大関誠は温泉大臣~俺、異世界に温泉旅館作ります!~

八百十三

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第1章 一体ここはどこだ?

第1話 迷子なう

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「こ、ここは……」

 何処だ?
 脳内がその一言で埋め尽くされた。
 石造りの建物、石畳が敷かれた街路。武骨でどこかそっけない電信柱はどこにもなく、レトロなデザインの街灯が立ち並ぶばかり。
 街を歩く人々の何割かは普通の人間・・・・・だが、何割かは耳が細長い・・・・・。何割かはそもそも人間の頭じゃない・・・・・・・・。見間違いじゃなければ尻尾も生えてた。
 そういう、ともすれば出来のいいコスプレみたいな異種族の方々、大学内でもちらほらと・・・・・見かけてはいたが、ぶっちゃけこんなにそこら中にはいない。

 これがヴァーチャルリアリティで表現された異世界・・・の場面なら、随分と世界の技術も進歩したものだと感心する。というかいつの間にそんなもの仕掛けられたんだ、という話だ。
 俺は確か、大学に向かう途中で、二限の講義に遅刻しそうで走っていて、大学への近道である路地の角を曲がって――路地を通り抜けたらこれだ。
 決してどこかのテーマパークでVR体験をしてたりとか、すっ転んで脳内トリップしたとか、そんなわけではない。後者については、ない、はずだ。

 人々が行き交う街路に背中を向け、傍らにある石壁にもたれかかり、俺はゆっくりと思考を巡らせた。
 俺の名前は?大関おおぜき まこと
 年齢は?20歳。
 住所は?東京都新宿区西落合2丁目。
 大学と、所属学部は?M大学、社会学部 地域社会学科。
 よし、記憶は明瞭、意識も混濁なし。つまり俺はいたって正気だ、間違いない。
 そして俺は心の底から絶望する。俺を取り巻く、このフィクションとしか思えない状況は、確実に現実だ・・・ということだからだ。

 一縷の望みを胸に抱き、俺はジーンズの尻ポケットをまさぐる。硬い感触が返ってきたことに安堵しながら、スマホを取り出した。
 最悪、ここが異世界・・・であっても、スマホで大学や友人に連絡が取れれば、まだ望みはある。ぶっちゃけオタクで陰キャなので、大学の友人なんて片手で数えるくらいしかいないけど。
 というか、俺はSNSだってやってるんだから、そちらに助けを求める手も取れなくはない。T○itterとか、I○stagramとか。フォロワー数は……まぁ、あれだ、深くは聞くな。
 スマホのロックボタンを押し込むと、何事もなく画面に光が点った。壁紙に設定している箱根温泉の湯棚の写真が映る。
 そして右上、電池残量の表示の隣。

「圏外、かー……」

 無情にも、電波表示は圏外。俺の希望は儚くも打ち砕かれた。

 拝啓、父さん。母さん。俺はどうやら異世界・・・に迷い込んだらしいです。
 いい歳こいて迷子になりました。
 泣いていいですか。
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