40 / 50
ロミオの純情
23
しおりを挟む
「コウは今日も休みか」
鷹司が少し不満そうな顔をすると、副部長の三田が
「ええ、家庭の事情で学校に来てないみたいです」と心配そうな顔で返事をする。
部活の始まる前、更衣室で着替えをしている最中に、一昨日から休んでいたコウが、今日も休みだと三田から告げられた鷹司は、ずっと機嫌が悪そうな顔をしていた。
あの情熱的なキスをした後、鷹司とコウは何度か一緒に帰ったが、キスをしたのはあれっきりで、あの後は、またいつもの先輩と後輩の関係に戻っていた。
鷹司はそれを少し、もどかしく思っていた。
コウとの関係をもう少し先に進めたかったのに、プライドと羞恥心が邪魔をして、素直に自分の気持ちを伝える事が出来なかった。
「俺は今は誰とも付き合う気はない」
カッコつけてそんな台詞を吐いてしまった後なだけに、余計にコウに気持ちを伝える事が難しくなっていた。
こんな時、九条だったら、サラリと自分の気持ちを伝えられそうだよなぁ……
鷹司は、好きな子を百発百中で落とす手練手管に長けてそうなハンサムな親友の顔を思い浮かべる。
美雨ちゃんの事だって、きっとスマートに口説き落としたに違いない。
そう思って以前に聞いてみたら、“美雨を落とすのは大変だった” と、ポツリと一言だけ言って九条は遠い目をしたので、まぁ、この事についてはあまり触れないでおこうと思う。
とにかく、コウとはきちんと話をしたいと思っていたのに、肝心の本人が来なければ、話にならなかった。
その時、着替えていた鷹司の背後でヒソヒソ話が聞こえてきた。
「コウの親父さんに何かあったら、ミューズはどうなるんだろうな」
「コウは将来はミューズを継ぐつもりみたいだけど、今はまだ高校生だしな」
その会話を聞いて、鷹司は驚く。
「おい、今、ミューズと言ったのか?ミューズって、あのミューズ製菓か?」
問い詰めるような鷹司の言葉に、ヒソヒソ話をしていた後輩は青ざめる。
「は、はい。部長はご存じなかったんですか?」
「俺は知らなかった……」
「てっきり、知っていて、それでもコウの事を気にかけていたのかと思っていました……」
後輩は下を向いて萎縮する。
確かに、もし知っていたとしても、分け隔てなく、コウには接したと思う。
しかし、何故、コウは俺に正直に話してくれなかったのか。
もしかしたら、俺の実家がリンベルと知ってコウは近づいて来たんだろうか?
鷹司の背中に、嫌な汗が流れる。
悪い予感は現実となった。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら部活を終え、部屋に戻ってシャワーを浴び、テレビをパチンとつけた鷹司は、流れてきたCMに心臓が止まりそうになった。
“ライスの力でサクサクのパイの食感♪ミューズの新しい味覚 ♪ちょこフェアリー♪ 新発売!”
これは、ウチで出そうとしてた製品じゃないか!
何でミューズが先にこれを出したんだ?!
鷹司はハッと気がつく。
少し前に、コウに試作品を味見をさせた……
しかも、ご丁寧に作り方まで説明してやって!
ショックと怒りで震えながら、コウに電話をかけるが、電源をオフにしているのか繋がらなかった。
次に、鷹司はリンベルの社長である鷹司の兄に電話をかける。
「兄さん、ごめん……」
落ち込んだ声で事情を説明すると、鷹司の兄は叱らずに聞いてくれた。
「そうか。こっちでも調査する。鷹司、知らせてくれてありがとう。あまり思い詰めるなよ」
そう言って、弟思いの兄は逆に鷹司を励ました。
鷹司が少し不満そうな顔をすると、副部長の三田が
「ええ、家庭の事情で学校に来てないみたいです」と心配そうな顔で返事をする。
部活の始まる前、更衣室で着替えをしている最中に、一昨日から休んでいたコウが、今日も休みだと三田から告げられた鷹司は、ずっと機嫌が悪そうな顔をしていた。
あの情熱的なキスをした後、鷹司とコウは何度か一緒に帰ったが、キスをしたのはあれっきりで、あの後は、またいつもの先輩と後輩の関係に戻っていた。
鷹司はそれを少し、もどかしく思っていた。
コウとの関係をもう少し先に進めたかったのに、プライドと羞恥心が邪魔をして、素直に自分の気持ちを伝える事が出来なかった。
「俺は今は誰とも付き合う気はない」
カッコつけてそんな台詞を吐いてしまった後なだけに、余計にコウに気持ちを伝える事が難しくなっていた。
こんな時、九条だったら、サラリと自分の気持ちを伝えられそうだよなぁ……
鷹司は、好きな子を百発百中で落とす手練手管に長けてそうなハンサムな親友の顔を思い浮かべる。
美雨ちゃんの事だって、きっとスマートに口説き落としたに違いない。
そう思って以前に聞いてみたら、“美雨を落とすのは大変だった” と、ポツリと一言だけ言って九条は遠い目をしたので、まぁ、この事についてはあまり触れないでおこうと思う。
とにかく、コウとはきちんと話をしたいと思っていたのに、肝心の本人が来なければ、話にならなかった。
その時、着替えていた鷹司の背後でヒソヒソ話が聞こえてきた。
「コウの親父さんに何かあったら、ミューズはどうなるんだろうな」
「コウは将来はミューズを継ぐつもりみたいだけど、今はまだ高校生だしな」
その会話を聞いて、鷹司は驚く。
「おい、今、ミューズと言ったのか?ミューズって、あのミューズ製菓か?」
問い詰めるような鷹司の言葉に、ヒソヒソ話をしていた後輩は青ざめる。
「は、はい。部長はご存じなかったんですか?」
「俺は知らなかった……」
「てっきり、知っていて、それでもコウの事を気にかけていたのかと思っていました……」
後輩は下を向いて萎縮する。
確かに、もし知っていたとしても、分け隔てなく、コウには接したと思う。
しかし、何故、コウは俺に正直に話してくれなかったのか。
もしかしたら、俺の実家がリンベルと知ってコウは近づいて来たんだろうか?
鷹司の背中に、嫌な汗が流れる。
悪い予感は現実となった。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら部活を終え、部屋に戻ってシャワーを浴び、テレビをパチンとつけた鷹司は、流れてきたCMに心臓が止まりそうになった。
“ライスの力でサクサクのパイの食感♪ミューズの新しい味覚 ♪ちょこフェアリー♪ 新発売!”
これは、ウチで出そうとしてた製品じゃないか!
何でミューズが先にこれを出したんだ?!
鷹司はハッと気がつく。
少し前に、コウに試作品を味見をさせた……
しかも、ご丁寧に作り方まで説明してやって!
ショックと怒りで震えながら、コウに電話をかけるが、電源をオフにしているのか繋がらなかった。
次に、鷹司はリンベルの社長である鷹司の兄に電話をかける。
「兄さん、ごめん……」
落ち込んだ声で事情を説明すると、鷹司の兄は叱らずに聞いてくれた。
「そうか。こっちでも調査する。鷹司、知らせてくれてありがとう。あまり思い詰めるなよ」
そう言って、弟思いの兄は逆に鷹司を励ました。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる