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6 王太子カリストの戸惑い
学校が終わり、王宮へ戻る。
「二人きりにしてくれ」
部屋に戻ると、ソウル以外の人間を下がらせる。
「何かあったのか?」
「……あったと言えば、あった」
「はっきりしないな」
ソウルは部屋の片隅にあるポッドからカップに紅茶を注ぎ、渡してくる。
「ありがとう」
口をつけつつ、昼間の食堂でのことを話す。
向かいに座ったソウルは驚いた顔をしていた。
「どう思う?」
「いよいよ、別人だな。あのプライドの高いオリヴィエ嬢が、伯爵令嬢相手にそんな無礼な態度を取られたにもかかわらず平然としていた上に、席を譲るなんて」
「やはりそう思うか」
私の知っているオリヴィエは、伯爵令嬢ごとき歯牙にもかけないような気高い性格の持ち主ではない。
むしろ不用意に私と話そうとする、全ての女性たちを徹底的に排除しようとする、激しい気性の持ち主だ。
強がっているようにはとても見えなかった。
本当に、心底ミリエルのことをどうでもいいと思っているような反応だった。
食堂を去っていく彼女の後ろ姿に、まるで私自身のこともどうでもいいと思われているような、そんな落ち着かない気持ちになったことに戸惑いを隠せなかった。
激しく執着するオリヴィエと、それを煩わしく思い、距離を取ろうとする王太子。
それがこれまでの私たちの関係だ。
それが変わろうとしている?
そのことに、言いしれぬ不安のようなものを覚えてしまう。
私は恥を忍んで、そのこともソウルに話してみた。
「お前はお前なりに、彼女を愛しているのか?」
「……政略結婚といえども、不幸な結婚を望むはずがない。多少なりとも好きになろうと努力はしてきたが……分かるだろう。彼女の行動に失望してきたことを」
「ああ。……だったら、いきなり突き放されるような態度を取られて戸惑っている、とかか?」
「自分でも信じられないが、そうかもしれない。まるでこのまま彼女が消えていくような錯覚をおぼえるんだ……」
煩わしく思うほどの私への執着がそんな簡単に消えてしまうものなのだろうか。
それとも、新手の恋の駆け引き?
押して駄目なら引いてみろ。
もしそうだとしたら、その効果は抜群だ。
実際、私は振り回され、昼食からずっとそのことを考えていた。
戸惑ったのは俺だけではない。
その場に居合わせた全員が、彼女の反応に驚きを隠せないようだった。
「……意識を失った人間の体は無防備で、成仏しきれぬ魂が飛び込んでしまう。そんな話を、お前の母から聞いたことがある」
「私も覚えているが、それはただの言い伝えだ。現実の話じゃないだろう」
「分かっているが、そんな言い伝えを信じてしまいそうになるくらい、オリヴィエ嬢は変わった。お前たちは婚約者だろう。ちゃんと話したらどうだ?」
「どうして私のことが突然、どうでもよくなったのか、と?」
「そう聞きたければ聞けばいい。婚約者だろう。気にかかることはできるかぎり、クリアにしておいたほうがいい」
「……そんなことを聞いてどうする。構われたがりの子どもじゃないんだぞ」
「いいや。今のお前の言葉を総合すると、そうとしか思えないぜ」
ソウルはからかうようにニヤッと笑う。
「馬鹿なことを」
席を立つと、ソウルに侍従たちを部屋へ戻すよう伝えた。
王太子としての公務がある。
これ以上、余計なことでそのスケジュールを圧迫する訳にはいかない。
心の中にわだかまりつづけるオリヴィエへのよく分からない感情に無理やり、フタをした。
「二人きりにしてくれ」
部屋に戻ると、ソウル以外の人間を下がらせる。
「何かあったのか?」
「……あったと言えば、あった」
「はっきりしないな」
ソウルは部屋の片隅にあるポッドからカップに紅茶を注ぎ、渡してくる。
「ありがとう」
口をつけつつ、昼間の食堂でのことを話す。
向かいに座ったソウルは驚いた顔をしていた。
「どう思う?」
「いよいよ、別人だな。あのプライドの高いオリヴィエ嬢が、伯爵令嬢相手にそんな無礼な態度を取られたにもかかわらず平然としていた上に、席を譲るなんて」
「やはりそう思うか」
私の知っているオリヴィエは、伯爵令嬢ごとき歯牙にもかけないような気高い性格の持ち主ではない。
むしろ不用意に私と話そうとする、全ての女性たちを徹底的に排除しようとする、激しい気性の持ち主だ。
強がっているようにはとても見えなかった。
本当に、心底ミリエルのことをどうでもいいと思っているような反応だった。
食堂を去っていく彼女の後ろ姿に、まるで私自身のこともどうでもいいと思われているような、そんな落ち着かない気持ちになったことに戸惑いを隠せなかった。
激しく執着するオリヴィエと、それを煩わしく思い、距離を取ろうとする王太子。
それがこれまでの私たちの関係だ。
それが変わろうとしている?
そのことに、言いしれぬ不安のようなものを覚えてしまう。
私は恥を忍んで、そのこともソウルに話してみた。
「お前はお前なりに、彼女を愛しているのか?」
「……政略結婚といえども、不幸な結婚を望むはずがない。多少なりとも好きになろうと努力はしてきたが……分かるだろう。彼女の行動に失望してきたことを」
「ああ。……だったら、いきなり突き放されるような態度を取られて戸惑っている、とかか?」
「自分でも信じられないが、そうかもしれない。まるでこのまま彼女が消えていくような錯覚をおぼえるんだ……」
煩わしく思うほどの私への執着がそんな簡単に消えてしまうものなのだろうか。
それとも、新手の恋の駆け引き?
押して駄目なら引いてみろ。
もしそうだとしたら、その効果は抜群だ。
実際、私は振り回され、昼食からずっとそのことを考えていた。
戸惑ったのは俺だけではない。
その場に居合わせた全員が、彼女の反応に驚きを隠せないようだった。
「……意識を失った人間の体は無防備で、成仏しきれぬ魂が飛び込んでしまう。そんな話を、お前の母から聞いたことがある」
「私も覚えているが、それはただの言い伝えだ。現実の話じゃないだろう」
「分かっているが、そんな言い伝えを信じてしまいそうになるくらい、オリヴィエ嬢は変わった。お前たちは婚約者だろう。ちゃんと話したらどうだ?」
「どうして私のことが突然、どうでもよくなったのか、と?」
「そう聞きたければ聞けばいい。婚約者だろう。気にかかることはできるかぎり、クリアにしておいたほうがいい」
「……そんなことを聞いてどうする。構われたがりの子どもじゃないんだぞ」
「いいや。今のお前の言葉を総合すると、そうとしか思えないぜ」
ソウルはからかうようにニヤッと笑う。
「馬鹿なことを」
席を立つと、ソウルに侍従たちを部屋へ戻すよう伝えた。
王太子としての公務がある。
これ以上、余計なことでそのスケジュールを圧迫する訳にはいかない。
心の中にわだかまりつづけるオリヴィエへのよく分からない感情に無理やり、フタをした。
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