41 / 50
ロミオの純情
24
しおりを挟むコウに裏切られた
その事実は、鷹司を想像以上に打ちのめした。
一体、なぜコウの下心に気がつかなかったのだろうか。
あの菖蒲のような凛としたコウの気品に惚れた俺は、どの後輩よりも人一倍にコウを可愛がり、挙げ句にアイツとキスまでして浮かれていた。
全く、マヌケなピエロじゃないか!
そんな俺の姿をコウは腹の底で笑っていたに違いない。
コウの実家のミューズが、宿敵リンベルを出し抜く為に送り出したコウの手の中で、オレは踊らされていたという訳か。
クソっ!
鷹司は夜ベッドに入っても、ギリギリとした悔しさで寝付けなかった。
ほとんど一睡も出来ずに、翌朝を迎えた鷹司の顔は相当に青ざめていたのか、朝、身支度を整えている時に、ルームメイトの九条にギョッとされる。
「鷹司、お前大丈夫か?心配ごとがあるのなら聞いてやるよ」
九条の気遣いに、鷹司は首を横に振る。
「大丈夫だ」
これは俺自身の問題だ。
俺自身で決着をつけてやる!
鷹司は拳をギュッと握り締める。
コウとの決着の時は案外と早くに来た。
「鷹司先輩」
その日の放課後、道場へと続く中庭の小道で、部活に向かっていた鷹司は背後から声をかけられる。
振り向けば、コウがにこやかな笑顔で立っていた。
真っ白な学ランに包まれた、菖蒲の香り立つようなコウの笑顔。
少し前なら、この笑顔に心密かに胸をときめかせていたが、今は違った。
鷹司は無邪気を装ったように見えるコウの笑顔にカッとなる。
「お前、一体どういうつもりだ」
鷹司の低い声に、コウは顔を曇らせる。
「長く休んですみません。倒れた父の看病についてたので……」
コウの返答に、ますます鷹司は腹を立てる。
この期に及んでも、まだ誤魔化すつもりか?!
「部活の話をしてるんじゃない。コウ、お前、俺からウチの新商品を盗んだな?!」
「先輩、一体、何の話を……」
困惑した顔のコウに、鷹司はとうとう大声を出す。
「とぼけるな!お前に食わせた、あの米粉のパイの菓子はウチで開発してたんだ!それを何で、ミューズが発売するんだ?!」
鷹司はコウの胸ぐらを掴み上げる。
コウは初めてハッとした顔を見せた。
「ち、違う!俺は知らない」
「お前以外に、いないだろう!」
鷹司はそう言うと、掴みあげていたコウの体を地面に向かって投げ飛ばす。
コウの小さな体は、ドサッと鈍い音を立てて、小道に転がった。
「あっ……!」
転げた場所は、昨日降った雨のせいで、少しぬかるんでいて、泥水がバシャンと跳ねる。
真っ白だったコウの学ランとズボンが、黒茶色の泥にまみれてベットリと汚れた。
「ううっ……」
「見損なったぞ。コウ。恥を知れ!」
鷹司は、地面に転がっているコウに、吐き捨てるように言うと、くるりと踵を返して部室へと向かって去っていった。
「俺じゃねぇよ……」
一人残されたコウは、地面に倒れたまま、静かに嗚咽を漏らす。
ひんやりとした地面の冷たさが全身を包み、頬には尖った砂利の粒が、鋭く突き刺さった。
「俺じゃねぇ……」
震える握り拳で、地面を叩く。
けれど、コウの声は誰の耳にも届かずに、吹き抜けた秋の風と共に消えた。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる