普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ

文字の大きさ
480 / 839
中学生編

閑話 バレンタイン

しおりを挟む
カシャカシャカシャカシャ。
シャカシャカシャカシャカ。
トプトプトプトプ。
ずるっ、びたーん。
「ふぇ…」
うぅ…なんで僕は何も無いところで転ぶの?
「…大丈夫か?」
「東さん…だいじょーぶ…チョコ作るもん」
「いや、頭からココアパウダー被ってるけど」
ふぇ?
…まぁあとでシャワー浴びるからいいよ。
でも…。
僕はドンドンと鳴り続けるドアを見た。
あのね、あの音ノックなの。
僕が扉の外に『開けちゃダメ!!開けたら嫌いになるからね!!』って書いた紙を貼ったら開けないけど永遠とノックが続くようになっちゃった。
もちろんリビングと繋がるドアと外に繋がるドアにも同じようなものを貼っておいたよ。
「まずはクーベルチュールチョコレートを刻む。だけどこれは包丁がいるから俺がやるな」
「包丁ぐらい僕でも使えるもん」
「柚琉様には型に流し込むのをやってもらうから」
「やるの!!」
僕は東さんから包丁とまな板を奪った。
あ、敬語じゃないのは僕が頼んだの。
教えてもらうのに敬語だと時間がかかりそうで…。
でも今思うと外さない方が良かったかも。
小さい子扱いしかされないんだもん。
「だ…大丈夫か?包丁の手と反対の手は猫の手だぞ?決して離すなよ?離したら自分の足に包丁が落ちてくるんだからな?」
こんな調子。
「だいじょーぶ」
チョコを刻めばいいんでしょ?
それなら前世でもやってたもん。
僕は猫の手にした左手をチョコの上に置き、端っこから包丁の刃を入れ…入れ……入らない。
あれ?
チョコってこんなに固かったっけ?
そういや僕前世では袋に入れて割ってた気がする…。
手で割ろうとするとお母さんに止められるから机に叩きつけるか足でふみふみするの!!
「…やるから貸せ」
うぅ…僕のやることが少なくなっちゃったぁ…。
僕は泣く泣く包丁を返した。
「じゃあそこのボウルを取ってくれ。あと鍋」
「鍋?ボウルじゃないの?」
ボウルにお湯を入れてやるんじゃないの?
「それだとお湯の温度がすぐ下がるだろ。チョコは丁寧に作れよ。あと湯煎の時にはお湯と湯気を入れるな」
「はぁい」
そうだったんだ。
前世と全然作り方違う。
「柚、美味しそうなチョコ!!夏にくれるの?」
「夏!?」
夏が窓からぴょこんと顔を出した。
「まだダメっ!!」
「夏もダメなの?…うぅ…」
夏はしょんぼりしながら窓から去っていった。
でもこれも美味しいチョコのため!!
「柚琉様?型に入れてくださいよ」
え!?
もう溶けたの!?



「みんな、いつもありがと!!」
僕はみんなにチョコレートを振舞った。
もちろん使用人の人達にもあげたよ。
一人一人は無理だったからたくさん作れるクッキーで。
中にココアパウダーとナッツを混ぜ込んだクッキーだよ。
「柚、ありがとう」
「本命が混ざってる…なんてことはないよね?」
「ほんめー?」
チョコってありがとうって渡すものじゃないの?
ほんめーってなぁに?
「「(バレンタインの意味を理解してないみたいで良かった…)」」
「柚のチョコー!!」
「夏には東さんと作ったガトーショコラだよ~」
「わーい!!」






すみません。イラストの色塗り間に合いませんでした。色鉛筆で良ければ後日アップしますね。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。 とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて── 「運命だ。結婚しよう」 「……敵だよ?」 「ああ。障壁は付き物だな」 勇者×ゴブリン 超短編BLです。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...