転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

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第3章:魔導国家編 ①

第8話 交渉成立

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緊迫する空気が漂う中、静かに心理戦が繰り広げられている。
騎士たちは息をのみ、ただ黙って成り行きを見守ることしかできなかった――。

「……嫌だなぁ。私がそんな姑息な真似をするような魔塔主に見えるかい?」

セラフィウスがシエルを静かに見つめる。

「精神魔法まで使って、交渉を有利に運ぼうとした人の言葉とは……到底思えないわね。」

セラフィウスの濃紫の瞳を深くかぶったフードの奥から鋭く射抜き、シエルは冷淡な口調で皮肉を言う。

「……ずいぶんと警戒心の強い魔導師のお嬢さんのようだ。」

僅かに驚いた表情を見せたかと思うと、セラフィウスはふっと微笑んだ。

「だったら……そちら側から1人、監視役として解析に同行すると良いよ」

シエルはセラフィウスの言葉を信じていいのか躊躇っている。

(疑うなら監視をつければいい――話の筋は通っている。でも、本当に信じていいのかしら?)

フードの奥から探るような視線を向け、考え込む。

(監視役に精神魔法をかけて、「問題なかった」とでも言わせるつもりじゃ……? いや、事前に私が防御魔法を施せば対処できるかもしれない――)

セラフィウスの発言に少しの沈黙のあと、シエルが答えようとするよりも早く、ノクターンが静かに口を開いた。

「……レイ、お前はここに残れ。監視役を任せる」

濃紺の瞳がまっすぐレイノルドを射抜く。

「え、僕?」

レイノルドは驚いた表情で自分を指さしてノクターンを見つめる。

「シエルを残すわけにはいかないだろ……それにお前は頭が切れるし、冷静な判断も出来る。監視役に適任じゃないか」

不敵な笑みを浮かべながら告げる。

「うん、いつも通りのノクスに戻ったね。」

レイノルドもつられて柔らかく微笑む。

「仕方ないなぁ……」

そう言いながらもレイノルドは瞳に覚悟の色を宿し、不敵に微笑んだ。

「任せて。不正がないか”しっかり”見張っておくから」

おどけたようにウインクをして監視役を買って出た。

「あ、レイノルドさん……じっとして。」

そう言いながら、シエルはレイノルドの顔を覗き込み、視線を合わせた。

「……?」

そして、そっと指先を動かしながら――密かに防御魔法を展開した。

(状態異常無効インバリッド・エタ・ノーマル)

「……まつ毛にゴミがついていましたよ。これで目を合わせても、もう痛くないですね」

レイノルドは一瞬だけ不思議そうな表情を見せるが、シエルの意図が理解できたようで不敵な笑みを浮かべた。

「……あぁ、本当だ。助かったよ、シエルさん。朝から目が痛かったのはこれのせいだったのか」

話についていけないという表情でシエルたちを見つめるノクターンは密かに眉をしかめる。

「……監視役には、うちの副団長を置いていく。」

ノクターンはセラフィウスへ静かに告げる。

「では、交渉成立……ということでいいのかな?」

首をかしげながら問いかけるセラフィウスはノクターンに手を差し伸べる。

「……あぁ、よろしく頼む。」

ノクターンは一瞬だけ躊躇ったが、ゆっくりと手を取る。
それが交渉成立の合図となった。

見守っていた騎士たちは、ようやく安堵の息をついた。

「そういえば……この塔に、白き魔女の文献が保管されているって王様から聞いたんだけど?」

解析の話が落ち着いたところで、シエルが魔塔主へ声をかける。

「もう、ここでは保管していないよ」

セラフィウスは淡々と答える。

「……え?」

シエルは一瞬だけ困惑の表情を浮かべ、すぐに表情を取り繕う。

「今は魔導図書館の秘匿エリアで、厳重に保管しているんだ。」

セラフィウスの濃紫の瞳が戸惑っているシエルをじっと見据える。

「そう……私の用件はここじゃなくて、図書館にあったみたいね」

(よりにもよって秘匿エリアだなんて……。この調査の裏には、知られたくない何かが隠されているんじゃ……?)

シエルはセラフィウスの視線から逃げるように顔をそむけ、文献の事を考える。

「……さて、お別れの時間だ。監視役のキミ以外は部屋から出てね」

セラフィウスがパチンと指を鳴らすと床に描かれている黄金色の魔方陣が光りだした。

「この魔方陣の上に立てば、さっき入ってきたゲートまで戻る。」

ノクターンは席から立ち上がり、魔方陣へと歩み寄る。
騎士たちとシエルも後に続く。

「レイ、進展があれば教えてくれ。それから……気をつけろよ」

チラリとセラフィウスを見て警戒を促し、調査物であるストラウスの生首が入った白い袋を渡した。

「了解。大丈夫だよ、お守りもあるしね」

パチンとウインクをしたレイノルドはシエルを見ながら軽快に答え、生首の袋を受け取る。

「お守り……?」

ノクターンは不思議そうな顔でレイノルドとシエルを見つめる。

「……まぁいい。あとは頼んだぞ」

そうして一行が魔方陣の上に立つと、淡い金色の光が彼らを優しく包み込んだ。
次の瞬間、ノクターンたちの姿は跡形もなく消えていた――。
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