転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

文字の大きさ
46 / 83
第3章:魔導国家編 ①

第2話 入国審査

しおりを挟む
ノクターンは調査書類を手に、静かに関所の魔法兵へ歩み寄った。

「我々は王都直属の騎士団、ブラックウィングだ。国王より古代魔法の解析任務を任され、魔塔に協力を要請しに来たんだが……通してもらえるだろうか」

魔法兵はノクターンから調査書類を受け取り、騎士団一行をじっくりと見据えて鋭い瞳を光らせた。

「王都の騎士団か。話は聞いているが……魔導国家に騎士など――必要ないのでは?」

鼻で笑いながら魔法兵は冷たく言い放つ。

「それから……そこのデカい狼。街中で危害を加えたりしないだろうな?」

魔法兵がフェリルを鋭く睨みつけながらノクターンに尋ねた。

「……この子は私の従魔よ。私に危害を加えない限り、人を襲うことはないわ。」

シエルが冷淡な口調で威圧的に言い放つ。
魔法杖を地面に叩きつけ、カンっと短い金属音が静かに木霊した。

「魔導師か……それなら大丈夫そうだな。だが、手綱はしっかり握っておくことだ。」

ローブを被ったシエルを見て納得した様子の魔法兵は、受け取った書類を水色の水晶にかざした。

(何アレ。態度悪すぎでしょ……すっごく嫌な人。)

シエルはフードの奥から冷ややかに睨み、そっと舌打ちをする。

水色の水晶は淡い光を放ちながら、書類の内容に偽りや偽造が無いかを調べている。

「流石は魔導国家というべきか……入国審査も魔道具で行うんだねぇ」

感心するレイノルドが水晶をじっと見つめている。

柔らかな光が消え、魔法兵は書類をノクターンに返した。

「書類に異常は見られなかった。通っていいぞ」

魔法兵は一行の入国を許可した。
その瞬間――薄紫色をした結界の一部がアーチ状に開いた。
人が1人、通れるほどの小さな道ができた。

「へぇ……入口が見当たらないから、どうやって入るんだろうって思ってたけど――許可が下りたら開くようになってるのね」

シエルは驚いたように入口を見つめ、小さく呟いた。
騎士団一行はアーチ状に開いた結界を通り抜け、都市の中に入っていった。

◆ ◇ ◆

アストラルヴィエンの市街地には石畳の道が遠くまでのびている。
道の両脇に魔力石の街灯が設置され、青白い輝きを放って神秘的で幻想的な光景を作り出していた。

「ここがアストラルヴィエンの都市内部……すごく、幻想的……」

王都とは異なる都市内部に関心を示すシエルは周囲を見渡した。
騎士団一行はシエルの包囲を維持したまま、魔塔を目指して歩き出した。

「よし、無事に入国できたな。……ここからは警戒を緩めるなよ。王都と違って何が起こるか分からないからな」

ノクターンは騎士たちに命じた。

「了解しました!」

騎士たちは気勢をあげて静かに歩く。

(……そうだ。この街のどこかに、私を狙う敵がいるんだったわね……)

シエルは今朝、自分の枕元に置かれていた手紙のことを思い出してわずかに顔が強張った。

”アストラルヴィエンには敵が潜んでいる。調査任務には気をつけよ。くれぐれも1人で行動するな”

「お主は我と……団長殿から離れるでないぞ」

フェリルがシエルの背中をつついて静かに声をかけた。

「……僕もシエルさんの護衛を任されているんだけどなぁ?」

レイノルドが横から柔らかく微笑み、口を挟んだ。

「貴様はその軽々しい態度が胡散臭くて信用できぬ」

フェリルは顔を背け、冷ややかに言い放つ。

「そんなこと言われると地味に傷つくなぁ……」

少し悲しそうな表情を見せるレイノルドが小さく呟いた。

「レイ、無駄口をたたくな。護衛は俺たち3人が交代で行う。フェリルもそれでいいな?」

フェリルはため息をつき、渋々承諾した。

「……仕方あるまい。」

騎士団一行は隊列を崩すことなく、魔塔を目指して静かに足を進めていった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

異世界!? 神!? なんで!?

藤谷葵
ファンタジー
【内容】 人手。いや、神の手が足りずに、神様にスカウトされて、女神となり異世界に転生することになった、主人公。 異世界の管理を任され、チートスキルな『スキル創造』を渡される主人公。 平和な異世界を取り戻せるか!? 【作品の魅力】 ・チートスキル ・多少ドジっ子な主人公 ・コミカルやシリアスなドラマの複合

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...