拗れてく俺と拗れてるお前

暮雨

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拗れてく俺と拗れてるお前⑤

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恋について考えなければいけない、と思いながらも体の熱は溜まる。
 十代後半の男の性欲は皆多かれ少なかれ、度し難いほどに強いものだ。
 まるで答えの出ない悩みから逃げるように俺は二日以上開けずに動画を投稿し続け。気づけば動画を配信し始めて三週間が過ぎていた。
 その間に大学が始まり。入学式やレクリエーションを経て。授業が始まった。
 とはいえ一年生は取れる専門科目の単位が限られていて。一般教養などが主だ。
 俺は相変わらず休みの日になると訪ねてくる佐野と親密だが少しぎこちない時間を過ごしつつ。学部が違うが永瀬と行動をともにすることが多かった。
 専門科目の講義に参加するうちに同じ学部の友人もできて。大学生活を謳歌している。
 サークルの勧誘はかなり盛んだが俺が入りたいサークルは決まっていた。
 とはいえ、バスケサークルは人気サークルらしく。なんと四つもサークルがあり。それぞれ男女比や活動内容が違ったので興味深い。
 いずれどこかに入ろうとは思うが正式な届け出の期限はゴールデンウィーク明けと聞いたのでのんびりと吟味させてもらうことにした。
 あとは良いバイトを見つけたいと思っていたのだがここで予想外の出来事が起きた。

 動画の収益化だ。
 収益化の条件を満たしていたからか、申請が通るのは早くても半月と聞いていたのにほんの一週間で完了していた。
 そんなこんなで動画をあげるだけで普通に働くのが馬鹿らしくなるような額を稼ぐことができるようになり。逆に人間的にだめになりそうな予感がしたので俺は拘束時間が少ないバイトを探すことにし。同時に高い勉強代を払わないように税金の勉強もすることにした。
 


「こんばんは……聞こえていますか」
 そんなこんなで。今日は初めてのライブ配信だ。
 身バレが怖いしどんなアクシデントが起こるかわからないので、今日は簡単に外れない、銀行強盗が使うような黒い目出し帽を付けていて。更に声が聞きたい、というコメントが多量に来ていたので。初めてボイスチェンジャーを使った。
 正直言うと、字幕をあとから付け直す作業が面倒くさかったのでありがたいが。喋るのが下手くそである自覚があるので恥ずかしいことこの上ない。
「ライブ配信は、初めてなのでとても緊張していますが……頑張ります」
 サービス精神旺盛な人ならここでコメントに対する返事などをするのだろうが。慣れていない俺は一人で話をするという状況を早く終えるので精一杯だ。
 そんな俺の拙い様子の何が面白いのか。コメントは目まぐるしく流れていく。

「なので、慣れていないので……コメントなどはちゃんと後で読ませていただきます。えっと……本日は、皆様に上手に乳首で感じる方法を教えていただきたい、です。俺が乳首を弄るので、触り方やアドバイスをよろしくお願いします」
 そう言って、俺はシャツを脱いで上裸を晒し、ベッドに座った。
下半身は例によって、灰色の下着だ。何を言われるかわからないのでローテーブルにローションやコンドームを用意している。
 俺がそう言うと早速コメントが上から下へ流れていく。
 何故か投げ銭を同時にする人も居て。俺はどうにか文字を頭に入れながら、ローションを掌に出して人肌の温度に馴染ませた。

「まずは……『乳首以外のおっぱい全体に、塗りつけてみる』……ですね」
 画面を流れるコメントを口に出して読んだ俺は、カメラの前で胸を触る。
 バスケをやっていたのでほどほどに胸筋がついているけれど女の子の胸とは程遠い、男の平らな胸が。掌の中で形を変える。
 俺の乳首は相変わらず薄茶色で、爪の先でつままなければいけないほど小さいけれど。気のせいか、最近すこしだけ色付きやすくなって。粒も大きくなった気がする。
ちょうどそう思っているときに『乳首がちょっとだけおおきくなったね』とコメントで指摘された俺は股の付け根が疼いて、腰を揺らした。
 その拍子に灰色の下着の中で昂ぶりがぐっと張り詰めて輪郭を持つのが、見えてしまうとコメントが盛り上がる。
 その中に『予想以上に変態』という言葉を見つけた俺は奥歯を噛んで目を瞑った。
「ごめんなさい、変態なんです……ちゃんと喋って、しないといけないのにライブ初めてで、いつもより興奮してます」
 コメントを残らず見る余裕はなかったけれど。数多の言葉に、数多の視線に体は隠しようがないほどに昂っていく。
 けれどちゃんと目的を達成しようと思った俺は画面に目をやって。言われた通りにローションにまみれた手で胸板を揉んだ。
そうするとぬちぬちとした音が響くのが恥ずかしいが『感じ』たりはしない。
やはり自分には素養がなかったのか、と。安心したようながっかりしたような気持ちになりそうになるものの、まだ始めたばかりなので俺はコメントに従って胸を弄り続けた。
「もっとゆっくり? はい『もっとゆっくり』と『なぞるように』……ですね」
ローションが乾いてきたので足しながら、言われた通りに俺は胸の輪郭を確かめるように撫でた。白い胸板はてらてらとしていて、いやらしい。

いま。自分の胸を。カメラの向こうの人はどんな目で見ているのだろう。
『舐めたい』? 『揉みたい』? それとも『退屈』だろうか。

「ん……っ」
 そう思った途端背筋から這い上がるような快感があった。
 脇が痒くなるような、何とも言えない感覚と共に体が一段、敏感になったような気がする。
「あ。まって……なに……?」
 部屋の空気にさらされた肌に、鳥肌が立っている。
 柔らかそうにちいさく目立たず萎れていた乳首も、いつの間にかその輪郭を際立たせて尖っている。
きっといま胸を撫でたら掌に引っかかる、と思うほどにぴんと尖っていて。目立たない薄茶色なのに、先端だけが執拗に舐められたようにほのかに赤い乳首は……どうしようもなくいやらしい。
「見てますか……?」
 とろりと背骨が蕩けるような気分になって。
 俺はマスクの中で唇をだらしなく緩めながらカメラに向かって胸を突き出した。
 指示を見ると『乳首摘まんで』の文字。
「はい……ちくび、摘まみます……」
 そして。俺は言われた通りにとろとろとローションにまみれた親指と人指し指の腹で小さな乳首を……その、乳首の先の色をカメラに見せつけるようにしながら摘まみ。
「あ……っ」
 思いのほか、胸と指にローションがついていたせいでとろんと乳首を滑った指からローションが糸を引いて滴り落ちた。
 ぬるんと唾液をたっぷりと纏わせた舌に舐められたような感触は何故か鼠径部に響いて。気づいたときには俺の昂ぶりはどうあがいてもごまかしようのないほどに、勃起していた。
 もうコメントを読む余裕はないけれど。見ている人たちは楽しんでいるようだ。

「あぁ、逃げちゃった……もういっかいします……ん……ぅ……」
 ぬちゃぬちゃとした指を一回拭うべきか考える頭はなく。俺は言われた通りに乳首を摘まもうとして……また失敗した。
 今度は腰が揺れて。じんと昂ぶりの先がしびれたような感覚と共に。灰色の下着の、鈴口が触れている部分に濃い染みがついているのが見えた。
「あ、どうしよう……おれ、男なのに……胸、きもちい……」
 目尻を蕩かせてそう囁くように言うと『おっぱいって言って』というコメントが目に入ってかっと体の奥が燃えるように熱くなった。

 もう一回、もう一回。
 見てくれている人の指示に従おうとしているのか。それとも感じてしまった快感を確かめる、という名目で気持ちよくてやめられなくなってしまっているのか。よくわからないまま、俺はぬるぬるする指で乳首を摘まもうとして、摘まんでは失敗してを繰り返した。
 メッシュ素材の覆面を付けていても息苦しいほど感じながら目尻から涙を零すと腰が跳ねた。

「ん、おっぱいきもちいです……あ、『さわっちゃだめ』……? そんな……」
 息をついたときに目に入った文字を見て俺はどうにか手を止めるけれど。腰は快感を欲しがるように揺れる。
根元から先端まで勃起している昂ぶりは完勃ちといっても差し支えない状態で。亀頭の輪郭が濡れた灰色の下着の上から見ても露わでひどいありさまだ。
 それでも俺は、無責任な言葉に身を任せる。
 乳首を触らないように心なしか柔らかくなった白い胸の肉をなぞるように触る。
 触れてほしそうな乳首はてらてらと輝いていて。俺は触りたくて、自分で舐めるような眼を、乳首に向けてしまう。
「ね、触りたいです……触りたい……乳首できもちくなりたいです」
 何も考えられないまま。俺は無責任な誰かに懇願した。
 コメントは流れるけれど『ダメ』だの『エロい』だの『俺も出そう』だの『ローション多すぎ』ばかりでほしいものは見つからない。
 どうしたら『触っていい』って言ってもらえるのだろう。
 それしか考えられなくなった俺は自分で自分を焦らして嬲るように胸をなぞる。
勿論、乳首に触らないようにしながら。放っておかれたまま、下着に包まれた昂ぶりは勃起したまま、じわじわと漏れる先走りのせいで、性器の付け根まで濡れているのが丸わかりだ。
「おねがいです、だれか……おっぱいか、ちんこ……触っていいっていってください」
 どうしたらいいのかわからないまま、俺は胸の輪郭をなぞりながら我慢できなくなって腰を揺らす。
 もう、昂ぶりは棒のように張りつめていて。腰を揺らすと腹を打ちそうなほどだ。
 下着を脱いだ方が楽になる気がしたけれど。誰からも下着を脱げとは言われていない。

「せめて下着、脱ぎたいです……それか、そのまま射精したいです……ねぇ、だれか……」
 俺はもう、動画がどうとか、考えられなくなっていた。
 ただ、体に溜まる熱をどうにかしてほしくて。ベッドの上でおしっこを我慢する子供みたいに尻を無様に跳ねさせながら懇願した。
 その様があまりにも追い詰められていたからだろうか。

『乳首摘まんで、おちんちんには触らずに下着の中に射精しな』
 その言葉を見た途端。俺は何も考えられないままベッドの上に座ったまま、見せつけるように腰を弓なりに反らし。指先で揺れるままだった両方の乳首を摘まんで抓って、押しつぶした。
 その、待ち望んだ感覚は……形容しがたい。
「ん、ふ、……はぁ……あ、あ……ッ!」
 夢中で弄るうちに皮膚が、少し傷ついていたのだろうか。ぴり、と鋭利な感覚が胸の先に奔って。その、痛みと快感の際を走り抜けるような鋭利な感覚に俺は背筋を震わせ。何か考える前に天を仰ぎ。脚を開いて尻をベッドに擦りつけ……本当に昂ぶりに触れないまま射精した。
 びくびくとベッドに擦りつける尻が震えて。濡れた下着にまとわりつかれた昂ぶりがびくびくと根元から跳ねて精液を垂れ流す。
下着の裏の生地が吸いきらない精液で重く湿って。色を濃くした灰色の下着の先端がこんもりと温く盛り上がる。
ほんのすこし染みた精液の匂いと、じわりと濡れきった布から漏れた白濁がいやらしくて。俺は乳首を摘まんだまま下着の中を汚しきる自分の生殖器を見下ろした。
 そんな無様な姿も不特定多数の誰かに見られているのだと思うとまた、びくびくと腰が震えて。見えない手に撫でまわされているようにまた、熱が落ち着きかけた肌に鳥肌が立つ。
「あ、ぁ……っおれ、ちくびで……いっちゃった……?」
 言葉にすると恥ずかしくて。男として駄目になっている気がして。顔から火が出そうになるけれど。決して面に出せない、誰にも知られるわけにはいかない薄暗い、恥ずかしいことをしたのだと思うと腹の奥があつく、あつくなった。
 もう。何も考えられないまま。
 俺はぐちゃぐちゃになった下着の上から昂ぶりを握って。滲む精液となじまないローションの匂いに包まれたまま。カメラの前でもう一度射精した。

 そんなこんなで締めの挨拶の記憶が正直曖昧だが……初めてのライブ配信はある意味大成功に終わった。
 その一晩で稼ぎ出した金額を見た俺はめまいを覚え。すっかりきれいになったベッドシーツの上で天井を見上げながら。大学を卒業するときに金に余裕があってもちゃんと就職しよう、とかなり先のことを考えた。
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