転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

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第3章:魔導国家編 ①

第1話 魔導国家アストラルヴィエン

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移転魔法のまばゆい光がおさまり、シエルは周囲を見渡した。
視界には見晴らしが良く、果てしない草原がどこまでも続いている。

「あ、あれ……草原?」

生温かい風が頬を撫で、近くの草が揺れた。
オレンジ色の毛並みをした小さな小動物が、草むらをピョンと跳ねて駆けまわる。

(もしかして、失敗しちゃったんじゃ……)

爽やかな風景とは裏腹に、シエルの心は不安で苛まれていた。

「そういえばお主、方向音痴ではないか……」

フェリルが冷ややかな目でシエルを見つめ、深いため息をつく。

「ほ、方向音痴と移転魔法は関係なくない!?……たぶん。」

不安に駆られたシエルは、こっそりと鑑定で現在地を確認する。

(良かった、一応はアストラルヴィエンの敷地内なのね……)

アストラルヴィエン内の草原に転移できていたことを知ったシエルは、安堵の息をついた。

「到着位置は多少ズレちゃったみたいだけど……無事にアストラルヴィエンへ着いたようだね」

レイノルドは柔らかく微笑み、穏やかな口調でシエルの背後を指さした。
シエルが振り向くと、遠くの方で薄紫の膜に包まれた都市が見えた。

「まぁ、これくらいの誤差で済んだのなら十分だろう。よくやった、シエル。」

ノクターンは頭にポンっと手を置いてシエルを褒めた。
その様子を見ていた騎士たちが驚いた表情を2人に向け、騒然とした。

「普段あまり人を褒めない団長がシエル様を褒めた!?」

「あの冷徹な悪魔を手懐けるなんて……流石は召喚者様だ」

ざわざわと騒ぎ始める騎士たちへ、ノクターンは凍てついた声で鋭い一言を放つ。

「お前たち……王都に帰ったら宿舎の外周20周な」

騎士たちはサァっと青ざめて慌てて口を閉ざした。
静寂が訪れた草原にレイノルドの笑い声が静かに響き渡った。

「あははっ、だって本当のことじゃないか……」

いったん口を閉ざし、息を整えて再び告げる。

「君が誰かを褒めるなんて――珍しいからね」

ノクターンはため息をついて話題を変える。

「……よし、このまま都市入りする。シエルを中心に周囲を固めて進むぞ」

ノクターンの声掛けに騎士たちはシエルを囲むように隊列を作り、ゆっくりと歩き出した。

(見晴らしのいい草原で狙われないように――守ってくれてるの……?)

シエルは静かに微笑み、列に続いて歩く。

(前世では、誰も私を守ってくれなかった。でも今は、私を囲んで歩くフェリルと騎士たちがいる。)

しばらく歩き進めるとドーム型の外壁が見えてくる。

「王都とは違う雰囲気なのね……あれは結界かしら?」

ここでは石造りの外壁の代わりに、薄紫色をした半球体の膜がアストラルヴィエン全体を覆っている。

アストラルヴィエンの関所に到着した騎士団一行は足を止める。
ノクターンが入口を警備している魔法兵に近づいて静かに声をかけた――。
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