全てはあの日から

来栖瑠樺

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第4章

接触

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*** 
 俺は、ある路地裏にいる。
なぜ、こんな場所にいるかと言うとメールが来たからだ。知らないアドレス。件名に矢口麻衣。本文は、待ち合わせ場所と日時が書いてあった。
あの女からのメールだろうか。彼女に繋がる情報は何もない。
路地裏に来てから、しばらく経った頃、足音が聞こえた。
その方向に目を向けると、復讐の相手。矢口麻衣が立っている。
「矢口麻衣」
「久しぶりだな。真木忍」
あの日から5年。見た目は特に変わってない。彼女の顔を見ると、あの日の出来事を思い出して拳を作る。
「こんなところに呼び出して、何の用だ」
「アンタが、いつ私を殺しに来るのかと思ってね」
俺は、苦い顔をした。殺したくても何の証拠もない。
「証拠がないからか」
彼女は、俺の考えてることを見抜いた。その後に驚く言葉を続ける。
「図星か。証拠がないなら捏造すれば?」
「それでは意味がない」
俺は刑事だ。そんなことできない。
「真面目だね。アンタは、警察に転職して色々な事件を担当し功績もあるようだ。このままいけば、さらに出世するんじゃないの?お父さんにとって、自慢の息子だろう」
「なぜ、それを知っている」
警察のセキュリティは、万全だ。
この女、ハッキングしてるのか。
「アンタのことは、興味があるからな。だって私を殺すんでしょ?あの日から5年経ってるけど、いつ頃になりそう?」
「・・・」
俺は答えることができない。そんな俺をしばらく見た後、聞き取れない声で彼女は何か言った。
「今、何を言った?」
「何も?とにかく頑張りなよ、もう5年も待ってるんだから。お互いのためにも。真木忍」
そう言って、矢口麻衣は去った。俺の制止の言葉を聞かずに。先程まで、そこに立っていた彼女の場所を見つめて歯ぎしりをした。

***
 5年ぶりに会った真木忍が、私を見る目は変わらない。
変わらないのはいいが、私を殺すまでには時間がまだかかりそうだ。
このままだとダメだなと思った。彼が、強行突破するようなことを起こさないとダメか。
私は、考えを巡らせた。
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