転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

文字の大きさ
64 / 83
第3章:魔導国家編 ②

第1話 魔導図書館・ノア=インフィニタ ①

しおりを挟む
魔導国家・アストラルヴィエンの都心部に位置するドーム型の魔導図書館「ノア=インフィニタ」。
魔法で星空が映し出された濃紺の屋根は、昼夜問わず幻想的な瞬きを放っていた。

「ここに、白き魔女の文献があるのね……」

(私の探している答えが、見つかると良いんだけど)

シエルは淡い期待を胸に、図書館のゲートを潜った。

石造りの白い外壁には薄紫色の魔方陣が描かれ、静かに脈打っていた。
まるで入館者を監視するかのように……。

「秘匿区域……だったか?他国の文献なのに、ずいぶんと厳重なんだな。」

ノクターンも続いて中に入っていった次の瞬間――。

――バチッ

フェリルだけが、入口の結界に弾かれてしまった。

「なぜ……我は入れぬのだ!神獣ぞ!」

低い唸り声をあげ、力強く前脚で結界を叩く。
再び小さな電撃音が響くと同時に、紫色の火花が散る。

「――魔導図書館ノア=インフィニタでは本を守るために魔法生物を含め、すべての生物が入場できないようになっているんですよ」

突如として背後から落ち着いた声が響き、シエルたちは思わず振り返る。
そこには黒紫色のボブヘアと黄金色の瞳が神秘的な雰囲気を放つ、丸眼鏡をかけた小柄な女性が静かに佇んでいた。

「……あなたは?」

シエルが警戒して慎重に問いかけた。

「私は司書長のオルディアナです。結界に反応があったので様子を伺いに来たのです」

結界に弾かれたフェリルを見てオルディアナは柔らかに告げた。

「この子は私の従魔なんだけど……無闇に人を襲ったりしないから、このまま待機させてもらってもいいかしら?」

シエルはフェリルへ視線を送り、オルディアナに問いかけた。

「人を襲わない……ということでしたら構いませんよ。」

オルディアナは優しく微笑み、静かに承諾した。

「……入れぬのなら仕方あるまい。団長殿、主を頼んだぞ」

フェリルは刺々しい口調で告げ、大きな足音を立てて移動した。
邪魔にならないよう建物の隅で伏せた。

「すまないな。少しだけ待っていてくれ」

「すぐに戻ってくるからね」

シエルとノクターンがフェリルに別れを告げ、図書館の中へ姿を消した。

「何か、可哀相なことしちゃったわね……」

シエルが苦笑いを浮かべて小さく呟く。

「そういう規則なら仕方ないんじゃないか?」

さりげなくシエルをフォローするノクターンは、バッグから調査書類を取り出した。
オルディアナのもとへ歩み寄って書類を見せた。

「ここに保管されている白き魔女の文献を確認しに王都から来たんだが、案内してもらえるか?」

一瞬だけオルディアナの表情が曇り、空気が凍った。

(なに、今の空気……)

シエルは微かな空気の変化を見逃さなかった。
じっと、探るような視線をオルディアナに向ける。

「……申し訳ございませんが、魔塔主様が認めた者にのみ発行する許可証が無いとお通しできない規則なんです。」

何事も無かったかのように、すぐ無表情に戻ったオルディアナは平然を装った。

(他国の文献を、ここまで厳重に保管する理由は一体何なの?)

シエルはフードの奥で一瞬だけ表情を曇らせた。

「昨日魔塔で文献の事を聞いた時は、ここに保管されている事しか聞いていないが?」

ノクターンがオルディアナを冷え切った眼差しで鋭く見据えた。

「つまり、お2人は塔主様に認められなかった――ということですね」

オルディアナはノクターンの威圧に動じることなく淡々と告げた。

「……それは違うよ、オルディアナ」

静かに敵対の炎を瞳に宿すノクターンとオルディアナのもとに穏やかな声が響いた。

(この声……)

シエルは気配を感じなかった声の主に、そっと眉を顰める。
背後には金の刺繍が施された漆黒の魔導服に身を包んだ魔塔主――セラフィウスが気配を殺して静かに佇んでいた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

異世界!? 神!? なんで!?

藤谷葵
ファンタジー
【内容】 人手。いや、神の手が足りずに、神様にスカウトされて、女神となり異世界に転生することになった、主人公。 異世界の管理を任され、チートスキルな『スキル創造』を渡される主人公。 平和な異世界を取り戻せるか!? 【作品の魅力】 ・チートスキル ・多少ドジっ子な主人公 ・コミカルやシリアスなドラマの複合

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...