もてがみっ! 〜神乃坂町の神さまに感謝を込めて〜

獅子丸@K

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第七話 「神さまと先輩とパチンコ」

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 町を歩く、俺といのりちゃん。

 歩いてはみたものの、本当になにもない。古民家が並び、古くさいお店が何軒かある。

 「もてなすって言っても、 どこがいいのかなあ」

 辺りを見回してみるも、特に目立つものがない。

 「大河よ、 あれはなんじゃ?」

 後ろにいたいのりちゃんは、すっと指を指した。

 指の先を見ると、そこにはボロい店の看板があった。

 「ああ、 あれな」

 店には車が数台だけ止まっており、繁盛しているとはいえない。

 「あのパチンコ屋、 まだつぶれてなかったのか」

 ーーパチンコ店、神乃坂シューティングスター。

 俺が生まれる前からある、古いパチンコ屋。

 地方にある有名なのとは違い、一店舗しかない。田舎町にあるとはいえ、いまだに閉店しないのが不思議である。

 「パチンコ…… とはなんだ?」

 興味があるように、いのりちゃんは俺に聞いてくる。

 「ああ、 多分パチンコ玉をなんかの穴にいれたら当たりっていう遊びじゃないか?」

 パチンコなどやったこともなければ、店に行ったことすらない俺。

 ものすごい適当に、いのりちゃんに話した。

 遊ぶという言葉に反応したのか、興味がありそうに話を聞いている

 「ほー! そんな遊びが、この時代にはあるのじゃな」

 「けど年齢の制限があって、 多分できない…… って、 いのりちゃん!」

 すたすたと、店の入り口まで歩いていっている。

 「わらわが参ったぞ! 扉を開けい!」

 そうさけぶも、中から人が現れる気配がない。

 駆け寄った俺が、入り口まで近くと自動ドアが開く。

 「ほう! 手で開けなくとも、 勝手に開くのだな! 大河、 どんな術を使った?」

 ーーいやいや、 人がいたら開くんですよ! 自動ドアですからね。

 などと考えながら、いのりちゃんに説明する。

 すると、店の中から店員が現れた。

 「ちょっとお客さん、 入るんなら入って…… おいおい、 たー坊じゃねーか」

 その声に、俺は聞き覚えがあった。

 「あれ、 誠司先輩?」

 現れたのは、去年に学校を卒業した三つ上の先輩。見た目はガラが悪そうだが、人を殴ったことすらない真人間。

 趣味はパッチワークという、ギャップがすごい先輩だ。

 「どうしたよ? こんな時間に、 学校は?」

 「いやあ、かくかくしかじか」

 ちらっと、いのりちゃんのほうを向いていきさつを話す。

 「ほう! 今年が、 その神様をもてなす年なわけな。 しっかし、 本当にいるんだなあ」

 いのりちゃんの姿を認識できている誠司先輩はそう感心していた。

 「というか、 先輩。 神さまとか、 信じてたんですね」

 「当たり前だろ? 毎年、 神社で祈ってるしよー!」

 「うむ! 実に、 よい心を持つ男じゃのう…… では参るか」

 そう言うと、すたすた歩きながら入り口に入ろうとするいのりちゃん。

 それを見た誠司先輩は、いのりちゃんの首元をぐっとつかんだ。

 「ちょっとちょっと! うちの店は、 未成年はお断りだよ」

 ーー未成年って、 先輩もまだ十八じゃないか。

 そう思った俺だったが、なにやらおもしろそうなのでだまることにした。

 「最近、 多いんだよね! パチンコをやる歳でもないのに入ろうとするやつが」

 ずるずると引きづるように、いのりちゃんを入り口から遠ざける。

 「無礼な! わらわは神じゃぞ? おぬしらよりも、 何百年も生きておるのだぞ」

 「はいはい、 そうですね! けど、 神さまだろうと守ってもらわなきゃ」

 まったくいのりちゃんの話を信じようとしない先輩。

 ーーいや…… 数百年も生きてるなら、パチンコできる歳だろ。

 年齢だけをみたら、クリアしている。
というか、軽くオーバーしているだろうと僕は思った。

 「見た目が幼いんだから、 他のお客さんが勘違いしちゃうでしょうよ」

 「なぜじゃあああ!」

 叫び。嘆き。そして、落胆。

 そんな状況のいのりちゃんに、俺は笑いが込み上げくる。

 「まあ、 ぷっ…… 仕方ないよ、 いのりちゃん。 あきらめよう…… くすくす」
 
 必死に笑い声を出すのを我慢している俺を見ると、いのりちゃんは地べたに這いつくばる。

 「嫌じゃ嫌じゃー! 

 ぶんぶんとその場で暴れ出すいのりちゃん。その姿は、まるで小さな子どものようだった。

 「おい…… たー坊、 本当に神さまなのか?」

 「ああ、 一応そうなんだけどな」

 想像していた神さまと違っていたのか、先輩は顔を引きつっている。

 「はあ、 しょうがねえな」

 そう口にすると、先輩は店の中に入っていった。

 しばらくして荷物を乗せる台を押しながら、こちらに向かってくる。

 「ほらよ、 店でパチンコはできねーが、 外でならいいだろう」

 ずっしりと重そうなパチンコ台が姿を現した。

 「先輩…… 店から持ってきたんですか?」

 「あ? ああ、 一つ壊れててな。 スロットはできねーが玉は打てるのよ」

 だとしても、店から持ってきていいのか?と思いながらいのりちゃんに声をかけた。

 「ほ…… ほらいのりちゃん! これがパチンコだぞ、 よかったな」

 俺の声を聞いたいのりちゃは、すぐに立ち上がってパチンコ台に近づく。

 「ほう! この箱がのう、 では遊んでみるぞ」

 そう言って、パチンコ台をあちこち触る。

 「玉を入れないとできないよ? ほら、 こいつを使いな」

 先輩はいのりちゃんに小さな鉄の玉を渡す。 先輩にやり方を教えられながら、玉をパチンコ台に入れる。

ーーピコピコリーン!

 軽快な音が鳴り、玉がゴロゴロと落ちてくる。

 「おお、 すごいぞいのりちゃん、 玉が大量だ」

 「はっはっは! わらわにかかれば、こんなもの大したことではないわ」

 よほどパチンコが気に入ったのか、いのりちゃんはしばらく打ちまくる。

「神さまがパチンコにハマるって、 それはいいのか?」

 そう疑問に思うが、満面の笑みを浮かべて遊ぶいのりちゃんの顔を見る。

ーーまあ本人が喜んでるなら、いいか。

 パチンコ屋でもてなすことができたから、よしとしよう。うん、 そうしよう。
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