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そして奇跡のハッピーエンドへ♡…?
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「誰か、手の空いている者は、すぐに私の部屋に来い!」
苛立ったレイ兄さまの大きな声が屋敷中に響き渡り、バタバタと使用人達が走る足音がそこかしこから聞こえて来た。
またかーー
僕はため息をつく。
レイ兄さまが不機嫌な理由。それは間違いなく伯爵のせいだった。
僕に手紙を渡したあとも、伯爵の攻勢は更に続いた。
ある日は、屋敷を埋め尽くすくらいの沢山の真っ赤な薔薇がレイ兄さま宛てに届いた。
レイ兄さまはその大量の薔薇を使用人に命じて庭に運ばせると、魔術で一気に焼き切った。
その火柱は30m近くまで立ち上り、可哀相に、巻き込まれて羽を焼かれた妖魔が数体、ドサドサっと空から降ってきた。
その次は、大きな宝箱にぎっしりと詰まった、ルビーやエメラルド、ダイヤモンドの宝飾品だった。
どれもが素晴らしい一級品のものだったけど、
レイ兄さまは無表情でそれらを窓からザーッと全て投げ捨てた。
すると、ピカピカと光る物が大好きな下級魔族達が集まってきて熾烈な奪い合いを始め、辺り一面が血の海に染まった。
それからも、伯爵の手紙と贈り物は続き、伯爵が贈り物をしてくる度に、レイ兄さまの機嫌はどんどんと悪化し、今や屋敷中がピリピリとしたムードに包まれていた。
レイ兄さまの不機嫌は最高潮に達し、今朝も僕の顔を見た途端に
「リト、遊んでばかりいないで課題を進めなさい!」
と大量の課題テキストをやるように命じたのだ。
はぁ……。
机の上に山のように積まれた本を恨めしく眺める。
おかしい。こんなはずじゃなかったーー
伯爵とレイ兄さまは仲良くなって、全てが上手く丸く収まるのかと思ってたのに……
毎日、伯爵とレイ兄さま、リョウ兄さまの三人の美味しいセーエキミルクをごくごくと沢山飲めるはずだったのに!
「やっぱり、ホッヘルベル家とカークランド家の敵同士の二人が一緒になるのって難しいのかな……」
夜、リョウ兄さまのベッドに入って兄さまに腕枕をしてもらいながら、思わず愚痴をこぼすと、
「うーん、そうだなぁ……。でも、戦争と言っても、本格的なものは数百年前にほぼ終わっていて、最近じゃ街中で両家の使用人達が出会ったら口喧嘩が始まるくらいの程度だったんだけどなぁ」
「そうなの?」
「リトが産まれる少し前くらいは、ローレンシア会議だってほぼ形骸化してて、双方の孫の写真を見せ合ったり、カークランド家の爺さんが腰が痛いと老体の愚痴を零せば、ホッヘルベル家が領地にある温泉に招待したり、結構ほのぼのとしてたんだよ」
「じゃあ、なんでレイ兄さまと伯爵はあんなに仲が悪いの?」
「俺も良くは知らないんだけど、あの二人は同じ寄宿学校の同級生だったらしい」
それは初耳だった。
「二人は学生時代は親友の関係だったみたいなんだけど、卒業後にそれぞれが当主の座についてから仲が悪くなったみたいだな」
「ふーん。何があったんだろ?」
「レイは卒業後に王家のマーデン王女との婚約が決まったんだけど、世間に発表する前の内輪の一族だけでの婚約報告パーティーの会場がオークの群れに襲われて滅茶苦茶になったんだ。
その後も、王女との私的な外出での出先で、この地方じゃ見かけない凶暴な妖魔が何者かに放たれて、レイと王女のデートが中断され、王女が慌てて城に戻るという事が何度かあって、結局、レイと王女は破局したんだ」
「犯人は捕まったの?」
「公には分からなかったけど、レイは、“間違いなく伯爵の仕業”だと踏んで、次の年には、伯爵が恋人と過ごすために建てたばかりの別荘の屋根を吹き飛ばしてる。そのあたりからかな。再び、ホッヘルベルとカークランドの本格的な戦争が再開したのは」
「それって……」
「まぁ早い話が、レイと伯爵の壮大な痴話喧嘩に俺たちは巻き込まれてる感じかな」
やれやれ……とリョウ兄さまはため息をつく。
「昔は仲が良かったんなら、またあの二人は一緒に仲良くなれるんじゃないの?」
期待を込めてそう尋ねると、
「大人になると、自分の正直な気持ちを伝えるのは難しくなるんだよ。特に恋愛だとね」
「リョウ兄さまも、好きって気持ちを言えないこと、あるの?」
その質問には答えずに、リョウ兄さまは笑いながら
「さぁ、もう休むんだリト」
と、僕の髪を優しく撫でて頬にキスをした。
苛立ったレイ兄さまの大きな声が屋敷中に響き渡り、バタバタと使用人達が走る足音がそこかしこから聞こえて来た。
またかーー
僕はため息をつく。
レイ兄さまが不機嫌な理由。それは間違いなく伯爵のせいだった。
僕に手紙を渡したあとも、伯爵の攻勢は更に続いた。
ある日は、屋敷を埋め尽くすくらいの沢山の真っ赤な薔薇がレイ兄さま宛てに届いた。
レイ兄さまはその大量の薔薇を使用人に命じて庭に運ばせると、魔術で一気に焼き切った。
その火柱は30m近くまで立ち上り、可哀相に、巻き込まれて羽を焼かれた妖魔が数体、ドサドサっと空から降ってきた。
その次は、大きな宝箱にぎっしりと詰まった、ルビーやエメラルド、ダイヤモンドの宝飾品だった。
どれもが素晴らしい一級品のものだったけど、
レイ兄さまは無表情でそれらを窓からザーッと全て投げ捨てた。
すると、ピカピカと光る物が大好きな下級魔族達が集まってきて熾烈な奪い合いを始め、辺り一面が血の海に染まった。
それからも、伯爵の手紙と贈り物は続き、伯爵が贈り物をしてくる度に、レイ兄さまの機嫌はどんどんと悪化し、今や屋敷中がピリピリとしたムードに包まれていた。
レイ兄さまの不機嫌は最高潮に達し、今朝も僕の顔を見た途端に
「リト、遊んでばかりいないで課題を進めなさい!」
と大量の課題テキストをやるように命じたのだ。
はぁ……。
机の上に山のように積まれた本を恨めしく眺める。
おかしい。こんなはずじゃなかったーー
伯爵とレイ兄さまは仲良くなって、全てが上手く丸く収まるのかと思ってたのに……
毎日、伯爵とレイ兄さま、リョウ兄さまの三人の美味しいセーエキミルクをごくごくと沢山飲めるはずだったのに!
「やっぱり、ホッヘルベル家とカークランド家の敵同士の二人が一緒になるのって難しいのかな……」
夜、リョウ兄さまのベッドに入って兄さまに腕枕をしてもらいながら、思わず愚痴をこぼすと、
「うーん、そうだなぁ……。でも、戦争と言っても、本格的なものは数百年前にほぼ終わっていて、最近じゃ街中で両家の使用人達が出会ったら口喧嘩が始まるくらいの程度だったんだけどなぁ」
「そうなの?」
「リトが産まれる少し前くらいは、ローレンシア会議だってほぼ形骸化してて、双方の孫の写真を見せ合ったり、カークランド家の爺さんが腰が痛いと老体の愚痴を零せば、ホッヘルベル家が領地にある温泉に招待したり、結構ほのぼのとしてたんだよ」
「じゃあ、なんでレイ兄さまと伯爵はあんなに仲が悪いの?」
「俺も良くは知らないんだけど、あの二人は同じ寄宿学校の同級生だったらしい」
それは初耳だった。
「二人は学生時代は親友の関係だったみたいなんだけど、卒業後にそれぞれが当主の座についてから仲が悪くなったみたいだな」
「ふーん。何があったんだろ?」
「レイは卒業後に王家のマーデン王女との婚約が決まったんだけど、世間に発表する前の内輪の一族だけでの婚約報告パーティーの会場がオークの群れに襲われて滅茶苦茶になったんだ。
その後も、王女との私的な外出での出先で、この地方じゃ見かけない凶暴な妖魔が何者かに放たれて、レイと王女のデートが中断され、王女が慌てて城に戻るという事が何度かあって、結局、レイと王女は破局したんだ」
「犯人は捕まったの?」
「公には分からなかったけど、レイは、“間違いなく伯爵の仕業”だと踏んで、次の年には、伯爵が恋人と過ごすために建てたばかりの別荘の屋根を吹き飛ばしてる。そのあたりからかな。再び、ホッヘルベルとカークランドの本格的な戦争が再開したのは」
「それって……」
「まぁ早い話が、レイと伯爵の壮大な痴話喧嘩に俺たちは巻き込まれてる感じかな」
やれやれ……とリョウ兄さまはため息をつく。
「昔は仲が良かったんなら、またあの二人は一緒に仲良くなれるんじゃないの?」
期待を込めてそう尋ねると、
「大人になると、自分の正直な気持ちを伝えるのは難しくなるんだよ。特に恋愛だとね」
「リョウ兄さまも、好きって気持ちを言えないこと、あるの?」
その質問には答えずに、リョウ兄さまは笑いながら
「さぁ、もう休むんだリト」
と、僕の髪を優しく撫でて頬にキスをした。
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