もてがみっ! 〜神乃坂町の神さまに感謝を込めて〜

獅子丸@K

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第六話 「神さまとコーラと」

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 真奈美に小銭を借り、俺はいのりちゃんの元へ戻る。

 いのりちゃんは、自動販売機の前で待っていた。

 「ひいひい、 待たせたな! さあ、 飲み物を出してやろう」

 自動販売機に小銭を入れると、ボタンが光った。

 「いのりちゃん、 なにが飲みたい?」

 神さまがなにを飲むのかわからなかった俺は、いのりちゃんに尋ねる。

 「うーむ…… 字が読めぬが、 この赤い色が気になるのう」

 いのりちゃんは、それに指を指した。

 指先に目線を向けると、それはコーラだった。

 ーー炭酸かよ、 大丈夫なのか?

 心配しつつも、俺は言われた通りにコーラのボタンを押す。

 ガランガランと音を立てて、コーラが出てくる。

 「さあ、 ここからだ! ここを見てくれ」

 俺は小銭を入れる口のとなりにある、ルーレットを指指した。

 「なんじゃ? それは」

 いのりちゃんは、不思議そうにルーレットをのぞく。

 「ふふ! ここの当たりの部分に針がいくともう一本、飲み物が出てくるのだ」

 このような、自販機はめずらしくはない。しかし、神乃坂町にあるのはちょっと違う。

 「見てろよー、 こうやって自販機をたたくと……」

 ルーレットが回り、俺はタイミングよく自販機をたたく。

 ーーガガガッ、ピピ!

 俺が自販機を強くたたくと、ルーレットの当たりに針が止まる。

 すると、軽快な音楽が流れてボタンのランプがすべて点灯した。

 「どうだ! これが、神乃坂町の名物。 必ず当たる自動販売機だ」

 「おお! よくわからぬが、 それは得じゃのう」

 そう言い終わると、俺はお茶のボタンを押す。

 出てきたお茶を取り出し、片手に持っていたコーラをいのりちゃんに渡す。

 「鉄でできた筒か、 しかしどう飲めばいいのじゃ?」

 アルミ缶の開け方がわからないのか、いのりちゃんは困っている。

 「こうやって、開けるんだよ」

 俺はプルタブを引っ張って、飲み口を開ける。

 ーープシュ。

 炭酸がはじけ、飲み口から泡が飛び出す。

 「なんじゃ! どうなっているんじゃ?」

 初めてみる光景に、いのりちゃんはおどろいていた。

 「早く飲まないともったいないぞ」

 俺はそう言いながら、お茶を飲む。その様子を、いのりちゃんはじっと見ている。

 「うっ、 うむ」

 見よう見まねで、いのりちゃんは飲み口に唇をつけた。

 ーーゴクゴク。

 ゆっくりとコーラを飲むと、ぴたっと止まる。

 「なんじゃああ! 口の中が、しゅわしゅわする」

 初めて味わうコーラに、びっくりしている。

 「はっはっは! けど、 うまいだろう?」

 「うむ…… 美味である!」

 神さまが、コーラを飲む。そんな不思議な光景に、俺は複雑な心境だ。

 そう思いながら、俺といのりちゃんは飲み物を飲んで過ごした。

 「んじゃまあ、 行きますか」

 ゴミ箱に空き缶を捨て、俺はそう声をかけた。

 「ん? どこへ行くのじゃ?」

 まだコーラを飲み終わっていないいのりちゃんは、そう尋ねてきた。

 「んー、 どこを案内しようか。 もてなされる場所……」

 神乃坂町には、そんなに多く観光地がない。どこか連れていけるほど、名所も少ないのだ。

 「まあ、 歩くか」

 どこへ行けばわからないけれど、とりあえず歩いてみる。

 きっといのりちゃんが、興味があるものも見つかるだろう。

 俺はいのりちゃんに、そう言って歩き始めた。

 「おや、 里山さんとこの! ということは祈ノ神様もいらっしゃるのか」

 道を歩き、出会う人から声をかけられる。

 みんな、俺が身につけている鈴の音を聴くと、手を合わせ拝んでいた。

 「その鈴の音が鳴ると、神さまが来たっちゅうことだかなあ。 ありがてえ、 ありがてえ」

 「ふん! わらわを見ることができぬのに、よく言うわ」

 表面上は、神さまに感謝をしている。しかし、いのりちゃんが見えないということは、そこまで信仰心はないのだろう。

 俺だけに声をかける様子で、それがわかってしまう。

 いのりちゃんは不満そうに、ほっぺたを膨らませていた。

 「どうか、 家族が無事に健康でいられますように」

 鈴の音を聴きながら、そうお願いをしている。

 「だーれがその祈りを叶えてやるものか、 ぺっぺ」

 いのりちゃんは、見えない相手に向かってつばを吐く。

 ーー神さまも、大変だなあ。

 信仰心がなくとも、人は祈る。それを叶えなければならないいのりちゃんに、俺は同情してしまうのだった。
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