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しおりを挟む― グレアム公爵邸 客間
アリシアはティーカップの紅茶を優しく一口含むと、窓の外に目をやった。
北風が吹き、枯れた落ち葉が静かに舞う庭園を眺めながら、心の中で呟く。
――祖国の人たちは、元気にしているのかしら……
ここ、フォン・グレアム公爵家の屋敷に来て、すでに半年が経っていた。 初めてエリオットがアリシアを抱いたあの晩。それ以降、ほぼ毎晩のように、エリオットはノックもせずにアリシアのベッドへとやってきた。
金色の髪を月明かりに輝かせ、甘い微笑みを浮かべて。
最初は抵抗した姫の身体も、繰り返される夜の愛撫に、次第に正直に反応するようになっていた。
熱い舌で秘部を舐められ、指でかき回され、硬くたぎったもので貫かれるたび、アリシアは屈辱と快楽の狭間で喘ぎ、絶頂を繰り返した。
今では、エリオットの匂いを思い出すだけで、下腹が熱く疼いてしまうほどに。
時折、勇気を振り絞ってエリオットに祖国のことを尋ねても、彼は甘い笑みでうまくはぐらかすだけだった。
自分は果たして祖国に帰れるのだろうか。そもそも、国はまだ存続しているのだろうか。 軟禁状態のアリシアに、屋敷の外の情報らしいものは一切与えられなかった。
その代わり、姫君として最高の待遇で饗されていた 。
着るドレスも、貧しい祖国で着ていたものとは比べ物にならない、最高級の絹で仕立てられたもの。
食事も素晴らしく、何不自由なかった。
欲しいものは大抵、なんでも揃えてもらえた。
――何の不満もない生活だった。
自由に外出できないということを除けば。
「アリシアお義姉さま!」
明るい声と共に、公爵家三男のリオが部屋に入ってきた。 まだ無垢なあどけなさを残した美少年。
碧い瞳が無邪気に輝き、柔らかな金髪が揺れる。
「僕、退屈なんです」
そう言いながら、甘えるようにアリシアの膝の上に乗り、首に腕を回して密着するように身体を寄せてきた。
リオの身体から、最高級のソープの甘い香りが漂う。柔らかな頬がアリシアの胸に触れ、温もりが伝わってくる。
「ねぇ、アリシアお義姉さまはいつもエリオット兄さまと夜、なにをしているの?」
リオの何気ない質問に、アリシアはティーカップを持つ手が一瞬止まる。震えそうになる手を懸命に抑える。
「な、なにもしてないわ。ただ……おしゃべりをして過ごしてるのよ」
「ふーん」
リオは唇を尖らせ、自分が仲間外れにされていることに不満そうな態度を見せる。碧い瞳に、わずかな嫉妬がちらりと覗いた。
その時、部屋のドアが静かにノックされ、黒の燕尾服を着た公爵家長男、レオンが入ってきた。
黒髪の長身。整った顔立ちに、常に冷静で氷のような表情。 食事の時の豪奢なダイニングテーブルで顔を合わせる以外は、滅多にこの長男に会うことはなかった。
レオンはアリシアの膝の上のリオをちらりと見ると、わずかに顔をしかめた。
「アリシア姫、我が弟の無礼をお許しください」
淡々とした声でそう告げると、話を続けた。
「まだ姫はこの屋敷に滞在していただくことになります。姫の祖国は今、平和を保っております。ご安心ください」
その言葉に、アリシアの胸がわずかに安堵で満たされる。けれど、レオンの瞳は相変わらず感情を読みにくく、どこまで本当なのか、確かめようがなかった。 リオはレオンの話を聞いて、ぱっと顔を輝かせた。
「お義姉さまとまだ一緒にいられる!」
無邪気に喜び、再びアリシアに抱きついてくる。柔らかな身体が密着し、甘い香りがより強く漂う。
アリシアは微笑みを返しながらも、心の中で複雑な思いを抱いていた。
この屋敷での日々は、贅沢で、甘く、そして永遠に決して逃れられない薔薇の檻で作られた牢獄のように感じられた。
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