全てはあの日から

来栖瑠樺

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第3章

救世主

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 今回は殺し屋の仕事だ。ターゲットは、波原順平と、その傘下のリーダー達。
彼らの行いは、お金に困っている人達に、売春に誘導させて金儲けしていること。それが、今回のターゲットとして選ばれた理由。
さて。いつ殺そうか。バラバラの日程で殺すのは、相手に警戒されるし、めんどうだ。
私は、ボスの電話からかけたように思わせるために、細工をする。そして、それぞれの傘下のリーダーに集合するように連絡をする。ボスには、傘下の1人から火急の案件と伝えるようにして、1つの場所に集めた。
指定の日時に、ターゲット達が雑居ビルの一室に集まる。
「で、火急の案件とは、なんだよ?」
ボスがリーダー達に問いかける。
問いかけられたリーダー達は、それぞれ顔を見合わせる。
「え?!俺達は、ボスから呼び出しがあったから来たんですよ」
「火急の案件って、何のことですか?」
その場は、困惑な雰囲気に包まれる。
「おい、どうゆうことだよ!」
この中で1番短気なのは、ボスのようだ。怒鳴り声が響いた。
そこで、私はドアを開けて部屋の中に入る。
「誰だ?!」
「何の用だ?!」
急に現れた私に動揺しているが、そんな中ボスが手を挙げて、その場を鎮める。
「お前ら、黙れ。ごめんな。お姉さん、怖い思いさせて。何か用?」
ボスは、私のことを品定めするような目で見てくる。
目の前にいるボスを、私は何も言わずに、頭を銃で撃った。倒れたボスを見たリーダー達は、しばらく呆然としていた。そして、やっと状況を理解したようだ。
「おい、ボスを殺して何のつもりだ」
「てめえ、殺してやる」
残りの奴らが反撃に来たが、みんな返り討ちになった。倒れた遺体を見回した後、その場を離れた。

***
 「真木刑事こちらです」
1人の刑事に現場を案内された。そこには数人の男の遺体。全員が、銃で頭を撃たれている。
「今回もか」
「そうですね。今までの事件と同じ共通点です」
共通点。それは法で裁かれなかった者。不起訴だったり、まだ事件になる前の人のときもある。今までも被害者だと思っていた人が、じつは犯罪を犯していたことを調査して分かったことは、何度もある。今回は、警察のマークに入っていたが、トカゲのしっぽ切りばかりで、なかなか犯人逮捕までの証拠まではいかなかった。その人達の結末は、誰かに殺害されて幕を閉じた。
一体誰が?まるで、粛清のように殺している。
正当化する行為ではないが、今までも死んだ人達がいて、結果的に助かった人達もいる。今回の売春の被害者もその1部だ。売春は犯罪だが、今回の被害者が死んだおかげで、ずっと売春から抜けられない人生ではなくなった。
ある意味、救世主かもしれない。

 刑事や鑑識からの報告を受けながら、あの女のことを考えていた。
矢口麻衣。あの女は、今何をしている。
俺の復讐相手。兄が殺されてから警察官に転職した。転職すると周りの警察官から媚びを売ってきた。それは、父が警察署のトップだからだ。媚びを売る連中にうんざりしている。警察に入れば、矢口麻衣の何か手がかりが見つかるだろうと思った。
しかし、現実は甘くない。あの女ことを調べているが、手がかりが一向にない。
いつになったら、復讐できるだろうか。
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