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第1章:危険区域編
フェンリルとの邂逅 ①
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真紅に染まる血だまりの中でシエルが見つけたのは、かろうじて息のある大きな狼が倒れている姿だった――。
最初に目についた銀糸のように煌めく美しい銀色のたてがみは、血で染まりながらも神々しく神秘的な雰囲気を纏っている。
魔物に嚙み千切られた腹部からは絶えず血が流れ、胸や背中などには大きくて鋭い爪痕が深々と残っていた。
(もしかして……さっきの真新しい戦闘の痕跡は、この子がやられたときの……?)
シエルは水辺へ辿り着く前に見かけた、真新しい戦闘の跡を思い出す。
目の前に広がる残酷で、惨たらしい光景に顔を背けたくなる気持ちを抑えながらシエルはふと気付いた。
「……フェンリル?」
小さく呟いたシエルの言葉に反応するように、フェンリルは閉じていた目を開いてグルルと威嚇しながら声をあげる。
「……何者だ、失せろ!」
血の流しすぎで動くこともできず、攻撃する体力も残っていないフェンリルは唸るような低い声で、姿の見えない敵に鋭い言葉を投げかける。
(隠密が、見破られたっ……!?)
無意識に声を出したからなのかもしれないが、シエルはフェンリルに隠密を見破られた事に驚く。
(……弱っていても流石は神獣……ってところね。)
フェンリルとの力量差を目の当たりにしたシエルは思わず感心した。
そしてスキルを解いてフェンリルに姿を見せ、敵意が無いことを伝える。
「驚かせてごめんなさい。私はしろ……シエル・フェンローズ。あなたに危害を加えたりしないから安心してほしい」
一瞬、本名である白銀葵と言いかけて口を閉ざし、クロノスに与えられた新しい名で自己紹介をする。
「何故……人間の、小娘が……この森の深層で、護衛もつけずに、1人でいるのだ……?」
浅い呼吸を繰り返しながらも、鋭い瞳には敵意の光が宿っているフェリルは、シエルに疑問を投げかける。
フェンリルの鋭い視線に射抜かれ、一瞬足がすくむ。
だが、恐れよりも助けたいという気持ちが勝った。
「待って、喋らないで!今、回復魔法をかけてあげるから!」
シエルはフェンリルの質問を答える前に、回復させた方が良いと判断した。
「完全復活!」
短い呪文を唱えた。
パァっと眩い黄金の光が、酷く傷ついたフェンリルを優しく包み込む。
魔物に嚙み千切られて絶えず出血していた腹部は、光が当たるとゆっくりと元の状態に戻り、斬り裂かれた背中や胸の鋭い爪痕も傷跡1つなく完治した。
「気分はどう?痛いところとかない?」
シエルは完全回復したフェンリルに心配そうな表情で問いかける。
「……何故、我を助けた?」
フェンリルは初対面の人間が自分を回復させたことに”何か裏があるのではないか”と警戒心を抱く。
「どこから説明すればいいのかな……」
警戒する様子のフェンリルに、シエルは真実を全て打ち明けるか悩んで口ごもる。
(神獣は高潔な存在と聞いているけれど……例外もいるかもしれない。だけど、今はこの子を信じたいな……)
神獣という気高い存在であれば自分を悪用しないはず……とフェンリルを信じ、シエルは慎重に口を開いた。
「1つずつ説明するね。まず最初の質問からなんだけど……」
そう言ってシエルは、ヴェルグリムの深森にいる理由をフェンリルへ説明することにした――。
最初に目についた銀糸のように煌めく美しい銀色のたてがみは、血で染まりながらも神々しく神秘的な雰囲気を纏っている。
魔物に嚙み千切られた腹部からは絶えず血が流れ、胸や背中などには大きくて鋭い爪痕が深々と残っていた。
(もしかして……さっきの真新しい戦闘の痕跡は、この子がやられたときの……?)
シエルは水辺へ辿り着く前に見かけた、真新しい戦闘の跡を思い出す。
目の前に広がる残酷で、惨たらしい光景に顔を背けたくなる気持ちを抑えながらシエルはふと気付いた。
「……フェンリル?」
小さく呟いたシエルの言葉に反応するように、フェンリルは閉じていた目を開いてグルルと威嚇しながら声をあげる。
「……何者だ、失せろ!」
血の流しすぎで動くこともできず、攻撃する体力も残っていないフェンリルは唸るような低い声で、姿の見えない敵に鋭い言葉を投げかける。
(隠密が、見破られたっ……!?)
無意識に声を出したからなのかもしれないが、シエルはフェンリルに隠密を見破られた事に驚く。
(……弱っていても流石は神獣……ってところね。)
フェンリルとの力量差を目の当たりにしたシエルは思わず感心した。
そしてスキルを解いてフェンリルに姿を見せ、敵意が無いことを伝える。
「驚かせてごめんなさい。私はしろ……シエル・フェンローズ。あなたに危害を加えたりしないから安心してほしい」
一瞬、本名である白銀葵と言いかけて口を閉ざし、クロノスに与えられた新しい名で自己紹介をする。
「何故……人間の、小娘が……この森の深層で、護衛もつけずに、1人でいるのだ……?」
浅い呼吸を繰り返しながらも、鋭い瞳には敵意の光が宿っているフェリルは、シエルに疑問を投げかける。
フェンリルの鋭い視線に射抜かれ、一瞬足がすくむ。
だが、恐れよりも助けたいという気持ちが勝った。
「待って、喋らないで!今、回復魔法をかけてあげるから!」
シエルはフェンリルの質問を答える前に、回復させた方が良いと判断した。
「完全復活!」
短い呪文を唱えた。
パァっと眩い黄金の光が、酷く傷ついたフェンリルを優しく包み込む。
魔物に嚙み千切られて絶えず出血していた腹部は、光が当たるとゆっくりと元の状態に戻り、斬り裂かれた背中や胸の鋭い爪痕も傷跡1つなく完治した。
「気分はどう?痛いところとかない?」
シエルは完全回復したフェンリルに心配そうな表情で問いかける。
「……何故、我を助けた?」
フェンリルは初対面の人間が自分を回復させたことに”何か裏があるのではないか”と警戒心を抱く。
「どこから説明すればいいのかな……」
警戒する様子のフェンリルに、シエルは真実を全て打ち明けるか悩んで口ごもる。
(神獣は高潔な存在と聞いているけれど……例外もいるかもしれない。だけど、今はこの子を信じたいな……)
神獣という気高い存在であれば自分を悪用しないはず……とフェンリルを信じ、シエルは慎重に口を開いた。
「1つずつ説明するね。まず最初の質問からなんだけど……」
そう言ってシエルは、ヴェルグリムの深森にいる理由をフェンリルへ説明することにした――。
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