8 / 83
第1章:危険区域編
フェンリルとの邂逅 ②
しおりを挟む
神獣フェンリルを信じて、シエル自身が転生召喚者であることを打ち明ける。
「……実は私、異世界の転生召喚者なの。本当ならアヴァルディア?っていう国のお城に召喚されるはずだったんだけど……気が付いたらこの森に飛ばされてたの。」
シエルが異世界人だと聞いたフェンリルの耳がピクリと反応するも、口を挟むことはなく黙って説明を聞いている。
その様子を見たシエルは続けて2つ目の質問に答える。
「そして、あなたを助けた理由は……あなたが神獣だと分かったから。神獣って神様の眷属、なんだよね?だから助けなきゃって思ったの。」
一呼吸おいてから続けてフェンリルに告げる。
「それから、私と同じ銀色の毛色をしていたから放っておけなくて……余計なお節介、だったかな?」
これまで黙って説明を聞いていたフェンリルが静かに口を開いた。
「……いや、お節介などではない。あのままでは確実に我は死んでおった。人間の娘よ、我を救ってくれたこと、感謝するぞ。」
フェンリルから感謝の気持ちを述べられたシエルは、心が温かくなるのを感じた。
「それからお主が森にいる理由と、我を助けた理由も良く分かった。そしてシエルよ、アヴァルディアの王城に召喚されるはずがこの森に転送されたといったな?」
シエルはフェンリルの問いかけにコクリとうなずいた。
「ふむ……だとすれば、お主が召喚されると不利になる何者かが妨害したと考えるのが妥当だろう。」
「やっぱり、フェンリルさんもそう思う……?」
フェンリルは頷き、静かに口を開く。
「召喚を妨害できるほどの力を持つ存在は限られておる。少なくとも、王都の高位魔術師だけでは不可能であろう……。」
フェンリルの言葉を聞いてシエルは首をかしげる。
「じゃあ、一体誰が?」
シエルの問いかけにフェンリルは慎重に言葉を紡ぐ。
「それは我にも分らぬ。だが……そんなことができるのは魔導国家の連中か、神や……魔族くらいであろう」
フェンリルは自分を助けてくれたというシエルへの恩義から、何者かに命を狙われている可能性がある彼女に1つの提案をする。
「シエルよ、お主には瀕死の状態から救ってもらった恩義がある。それから……」
フェンリルはそこでいったん口を閉ざし、一呼吸おいてから静かに告げる。
「お主が王城に召喚されるはずだったというのなら……ただの転生者ではないはずだ。ゆえに――我と従魔契約を結ぶがよい。」
シエルはフェンリルの発言に驚いて目を見開く。
「……契約を結ぶメリットは?」
「我と従魔契約を結べば風属性の適性が追加で付与され、すでに適性のある者は属性が強化される。それからお主を狙う輩から護ってやろう。……護衛といえば分かりやすいだろう。」
フェンリルから従魔契約のメリットを聞いて、シエルは考え込む。
(属性攻撃の中でも風属性を得意としている私にとって、属性の強化は魅力的な提案だと思う。護衛に関しても、狙われている可能性があるのなら契約を結ぶ方が良いかもしれない。)
シエルはフェンリルの提案を受け入れようと思ったが……。
(――でも……もし、契約をした後に裏切られたりしたら……?)
前世のように孤立するのではないか――というシエルの思考を見透かしたようにフェンリルは口を開く。
「心配せずとも、命の恩人を無下に扱う真似はせん。神獣の名に誓って、どんなことがあろうとも最後までお主を守ると約束しよう。」
フェンリルの力強い言葉を聞いて安心したシエルは、1人よりも神獣という仲間がいた方が心強いと考えて従魔契約の申し出を受け入れることにした――。
「……実は私、異世界の転生召喚者なの。本当ならアヴァルディア?っていう国のお城に召喚されるはずだったんだけど……気が付いたらこの森に飛ばされてたの。」
シエルが異世界人だと聞いたフェンリルの耳がピクリと反応するも、口を挟むことはなく黙って説明を聞いている。
その様子を見たシエルは続けて2つ目の質問に答える。
「そして、あなたを助けた理由は……あなたが神獣だと分かったから。神獣って神様の眷属、なんだよね?だから助けなきゃって思ったの。」
一呼吸おいてから続けてフェンリルに告げる。
「それから、私と同じ銀色の毛色をしていたから放っておけなくて……余計なお節介、だったかな?」
これまで黙って説明を聞いていたフェンリルが静かに口を開いた。
「……いや、お節介などではない。あのままでは確実に我は死んでおった。人間の娘よ、我を救ってくれたこと、感謝するぞ。」
フェンリルから感謝の気持ちを述べられたシエルは、心が温かくなるのを感じた。
「それからお主が森にいる理由と、我を助けた理由も良く分かった。そしてシエルよ、アヴァルディアの王城に召喚されるはずがこの森に転送されたといったな?」
シエルはフェンリルの問いかけにコクリとうなずいた。
「ふむ……だとすれば、お主が召喚されると不利になる何者かが妨害したと考えるのが妥当だろう。」
「やっぱり、フェンリルさんもそう思う……?」
フェンリルは頷き、静かに口を開く。
「召喚を妨害できるほどの力を持つ存在は限られておる。少なくとも、王都の高位魔術師だけでは不可能であろう……。」
フェンリルの言葉を聞いてシエルは首をかしげる。
「じゃあ、一体誰が?」
シエルの問いかけにフェンリルは慎重に言葉を紡ぐ。
「それは我にも分らぬ。だが……そんなことができるのは魔導国家の連中か、神や……魔族くらいであろう」
フェンリルは自分を助けてくれたというシエルへの恩義から、何者かに命を狙われている可能性がある彼女に1つの提案をする。
「シエルよ、お主には瀕死の状態から救ってもらった恩義がある。それから……」
フェンリルはそこでいったん口を閉ざし、一呼吸おいてから静かに告げる。
「お主が王城に召喚されるはずだったというのなら……ただの転生者ではないはずだ。ゆえに――我と従魔契約を結ぶがよい。」
シエルはフェンリルの発言に驚いて目を見開く。
「……契約を結ぶメリットは?」
「我と従魔契約を結べば風属性の適性が追加で付与され、すでに適性のある者は属性が強化される。それからお主を狙う輩から護ってやろう。……護衛といえば分かりやすいだろう。」
フェンリルから従魔契約のメリットを聞いて、シエルは考え込む。
(属性攻撃の中でも風属性を得意としている私にとって、属性の強化は魅力的な提案だと思う。護衛に関しても、狙われている可能性があるのなら契約を結ぶ方が良いかもしれない。)
シエルはフェンリルの提案を受け入れようと思ったが……。
(――でも……もし、契約をした後に裏切られたりしたら……?)
前世のように孤立するのではないか――というシエルの思考を見透かしたようにフェンリルは口を開く。
「心配せずとも、命の恩人を無下に扱う真似はせん。神獣の名に誓って、どんなことがあろうとも最後までお主を守ると約束しよう。」
フェンリルの力強い言葉を聞いて安心したシエルは、1人よりも神獣という仲間がいた方が心強いと考えて従魔契約の申し出を受け入れることにした――。
29
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界!? 神!? なんで!?
藤谷葵
ファンタジー
【内容】
人手。いや、神の手が足りずに、神様にスカウトされて、女神となり異世界に転生することになった、主人公。
異世界の管理を任され、チートスキルな『スキル創造』を渡される主人公。
平和な異世界を取り戻せるか!?
【作品の魅力】
・チートスキル
・多少ドジっ子な主人公
・コミカルやシリアスなドラマの複合
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる