坂の上のサロン　～英国式リフレクソロジー～

成木沢遥

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最終話　相武ミオの春

⑰

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「相武様、何か変なこと考えていますか？」
「あ、ええ？」
「いや、相武様の顔が、悩んでいるような蒼白な顔をしていたので、もしかしたらそうなのではないかと思って」
「すごい、よくわかりますね」
「リフレクソロジストは、観察力も大事ですからね。顔を歪ませたりしたら、その刺激していた反射区に反応があったことになりますし」
「職業病ですね」
　元井さんに、私の心を覗かれているみたいだった。
　この際、全部聞いてもらおうという気になったので、今考えていたことを全て話す。
　悪かったのは自分だったのか。もし浮気に気づかないまま生活していたら、幸せになれていたのか。そもそも男なのだからと、そういう女遊びの事実くらい目を瞑って、彼を優先した方が良かったのか、恥ずかしがらずに元井さんに質問してみた。
　すると、今まで一度も手を止めなかった元井さんが、初めて手の動きを止めて、私の目を真っ直ぐ見つめながら答えてくれた。
「それは絶対違います。この件に関しては、言っちゃ悪いですが彼氏さんが間違っています。浮気をしていて、別れ際にそんな暴言を吐くなんてお門違いです。全く筋が通っていません」
　柔和な元井さんが、優斗のことをバッサリ切るなんて。私の背中を押してくれているのか、それとも正義感からの発言なのか。どちらにしても、真剣に聞かないといけないと思わせてくれた。
「相武様が自分を責める必要はありません。残念ながら、遅かれ早かれこうなってしまっていたでしょう。男は欲深い生き物ですからね」
「確かに、私と付き合っていた期間は、約八年間ですからね。飽きもあるだろうし、他の人と付き合ってみたいとも思ってしまうはずです」
「はい。ですが、だとしたら、ちゃんとそれを告げて、別れを求めないといけません。関係を続けた状態で浮気するなんて、人間として最低です」

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