もてがみっ! 〜神乃坂町の神さまに感謝を込めて〜

獅子丸@K

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第一話 「俺、 神さま案内人になる」

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 俺、山里大河やまざとたいがは空を見上げる。

 「あー、 お客がこねー」

 バイト先である、アクセサリーショップの前でそう嘆いていた。

 俺が住む神乃坂かみのざか町は、かなりの田舎だ。

 都市部から、かなり離れた山沿いにある小さな町。

 これといった、有名な観光スポットもなければ、特産品もない。

 そろそろ、過疎になるんじゃないかと言われてしまうくらいだった。

 「そんなクソ田舎で、 なんでアクセサリーショップが経営できてんだよ」

 誰も足を運ばない店に向かって、俺はグチをこぼす。

 「ふぉっふぉっふぉ、 そんなにイライラするでないよ」

 そんな俺の前に、店主であるばあさんが声をかけてくる。

 「富田のばっちゃん、 そろそろネット通販とか考えようぜ? 店売りなんか古いよ」

 この店は、地元で取れる天然石を使ったアクセサリーを販売している。

 すべて手作りで、ばあさんが一人で作っている。

 「ネット通販? いかんいかん、 わしでは機械の箱は扱えないわい」

 ーー機械の箱って、 パソコンだろ。

 ため息をつく俺は、がっくりと首をさげる。

 「どんだけ田舎なんだよ、 この町は……」

 高校生の俺ら年代は、ほとんどが隣の街にバイトや遊びに行っている。

 俺も最初は、そうしようと思っていた。

 ーーご近所の富田さん、お店に一人で大丈夫かしら?アンタ、行きなさいよ。

 母親から強制的に手伝いに行かされてしまった俺。

 もちろん、逆らえるはずもなかった。

 「ふぉっふぉっふぉ、 おまえさんところの母親は怖いからのう」

 俺が考えていることを言い当てたばあさんは、笑いながらお茶を飲んでいる。

 「おっと、 そろそろ店じまいをする時間さね。 大河、 今日もありがとうね」

 時間を見ると、まだ夕方の六時を過ぎたころだった。

 「ったく、 ばあさん! バイト代はきちんともらうからな」

 着ていたエプロンを脱いで、俺は帰り支度をする。

 「親父さんによろしくねぇ、 今年は特別な年だしのう」

 ばあさんに別れを告げて、俺は店を後にする。

 「特別な年? なんかあったっけ?」

 聞き覚えがない俺は、特に気にすることなく、自宅へ向かった。

 「ただいまー、 ってなんだこりゃ」

 自宅のドアを開けると、大量の靴が並べられていた。

 「あら、 大河。 おかえり」

 ちょうど台所から出てきた母親を見ると、ビール瓶を両手に持っている。

 「母ちゃん、 今日なんかあるの?」

 座敷のほうから、大勢の人が話している声が聞こえる。

 「町内の人たちよ、 お父さんと会議をしているみたいよ」

 どんちゃん騒ぎをしているようにしか、見えない声に俺はあきれる。

 「なにが会議だよ、 ただの酒飲んでるだけだろうが」

 俺は靴を脱いで、台所に向かう。

 「腹が減ったよー、 飯にしてくれよ」

 空腹を感じる俺が中に入ろうとした時、声をかけてられる。

 「おおー! 帰ってきたか、バカ息子!」

 酔っ払った親父が、真っ赤な顔をして
俺に手まねきをする。

 「んだよ、 酔ってんのか。 めんどくせぇー」

 「そんなことはいい! ちょっとこっちに来い」

 親父に手を捕まれた俺は、そのまま引っ張られる。

 「なにすんだよ! どこに連れていくんだよ」

 親父は座敷のほうへ、俺を連れていく。

 ーーバタン!

 「皆さん! 今年のお役目様を、連れてきましたよー!」

 座敷の中に入ると、大勢の人が待ってましたと声をあらげる。

 「よっ、 神乃坂神社の息子! 頑張れよ」

 状況がまったくわからない俺をよそに、酔っ払ったおっさんたちは盛り上がっている。

 「は? お役目様? なんの話をしてるんだ」

 親父は俺を座らせると、コップに入ったビールを飲む。

 「ということで! このバカ息子に決まりましたー!」

 歓声が上がる中、俺だけは意味がわからずにポカンとしている。

 「……誰か説明をしろよ!」

 会議という宴会が終わり、俺は親父にどういうことか尋ねる。

 「ひっく、 おまえはまだ知らなかったっけ?」

 酔っ払いながら、親父は話し始める。

 神乃坂市は百年に一度、町の神様を迎い入れる風習があるらしい。

 神様は町に降り立ち、住む者たちは、もてなさなければならない。

 その町の案内人が、この町にある神社の息子が務めるという話だ。

 「それが俺?」

 俺の家は古くからある神社で、その神様をまつっている。

 だが、そんな行事をまったく知らなかった俺は、頭が混乱する。

 「ひっく、 おまえのじいさんもそのお役目をしたんだ! おまえもできる」

 「いやいや……神様を案内するって、目に見えねーだろ」

 ーーそんなを、どうやって案内すればいいんだよ。

 そんな非現実的なことはできるはずがないと親父に話した。

 「大丈夫大丈夫! 儀式とかはこちらでやる、 なにも心配するな」

 「心配もなにも、 やりたくねーよ! ……って聞いてんのか親父」

 親父はすでに酔い潰れて、寝てしまっている。

 「なにがどうなんってんだよ……」

 よくわからない行事に参加しなければならないことに、俺は頭を悩ませる。

 「はあ、 神社の息子…… 辞めてぇ」

 ーープー!

 俺が落胆していると、親父が返事をするようなオナラをする。

 「オナラで、返事をすんじゃねーよ!」

 こうして、俺は神様を案内する役目を担うことになってしまった。
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