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第二章
近い未来
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肇の家族が村からいなくなって、父が、とある人に口止め料を渡しに会いに行こうとしたらしい。肇の家の前で疫病神と言った人。しかし、父が動き出した時には、その人は、いろんな人に疫病神と言いふらしていた。
反物を販売してたが、お客さんは来なくなった。
私が疫病神と噂になっていたから。
私の家族も、この村に居れなくなり、大きな町に引越すことになった。
そこで、心機一転するのが目的らしい。
ただ、両親が村を出る前に、話していたのを聞いてしまった。
「時子が疫病神と言われるせいで、ここでの販売は、もう無理だな」
「時子が肇に怪我をさせたのが、事の始まりよ」
私は、肇を怪我をさせた時から疫病神なのか。
肇がいないと味方がいない。
でも、肇はもういない。耐えるしかない。
肇に貰った折り紙の鶴を見つめた。
町に引越して六年経った。商売繁盛で店は忙しい。私も、店の手伝いをして過ごしている。
この町では、私が以前どう言われたか知ってる人はいない。
時々、お客さんから差し入れを貰う。
私への贈り物を渡そうとする人達もいたけど、やんわり断る。個人的な贈り物で、騒ぎを起こしたくない。
父と何か話しているのは見かけたことあるが、内容は知らない。私からは、あえて聞かない。父も何か言ってくることはなかった。
しばらくしてのことだった。部屋の障子を開けると、両親が並んで座っている。
私は障子を閉めると、両親の目の前に座り話しかけた。
「話とは?」
少し沈黙した後、父から伝えられた言葉に目を見開く。
「時子。品田将軍様の側室になりなさい」
「めでたいことよ」
両親は、目を輝かせ喜んでいる。
どうして、喜んでいるのか分からない。
「側室・・・」
「お客さんでも、時子を正妻や側室の話をしくる人はいた。贈り物を渡そうとする人達がいただろう。時子は、やんわり断ってたから、こっちに話のついでに渡そうとしてくる人もいたんだ」
「・・・・・」
「時子は美しく育っている。将軍様の耳にも入って、お忍びで店に来てたんだ。直接、時子を見て、側室にすることを決められた。将軍様の側室になれるのは名誉だ。おめでとう」
「急に、そんなこと言われても・・・私は好きな人に嫁ぎたい。側室は嫌」
私は涙目になって、両親にお願いした。
すると、両親は目を吊り上げた。
「急ではない!時子に伝えてなかっただけで、話は進んでる。この話を断って、その後、この店はどうなると思ってるんだ!お前は、また店の顔に泥を塗るのか!疫病神と言われたいのか?!」
「時子。子供みたいなことを言うんじゃないわよ!今は相手に愛情がなくても、いづれ出てくるわ。貴方は名誉を手に入れかけてるのに、せっかくの機会を逃そうとしてるのよ!」
「・・・お父さんとお母さんは、外面と身内から名誉が出ることしか考えてないのね・・・。前の村でのことは悪いと思ってる。だから、少しでも力になれるように、店の手伝いを頑張ってきた。私にできるのは、これくらいだと思ったから。今も根に持ってるのね。私の気持ちは・・・どうでもいいのね」
目に溜めていた涙が零れ落ち、膝の上で拳を作った。
「「時子の為だから」」
そう言って、両親は部屋を出て行った。
私の話を聞いた時から、二人は冷たい目で見ていた。
私の為なんて思ってないだろう。
将軍様に愛情が湧く自分を、想像することはできなかった。
地位がある人の側室になっても、自分には辛く苦しい未来しか想像できない。
反物を販売してたが、お客さんは来なくなった。
私が疫病神と噂になっていたから。
私の家族も、この村に居れなくなり、大きな町に引越すことになった。
そこで、心機一転するのが目的らしい。
ただ、両親が村を出る前に、話していたのを聞いてしまった。
「時子が疫病神と言われるせいで、ここでの販売は、もう無理だな」
「時子が肇に怪我をさせたのが、事の始まりよ」
私は、肇を怪我をさせた時から疫病神なのか。
肇がいないと味方がいない。
でも、肇はもういない。耐えるしかない。
肇に貰った折り紙の鶴を見つめた。
町に引越して六年経った。商売繁盛で店は忙しい。私も、店の手伝いをして過ごしている。
この町では、私が以前どう言われたか知ってる人はいない。
時々、お客さんから差し入れを貰う。
私への贈り物を渡そうとする人達もいたけど、やんわり断る。個人的な贈り物で、騒ぎを起こしたくない。
父と何か話しているのは見かけたことあるが、内容は知らない。私からは、あえて聞かない。父も何か言ってくることはなかった。
しばらくしてのことだった。部屋の障子を開けると、両親が並んで座っている。
私は障子を閉めると、両親の目の前に座り話しかけた。
「話とは?」
少し沈黙した後、父から伝えられた言葉に目を見開く。
「時子。品田将軍様の側室になりなさい」
「めでたいことよ」
両親は、目を輝かせ喜んでいる。
どうして、喜んでいるのか分からない。
「側室・・・」
「お客さんでも、時子を正妻や側室の話をしくる人はいた。贈り物を渡そうとする人達がいただろう。時子は、やんわり断ってたから、こっちに話のついでに渡そうとしてくる人もいたんだ」
「・・・・・」
「時子は美しく育っている。将軍様の耳にも入って、お忍びで店に来てたんだ。直接、時子を見て、側室にすることを決められた。将軍様の側室になれるのは名誉だ。おめでとう」
「急に、そんなこと言われても・・・私は好きな人に嫁ぎたい。側室は嫌」
私は涙目になって、両親にお願いした。
すると、両親は目を吊り上げた。
「急ではない!時子に伝えてなかっただけで、話は進んでる。この話を断って、その後、この店はどうなると思ってるんだ!お前は、また店の顔に泥を塗るのか!疫病神と言われたいのか?!」
「時子。子供みたいなことを言うんじゃないわよ!今は相手に愛情がなくても、いづれ出てくるわ。貴方は名誉を手に入れかけてるのに、せっかくの機会を逃そうとしてるのよ!」
「・・・お父さんとお母さんは、外面と身内から名誉が出ることしか考えてないのね・・・。前の村でのことは悪いと思ってる。だから、少しでも力になれるように、店の手伝いを頑張ってきた。私にできるのは、これくらいだと思ったから。今も根に持ってるのね。私の気持ちは・・・どうでもいいのね」
目に溜めていた涙が零れ落ち、膝の上で拳を作った。
「「時子の為だから」」
そう言って、両親は部屋を出て行った。
私の話を聞いた時から、二人は冷たい目で見ていた。
私の為なんて思ってないだろう。
将軍様に愛情が湧く自分を、想像することはできなかった。
地位がある人の側室になっても、自分には辛く苦しい未来しか想像できない。
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