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嗣春編
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「間山さんは恐らく叔父の方につきます。大学の同窓生の繋がりがありますから」
「一之瀬銀行の間山が反対となると厳しいな」
尊の言葉に嗣春は険しい表情で考え込む。
着替えた尊と早速、次の取締役会で尊の持ち株分の譲渡承認を求めた際に、賛成に回る人物と、反対が予想される役員を選びだしているのだが、やはりすんなりと承認されるのは難しいことが段々と分かってきた。
となれば、取締役会の前までに個々の役員と話し合って、一人一人切り崩してゆくしかないが、相当に困難な作業となるのは目に見えて分かっていた。
思わず頭を抱えた嗣春に向かって、
「ただ、間山さんは以前、上海に駐在していた時に現地の女性秘書と恋仲になっていて、隠し子もいるので、その辺を上手く突っつけばこちらに引き込む事も可能です」
しれっと涼しい顔で恐ろしい切り札を出してきた尊を、思わず唖然と嗣春は見つめる。
尊は取締役達のプライベートを詳細に把握しているだけでなく、百近くはある子会社や関連会社の財務状況もきっちりと把握していてた。
ただ椅子に座っているだけの“綺麗なお人形さん”というわけでもなさそうだと、尊の華奢な横顔を眺めながら、密かに嗣春は感心する。
嗣春と尊がこれから行う事は、お家騒動のクーデターに近い。
となると、相応の影響が株価に反映されて、一時的な株価の大幅下落は避けられない。下手をすれば、外資に重要な子会社を乗っ取られる可能性もある。そのための対策を嗣春と尊は深夜まで話し合い、時には激しい議論が朝まで続いた。
久しぶりに手応えのある議論の相手が尊であることに、嗣春は嬉しくなる。
嗣春の意見を受け入れながらも、ここだという場面では一歩も引かない頑固さも、好ましく映った。気がつけば、すっかりとこの義弟に心が捕らわれていた。
資料に目を落としている尊の滑らかな頬に、思わず触れたくなる衝動を嗣春はグッと堪える。
尊は"そういう相手"じゃない
つい少し前に、この俺の手であんなに激しい陵辱をしたのだから、尚更だ。
せっかく友好的になれたこの関係をぶち壊すわけにはいかない。
嗣春は、頭の中に浮かんだ尊とのエロティックな妄想を無理やり追い払うと、再び書類に没頭した。
学校が終わると、尊は制服のまま嗣春のマンションに立ち寄る日々が続き、嗣春は少し心配になる。
自分の存在は一之瀬にとって目障りなのは間違いない。そんな俺の元に尊が頻繁に通いつめて良いのだろうか……
尊専属の運転手も尊の行動を逐一報告しているはずだ。
「尊、大丈夫なのか?」
「何がですか?」
「こう、毎日のように俺のマンションに来て」
嗣春が問いかけると、尊は微笑みながら首を振る。
「顔見知りになった義兄さんに勉強を教えてもらっていると伝えてあります。義兄さんの学歴に文句を言う人はいませんし、それに、“将来の障害になりそうな義兄”と今から友好関係を築く事に反対する者はいませんよ。まぁ、ここで話し合われている内容を聞いたら腰を抜かして卒倒するとは思いますが」
そう言って尊はクスクスと楽しそうに笑い、それにつられて嗣春も思わず笑う。
和やかな空気が二人の間に流れた。
例え血がつながっていなくても、“兄弟”とは良いものじゃないか。
今度、尊をキャッチボールにでも誘ってみるか、なんて事を柄にもなく嗣春は考える。
青空の下でボールを投げ合って、失っていた兄弟の時間を取り戻したいーー
そう願ったものの、結局のところ真っ当な兄弟関係なんてものは、夢でしかなかった。
嗣春はマンションのリビングルームのガラスのローテブルに資料を広げ、尊と共に何日も徹夜をしてチャートフローを何度も書き直し、全ての段取りを三十枚ほどの用紙にまとめ上げた嗣春は、
「よし、これで完成だ」
そう言って、得も言われぬ達成感と共にペンを置くと、うーんと強張った身体を解すようにして伸ばす。
その時、向かいのソファーにいた尊が突然に立ち上がり、嗣春の上に覆い被さってきた。
不意を突かれた嗣春は、仰向けに、ドサッとフローリングの床に倒れこみ、ゴツンと頭を打ちつける。
「おい!尊! これは一体……!…?!」
理不尽な痛みに思わず不機嫌そうな声をあげると、抗議の嗣春の唇は、尊の柔らかいキスで塞がれる。
「……!??」
「義兄さん……」
尊の真剣な瞳がこちらを覗いていた。
「義兄さん、僕を抱いて下さい」
突然の事に頭が真っ白になっていると、尊の指先がそっと嗣春の腹の上を滑り、そのまま下へ下へと進むと、ズボンの上から嗣春の大きなペニスをそっと握りしめる。
「尊……だめだ……」
嗣春の制止の言葉など聞こえないかのように、尊の指先は動きまわり、やがてカチャカチャとベルトを外そうとするが、上手く外れない。
けれども、諦めない尊の指がそのままズボンの中に突っ込まれそうになるのを、嗣春はその手を強く押さえて止めさせる。
「尊、だめだ」
嗣春の言葉に尊の美しく儚げな顔はみるみると青ざめる。どうやら拒否されるとは思ってもみなかったらしい。
ゆっくりと体を起こすと嗣春は、今にも泣き出しそうな顔の尊の体をそっと抱きしめる。
「尊、ここではだめだ。続きはベッドでしよう」
耳元で艶めかしく嗣春が囁くと、耳まで赤くなった尊は、小さく「はい」と頷いた。
「一之瀬銀行の間山が反対となると厳しいな」
尊の言葉に嗣春は険しい表情で考え込む。
着替えた尊と早速、次の取締役会で尊の持ち株分の譲渡承認を求めた際に、賛成に回る人物と、反対が予想される役員を選びだしているのだが、やはりすんなりと承認されるのは難しいことが段々と分かってきた。
となれば、取締役会の前までに個々の役員と話し合って、一人一人切り崩してゆくしかないが、相当に困難な作業となるのは目に見えて分かっていた。
思わず頭を抱えた嗣春に向かって、
「ただ、間山さんは以前、上海に駐在していた時に現地の女性秘書と恋仲になっていて、隠し子もいるので、その辺を上手く突っつけばこちらに引き込む事も可能です」
しれっと涼しい顔で恐ろしい切り札を出してきた尊を、思わず唖然と嗣春は見つめる。
尊は取締役達のプライベートを詳細に把握しているだけでなく、百近くはある子会社や関連会社の財務状況もきっちりと把握していてた。
ただ椅子に座っているだけの“綺麗なお人形さん”というわけでもなさそうだと、尊の華奢な横顔を眺めながら、密かに嗣春は感心する。
嗣春と尊がこれから行う事は、お家騒動のクーデターに近い。
となると、相応の影響が株価に反映されて、一時的な株価の大幅下落は避けられない。下手をすれば、外資に重要な子会社を乗っ取られる可能性もある。そのための対策を嗣春と尊は深夜まで話し合い、時には激しい議論が朝まで続いた。
久しぶりに手応えのある議論の相手が尊であることに、嗣春は嬉しくなる。
嗣春の意見を受け入れながらも、ここだという場面では一歩も引かない頑固さも、好ましく映った。気がつけば、すっかりとこの義弟に心が捕らわれていた。
資料に目を落としている尊の滑らかな頬に、思わず触れたくなる衝動を嗣春はグッと堪える。
尊は"そういう相手"じゃない
つい少し前に、この俺の手であんなに激しい陵辱をしたのだから、尚更だ。
せっかく友好的になれたこの関係をぶち壊すわけにはいかない。
嗣春は、頭の中に浮かんだ尊とのエロティックな妄想を無理やり追い払うと、再び書類に没頭した。
学校が終わると、尊は制服のまま嗣春のマンションに立ち寄る日々が続き、嗣春は少し心配になる。
自分の存在は一之瀬にとって目障りなのは間違いない。そんな俺の元に尊が頻繁に通いつめて良いのだろうか……
尊専属の運転手も尊の行動を逐一報告しているはずだ。
「尊、大丈夫なのか?」
「何がですか?」
「こう、毎日のように俺のマンションに来て」
嗣春が問いかけると、尊は微笑みながら首を振る。
「顔見知りになった義兄さんに勉強を教えてもらっていると伝えてあります。義兄さんの学歴に文句を言う人はいませんし、それに、“将来の障害になりそうな義兄”と今から友好関係を築く事に反対する者はいませんよ。まぁ、ここで話し合われている内容を聞いたら腰を抜かして卒倒するとは思いますが」
そう言って尊はクスクスと楽しそうに笑い、それにつられて嗣春も思わず笑う。
和やかな空気が二人の間に流れた。
例え血がつながっていなくても、“兄弟”とは良いものじゃないか。
今度、尊をキャッチボールにでも誘ってみるか、なんて事を柄にもなく嗣春は考える。
青空の下でボールを投げ合って、失っていた兄弟の時間を取り戻したいーー
そう願ったものの、結局のところ真っ当な兄弟関係なんてものは、夢でしかなかった。
嗣春はマンションのリビングルームのガラスのローテブルに資料を広げ、尊と共に何日も徹夜をしてチャートフローを何度も書き直し、全ての段取りを三十枚ほどの用紙にまとめ上げた嗣春は、
「よし、これで完成だ」
そう言って、得も言われぬ達成感と共にペンを置くと、うーんと強張った身体を解すようにして伸ばす。
その時、向かいのソファーにいた尊が突然に立ち上がり、嗣春の上に覆い被さってきた。
不意を突かれた嗣春は、仰向けに、ドサッとフローリングの床に倒れこみ、ゴツンと頭を打ちつける。
「おい!尊! これは一体……!…?!」
理不尽な痛みに思わず不機嫌そうな声をあげると、抗議の嗣春の唇は、尊の柔らかいキスで塞がれる。
「……!??」
「義兄さん……」
尊の真剣な瞳がこちらを覗いていた。
「義兄さん、僕を抱いて下さい」
突然の事に頭が真っ白になっていると、尊の指先がそっと嗣春の腹の上を滑り、そのまま下へ下へと進むと、ズボンの上から嗣春の大きなペニスをそっと握りしめる。
「尊……だめだ……」
嗣春の制止の言葉など聞こえないかのように、尊の指先は動きまわり、やがてカチャカチャとベルトを外そうとするが、上手く外れない。
けれども、諦めない尊の指がそのままズボンの中に突っ込まれそうになるのを、嗣春はその手を強く押さえて止めさせる。
「尊、だめだ」
嗣春の言葉に尊の美しく儚げな顔はみるみると青ざめる。どうやら拒否されるとは思ってもみなかったらしい。
ゆっくりと体を起こすと嗣春は、今にも泣き出しそうな顔の尊の体をそっと抱きしめる。
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