前を呼んで欲しいと強く思ったのだ。
カリスト様。
少したどたどしいながらも、しっかり私の目を見て名前を呼んでもらえる。
ただそれだけのことに、顔から火が噴き出してしまいそうに火照り、口元がだらしなくなりそうなのを、手で必死に隠した。
今日は月が雲に隠れて、ことさら闇が深かったから良かった。
そうでなかったら、耳まで紅潮した顔を見られてしまったところだ。
名前を呼ばれただけなのに。
心が浮き立ち、だからこそ、最後に指先に口づけを……。
少し大胆すぎただろうか。
彼女のよく手入れの行き届いた白い柔肌。
少しでも力を入れれば壊れてしまいそうな繊細な芸術品のような。
唇には彼女の指先の感触が今も残る。
本当に不思議だ。
人間の心はこうも簡単に変わるものなのか。
あれほどオリヴィエが疎ましかったのに。
オリヴィエが私と一緒にいたいと駄々をこねていた時のことを思い出す。
あの時のオリヴィエの気持ちが、今になってはじめて理解できたような気がした。
今は私が同じことをしたくてたまらなかった。
どのみちあと半年もすれば結婚するのだから、今からでも王宮で一緒に住んでもいいのではないだろうか。
どうして別々の屋敷に住まわなければならないのか。
どうして彼女といつまでも一緒にいられないのか。
執着と独占欲にまみれた考えが次々と思い浮かんだ。
もちろん、彼女を困らせたくはないから精一杯の自制心を働かせ、こらえた。
部屋に向かっている最中、侍従に呼び止められた。
「陛下がお呼びでございます」
「分かった」
一体何だろう。
部屋に入ると、両親が揃っていた。
「父上、母上。ただいま戻りました」
「オリヴィエはどうでしたか? 楽しんでいましたか?」
「はい」
「そう、良かったわ」
私以上に変わったのは、母かもしれない。
あれほどオリヴィエの不甲斐なさに呆れ、月に一度に会うたび憂鬱そうだったのが、今ではオリヴィエのことをことあるごとに気にかけ、彼女と話すたび、その知見に関心し、一緒に過ごす時間を楽しんでいる。
母がオリヴィエについて話すたび、まるで実の娘に対するような親愛を感じていた。
問題は、父だ。
エイリアス王国の国王、コンラード・フリジング・エイリアス。
父は、私から歌劇や晩餐の話しを嬉しそうに聞いている母とは異なり、終始、渋い顔をしていた。
父からすれば、貴族間のバランスをとるために期待していた伯爵家の無能ぶり、オリヴィエの優秀さで公爵家の権力が肥大していくことが不満なのだろう。
そんな父が隠さぬ心の内に、不快感を覚えてしまう。
これまで、公爵家の頭を押さえ、王権を強化することに、冷静に賛同できていたはずだった。
しかしオリヴィエが活躍することへの不満を露わにしている父への、怒りにも似た感情が芽生えてしまう。
「情けない。あの娘に丸めこまれたか?」
「どういう意味ですか」
「あれは公爵家の人間だぞ」
「しかし私の妻となる人です。そうなれば王室の力になります。父上もおわかりでしょう」
「公爵が力を持つことを意味することを忘れるな。何のためにあの成り上がりの伯爵家を重用していると思っている?」
「……見事にしくじりましたけどねえ」
すまし顔で母上が言う。
じろりと父が睨んでも、母上は歯牙にもかけない。
「……石炭の輸出に関する話だが、伯爵家からレンド王国から輸出をするべきと奏上があった」
石炭はこのところ急に需要が高まっている燃料として使われる鉱物だ。
新しい製錬技術の発達にともない、より強い火力による鍛冶や産業での需要が高まったためである。
中原にあり、一年を通して温暖な気候の我が国はそもそも石炭需要が低いため、新しい取り引きする国を見つける必要に迫られていたものの、難航していた。
「レンド王国の重臣にツテがある、という話だ。おかげで相場よりも安い値段を提示してもらえている」
「貴重な石炭を? それではレンド王国が損をするのでは?」
「その分、こちらがレンド王国からの輸入品にかけている関税を引き下げて欲しい、とのことだ。首長国の一件ではしくじったが、伯爵家はやはり役に立つ」
父はまるで自分にそう言い聞かせているようだった。
「カリスト、あなたはどう思って?」
「……オリヴィエの意見を聞きましょう」
「何を言っている。あれはまだ王家の人間ではないぞ!?」
「私も、カリストに賛成です」
「お前まで、あの娘に懐柔されたのか!?」
母上の目が鋭くなる。
「私がそのようなことで、国の大事を左右すると、あなたは本気で仰っているのですか?」
突然見せた、女傑の顔に、父上はあからさまにぎょっとした顔をし、ばつが悪そうに目を逸らす。
「……そ、そうは言ってはおらぬ……」
はっきり懐柔されたのかと言ったではありませんか。
「では、オリヴィエの意見を聞くということでよろしいのですのね」
「もちろんそうに決まっているじゃない。ねえ、コンラード」
「……まあ聞くだけは、な。結論は変わらぬだろうが」
母上と視線を合わせ、にこりと微笑む。
この取り引きに問題がなければそれはそれで構わない。
しかし問題が見つかれば、きっとオリヴィエの手柄になるだろう。
取り引きがうまくいってほしいという気持ちはありながら、オリヴィエの手柄が増えて欲しいとも願ってしまう。
「黙れ」
王宮に帰り着き、馬車を降りれば、ずっと護衛を務め、一部始終を見守っていたソウルが口を開く。
「今日は楽しめて良かったな」
「ああ」
「まるで恋する乙女だな」
呆れたように笑われる。
「茶化すな」
今日、オリヴィエと一緒に過ごした時間を思い返す。
それだけで頬が緩み、本当に楽しかった。
愛する人と一緒にいることを尊いと歌う創作物はいくつも読んできたが、頭で理解しても、実感することはなかった。
でも今は──。
オリヴィエと歌劇と食事を楽しんだ。
彼女と一緒にいるだけで、意識もしないのに、話したいことが次々と頭に思い浮かんでくるのだ。
こんなことは初めてだ。
彼女が楽しそうに書物から聞き取った東大陸の噂話や伝統、文化について話してくれる。
想像することしかできないが、オリヴィエの話を聞いているだけでワクワクして、胸が弾んだ。
彼女の変わりように驚くよりも、芽生え始めた彼女への好意が日に日に、存在感を増していくのを実感する。
だからこそ、彼女に敬称ではなく、名前を呼んで欲しいと強く思ったのだ。
カリスト様。
少したどたどしいながらも、しっかり私の目を見て名前を呼んでもらえる。
ただそれだけのことに、顔から火が噴き出してしまいそうに火照り、口元がだらしなくなりそうなのを、手で必死に隠した。
今日は月が雲に隠れて、ことさら闇が深かったから良かった。
そうでなかったら、耳まで紅潮した顔を見られてしまったところだ。
名前を呼ばれただけなのに。
心が浮き立ち、だからこそ、最後に指先に口づけを……。
少し大胆すぎただろうか。
彼女のよく手入れの行き届いた白い柔肌。
少しでも力を入れれば壊れてしまいそうな繊細な芸術品のような。
唇には彼女の指先の感触が今も残る。
本当に不思議だ。
人間の心はこうも簡単に変わるものなのか。
あれほどオリヴィエが疎ましかったのに。
オリヴィエが私と一緒にいたいと駄々をこねていた時のことを思い出す。
あの時のオリヴィエの気持ちが、今になってはじめて理解できたような気がした。
今は私が同じことをしたくてたまらなかった。
どのみちあと半年もすれば結婚するのだから、今からでも王宮で一緒に住んでもいいのではないだろうか。
どうして別々の屋敷に住まわなければならないのか。
どうして彼女といつまでも一緒にいられないのか。
執着と独占欲にまみれた考えが次々と思い浮かんだ。
もちろん、彼女を困らせたくはないから精一杯の自制心を働かせ、こらえた。
部屋に向かっている最中、侍従に呼び止められた。
「陛下がお呼びでございます」
「分かった」
一体何だろう。
部屋に入ると、両親が揃っていた。
「父上、母上。ただいま戻りました」
「オリヴィエはどうでしたか? 楽しんでいましたか?」
「はい」
「そう、良かったわ」
私以上に変わったのは、母かもしれない。
あれほどオリヴィエの不甲斐なさに呆れ、月に一度に会うたび憂鬱そうだったのが、今ではオリヴィエのことをことあるごとに気にかけ、彼女と話すたび、その知見に関心し、一緒に過ごす時間を楽しんでいる。
母がオリヴィエについて話すたび、まるで実の娘に対するような親愛を感じていた。
問題は、父だ。
エイリアス王国の国王、コンラード・フリジング・エイリアス。
父は、私から歌劇や晩餐の話しを嬉しそうに聞いている母とは異なり、終始、渋い顔をしていた。
父からすれば、貴族間のバランスをとるために期待していた伯爵家の無能ぶり、オリヴィエの優秀さで公爵家の権力が肥大していくことが不満なのだろう。
そんな父が隠さぬ心の内に、不快感を覚えてしまう。
これまで、公爵家の頭を押さえ、王権を強化することに、冷静に賛同できていたはずだった。
しかしオリヴィエが活躍することへの不満を露わにしている父への、怒りにも似た感情が芽生えてしまう。
「情けない。あの娘に丸めこまれたか?」
「どういう意味ですか」
「あれは公爵家の人間だぞ」
「しかし私の妻となる人です。そうなれば王室の力になります。父上もおわかりでしょう」
「公爵が力を持つことを意味することを忘れるな。何のためにあの成り上がりの伯爵家を重用していると思っている?」
「……見事にしくじりましたけどねえ」
すまし顔で母上が言う。
じろりと父が睨んでも、母上は歯牙にもかけない。
「……石炭の輸出に関する話だが、伯爵家からレンド王国から輸出をするべきと奏上があった」
石炭はこのところ急に需要が高まっている燃料として使われる鉱物だ。
新しい製錬技術の発達にともない、より強い火力による鍛冶や産業での需要が高まったためである。
中原にあり、一年を通して温暖な気候の我が国はそもそも石炭需要が低いため、新しい取り引きする国を見つける必要に迫られていたものの、難航していた。
「レンド王国の重臣にツテがある、という話だ。おかげで相場よりも安い値段を提示してもらえている」
「貴重な石炭を? それではレンド王国が損をするのでは?」
「その分、こちらがレンド王国からの輸入品にかけている関税を引き下げて欲しい、とのことだ。首長国の一件ではしくじったが、伯爵家はやはり役に立つ」
父はまるで自分にそう言い聞かせているようだった。
「カリスト、あなたはどう思って?」
「……オリヴィエの意見を聞きましょう」
「何を言っている。あれはまだ王家の人間ではないぞ!?」
「私も、カリストに賛成です」
「お前まで、あの娘に懐柔されたのか!?」
母上の目が鋭くなる。
「私がそのようなことで、国の大事を左右すると、あなたは本気で仰っているのですか?」
突然見せた、女傑の顔に、父上はあからさまにぎょっとした顔をし、ばつが悪そうに目を逸らす。
「……そ、そうは言ってはおらぬ……」
はっきり懐柔されたのかと言ったではありませんか。
「では、オリヴィエの意見を聞くということでよろしいのですのね」
「もちろんそうに決まっているじゃない。ねえ、コンラード」
「……まあ聞くだけは、な。結論は変わらぬだろうが」
母上と視線を合わせ、にこりと微笑む。
この取り引きに問題がなければそれはそれで構わない。
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