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第7章
縛り
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私は、今ボスの部屋にいる。テーブルの上には、お茶菓子や紅茶があり、向こう側には、プレゼントの箱が積まれている。
そして、私はソファーに座り、隣にボスも座っている。
「ボス。これは、なんですか?」
「君の任務の頑張りに、ささやかながら、私からのプレゼントだよ。それより2人っきりだから、親子のように話さないかい?」
ボスを見ると、穏やかな表情を浮かべている。その裏の顔で、何を思っているのか勘ぐってしまう。
「いりません。当たり前のことをしたまでです」
「君は、本当に物欲がないね。それに、17年経っても、私と君の関係は変わらない。お義父さんと1度も呼んだことないから、ちょっと寂しいけど、我慢するよ」
寂しげに笑っているが、この人に騙されてきたのは、何人いるのだろうか。
「その代わりと言っては変な気もするけど、私の話を聞いてくれるかい?」
「なんでしょうか」
「私はね、犬を今まで何匹も飼ってきているんだよ。最初から、忠誠心のある犬もいれば、徐々に忠誠になる犬もいる。犬が、忠誠心を持ったまま、飼い続けるのは大変なんだよ。分かるかい?いつ噛み付いてくるか分からないから。だから、色々な方法はあるけど、忠誠心がなくならないように、努力してるんだよ。でも、努力してもダメなら手放す」
「・・・手放すとは、どう言う形で?」
「紅音。世の中には知らない方がいいって言葉あるよね。君の質問は、それに値するよ」
「・・・・・」
「紅音。君は裏切らないよね。できれば、親子みたいに過ごしたいが、難しそうだから。あ、君のことは、犬とは思っていないよ?ただ、君には、私に対しての恩はあるんじゃないかな。君に衣食住と教養を与え、殺し屋としての力をつける場所を与えたのは、誰だい?」
「ボスです」
「そうだね。そんな恩人を、紅音は裏切ったりしないよね。恩を仇で返すようなこと」
ボスは、私の頬に手を添えて聞いてくる。途中から、冷や汗が出そうになるのを我慢して、無表情を貫き通しているが、背中がゾクッとする。
ボスは気づいて、こんな話をしている。
ここで「Yes」と言わなければ「手放す」と言われる。だから、「Yes」と。ここは嘘でも言わなければ。なのに、口が縫い付けられたように開かない。
焦りと恐怖の中、ドアがノックされた。
「時間切れのようだね。Bloody rose。さっきの話を忘れないように。私を、絶望させないでくれ。君には、期待しているから」
頬に添えられた手が離された。私は、1度頭を下げ、ボスの部屋から出ていく。そのまま自室に戻り、フラフラ歩き、崩れ落ちるように座り込んだ。
鏡に映る自分は、真っ青な顔で息をしている。
この先どうしていけばいいのかと思い、頭をかかえた。
そして、私はソファーに座り、隣にボスも座っている。
「ボス。これは、なんですか?」
「君の任務の頑張りに、ささやかながら、私からのプレゼントだよ。それより2人っきりだから、親子のように話さないかい?」
ボスを見ると、穏やかな表情を浮かべている。その裏の顔で、何を思っているのか勘ぐってしまう。
「いりません。当たり前のことをしたまでです」
「君は、本当に物欲がないね。それに、17年経っても、私と君の関係は変わらない。お義父さんと1度も呼んだことないから、ちょっと寂しいけど、我慢するよ」
寂しげに笑っているが、この人に騙されてきたのは、何人いるのだろうか。
「その代わりと言っては変な気もするけど、私の話を聞いてくれるかい?」
「なんでしょうか」
「私はね、犬を今まで何匹も飼ってきているんだよ。最初から、忠誠心のある犬もいれば、徐々に忠誠になる犬もいる。犬が、忠誠心を持ったまま、飼い続けるのは大変なんだよ。分かるかい?いつ噛み付いてくるか分からないから。だから、色々な方法はあるけど、忠誠心がなくならないように、努力してるんだよ。でも、努力してもダメなら手放す」
「・・・手放すとは、どう言う形で?」
「紅音。世の中には知らない方がいいって言葉あるよね。君の質問は、それに値するよ」
「・・・・・」
「紅音。君は裏切らないよね。できれば、親子みたいに過ごしたいが、難しそうだから。あ、君のことは、犬とは思っていないよ?ただ、君には、私に対しての恩はあるんじゃないかな。君に衣食住と教養を与え、殺し屋としての力をつける場所を与えたのは、誰だい?」
「ボスです」
「そうだね。そんな恩人を、紅音は裏切ったりしないよね。恩を仇で返すようなこと」
ボスは、私の頬に手を添えて聞いてくる。途中から、冷や汗が出そうになるのを我慢して、無表情を貫き通しているが、背中がゾクッとする。
ボスは気づいて、こんな話をしている。
ここで「Yes」と言わなければ「手放す」と言われる。だから、「Yes」と。ここは嘘でも言わなければ。なのに、口が縫い付けられたように開かない。
焦りと恐怖の中、ドアがノックされた。
「時間切れのようだね。Bloody rose。さっきの話を忘れないように。私を、絶望させないでくれ。君には、期待しているから」
頬に添えられた手が離された。私は、1度頭を下げ、ボスの部屋から出ていく。そのまま自室に戻り、フラフラ歩き、崩れ落ちるように座り込んだ。
鏡に映る自分は、真っ青な顔で息をしている。
この先どうしていけばいいのかと思い、頭をかかえた。
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