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ロミオの純情
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「コウは今日も休みか」
鷹司が少し不満そうな顔をすると、副部長の三田が
「ええ、家庭の事情で学校に来てないみたいです」と心配そうな顔で返事をする。
部活の始まる前、更衣室で着替えをしている最中に、一昨日から休んでいたコウが、今日も休みだと三田から告げられた鷹司は、ずっと機嫌が悪そうな顔をしていた。
あの情熱的なキスをした後、鷹司とコウは何度か一緒に帰ったが、キスをしたのはあれっきりで、あの後は、またいつもの先輩と後輩の関係に戻っていた。
鷹司はそれを少し、もどかしく思っていた。
コウとの関係をもう少し先に進めたかったのに、プライドと羞恥心が邪魔をして、素直に自分の気持ちを伝える事が出来なかった。
「俺は今は誰とも付き合う気はない」
カッコつけてそんな台詞を吐いてしまった後なだけに、余計にコウに気持ちを伝える事が難しくなっていた。
こんな時、九条だったら、サラリと自分の気持ちを伝えられそうだよなぁ……
鷹司は、好きな子を百発百中で落とす手練手管に長けてそうなハンサムな親友の顔を思い浮かべる。
美雨ちゃんの事だって、きっとスマートに口説き落としたに違いない。
そう思って以前に聞いてみたら、“美雨を落とすのは大変だった” と、ポツリと一言だけ言って九条は遠い目をしたので、まぁ、この事についてはあまり触れないでおこうと思う。
とにかく、コウとはきちんと話をしたいと思っていたのに、肝心の本人が来なければ、話にならなかった。
その時、着替えていた鷹司の背後でヒソヒソ話が聞こえてきた。
「コウの親父さんに何かあったら、ミューズはどうなるんだろうな」
「コウは将来はミューズを継ぐつもりみたいだけど、今はまだ高校生だしな」
その会話を聞いて、鷹司は驚く。
「おい、今、ミューズと言ったのか?ミューズって、あのミューズ製菓か?」
問い詰めるような鷹司の言葉に、ヒソヒソ話をしていた後輩は青ざめる。
「は、はい。部長はご存じなかったんですか?」
「俺は知らなかった……」
「てっきり、知っていて、それでもコウの事を気にかけていたのかと思っていました……」
後輩は下を向いて萎縮する。
確かに、もし知っていたとしても、分け隔てなく、コウには接したと思う。
しかし、何故、コウは俺に正直に話してくれなかったのか。
もしかしたら、俺の実家がリンベルと知ってコウは近づいて来たんだろうか?
鷹司の背中に、嫌な汗が流れる。
悪い予感は現実となった。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら部活を終え、部屋に戻ってシャワーを浴び、テレビをパチンとつけた鷹司は、流れてきたCMに心臓が止まりそうになった。
“ライスの力でサクサクのパイの食感♪ミューズの新しい味覚 ♪ちょこフェアリー♪ 新発売!”
これは、ウチで出そうとしてた製品じゃないか!
何でミューズが先にこれを出したんだ?!
鷹司はハッと気がつく。
少し前に、コウに試作品を味見をさせた……
しかも、ご丁寧に作り方まで説明してやって!
ショックと怒りで震えながら、コウに電話をかけるが、電源をオフにしているのか繋がらなかった。
次に、鷹司はリンベルの社長である鷹司の兄に電話をかける。
「兄さん、ごめん……」
落ち込んだ声で事情を説明すると、鷹司の兄は叱らずに聞いてくれた。
「そうか。こっちでも調査する。鷹司、知らせてくれてありがとう。あまり思い詰めるなよ」
そう言って、弟思いの兄は逆に鷹司を励ました。
鷹司が少し不満そうな顔をすると、副部長の三田が
「ええ、家庭の事情で学校に来てないみたいです」と心配そうな顔で返事をする。
部活の始まる前、更衣室で着替えをしている最中に、一昨日から休んでいたコウが、今日も休みだと三田から告げられた鷹司は、ずっと機嫌が悪そうな顔をしていた。
あの情熱的なキスをした後、鷹司とコウは何度か一緒に帰ったが、キスをしたのはあれっきりで、あの後は、またいつもの先輩と後輩の関係に戻っていた。
鷹司はそれを少し、もどかしく思っていた。
コウとの関係をもう少し先に進めたかったのに、プライドと羞恥心が邪魔をして、素直に自分の気持ちを伝える事が出来なかった。
「俺は今は誰とも付き合う気はない」
カッコつけてそんな台詞を吐いてしまった後なだけに、余計にコウに気持ちを伝える事が難しくなっていた。
こんな時、九条だったら、サラリと自分の気持ちを伝えられそうだよなぁ……
鷹司は、好きな子を百発百中で落とす手練手管に長けてそうなハンサムな親友の顔を思い浮かべる。
美雨ちゃんの事だって、きっとスマートに口説き落としたに違いない。
そう思って以前に聞いてみたら、“美雨を落とすのは大変だった” と、ポツリと一言だけ言って九条は遠い目をしたので、まぁ、この事についてはあまり触れないでおこうと思う。
とにかく、コウとはきちんと話をしたいと思っていたのに、肝心の本人が来なければ、話にならなかった。
その時、着替えていた鷹司の背後でヒソヒソ話が聞こえてきた。
「コウの親父さんに何かあったら、ミューズはどうなるんだろうな」
「コウは将来はミューズを継ぐつもりみたいだけど、今はまだ高校生だしな」
その会話を聞いて、鷹司は驚く。
「おい、今、ミューズと言ったのか?ミューズって、あのミューズ製菓か?」
問い詰めるような鷹司の言葉に、ヒソヒソ話をしていた後輩は青ざめる。
「は、はい。部長はご存じなかったんですか?」
「俺は知らなかった……」
「てっきり、知っていて、それでもコウの事を気にかけていたのかと思っていました……」
後輩は下を向いて萎縮する。
確かに、もし知っていたとしても、分け隔てなく、コウには接したと思う。
しかし、何故、コウは俺に正直に話してくれなかったのか。
もしかしたら、俺の実家がリンベルと知ってコウは近づいて来たんだろうか?
鷹司の背中に、嫌な汗が流れる。
悪い予感は現実となった。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら部活を終え、部屋に戻ってシャワーを浴び、テレビをパチンとつけた鷹司は、流れてきたCMに心臓が止まりそうになった。
“ライスの力でサクサクのパイの食感♪ミューズの新しい味覚 ♪ちょこフェアリー♪ 新発売!”
これは、ウチで出そうとしてた製品じゃないか!
何でミューズが先にこれを出したんだ?!
鷹司はハッと気がつく。
少し前に、コウに試作品を味見をさせた……
しかも、ご丁寧に作り方まで説明してやって!
ショックと怒りで震えながら、コウに電話をかけるが、電源をオフにしているのか繋がらなかった。
次に、鷹司はリンベルの社長である鷹司の兄に電話をかける。
「兄さん、ごめん……」
落ち込んだ声で事情を説明すると、鷹司の兄は叱らずに聞いてくれた。
「そうか。こっちでも調査する。鷹司、知らせてくれてありがとう。あまり思い詰めるなよ」
そう言って、弟思いの兄は逆に鷹司を励ました。
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