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第3章:魔導国家編 ②
第2話 魔導図書館・ノア=インフィニタ ②
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魔導図書館のエントランスホールにセラフィウスの足音が響いた。
オルディアナとノクターンの間にスッと身体を割り込ませ、静かに沈黙を破る。
「この2人は……僕が直接案内するつもりだったのさ。」
濃紫の瞳がチラリとシエルとノクターンを捉えた。
「だから、通行許可証を渡さなかったんだけど……どうやら、行き違いが起きちゃったみたいだね?」
セラフィウスの目が細められ、静かに微笑む。
「……そういうことでしたか。それであれば、私の案内は不要ですね」
失礼します、と深く頭を下げてオルディアナは受付に戻っていった。
「……どういうつもり?昨日はそんなこと、一言も言ってなかったと思うけど」
シエルが警戒の眼差しを向け、セラフィウスに尋ねる。
「私も年だからね……つい、言い忘れちゃっただけだよ。」
セラフィウスは微笑みながら告げた。
(……つまり見た目は青年、中身は老いぼれってこと?)
シエルは心の中で悪態をつき、この胡散臭いエルフは信用できない――と警戒の炎が灯った。
「ついておいで。秘匿区域まで案内するよ」
踵を返したセラフィウスがゆっくりと歩き出した。
シエルとノクターンも、数歩後ろを静かに歩く。
一般開放されているエリアには、煌びやかな魔導服に身を包んだ人々が静かに魔導書を読んでいた。
中には魔導書に書かれている呪文を唱えて練習する者。
別の場所には宙に浮いて魔導書を読み漁る者。
そんな様子がシエルの視界に飛び込んできた。
「魔導図書館で魔法を練習するなんて、魔法に長けた国らしいわね」
その様子を見たシエルがクスっと笑う。
「ここは一般開放エリア。取るに足らない普通の書物があるだけさ。」
セラフィウスはそこにいる魔導士たちを一瞥し、つまらなそうに目をそらした。
「さて、一般開放エリアはここまで。お次は――対話書エリアの登場さ。」
セラフィウスが声をかけると同時に、ふわっと温かな風が頬を撫でた。
静かな一般開放エリアとは異なり、そこには賑やかな空間が広がっていた。
喋る魔導書が宙を飛び交い、魔導師たちと談笑していた。
「……これは、一体?」
ノクターンは目を見開き、宙を舞う魔導書を凝視した。
「ここには意志のある魔導書が保管されているんだ。魔導書が読者を選ぶこともあるよ」
セラフィウスはフロアごとに丁寧な説明を交えつつ、淡々と先へ進んだ。
「もし、その本に選ばれなかったら?」
シエルが興味本位で魔導書に選ばれなかったらどうなるのかを尋ねた。
「本に読む資格が無いと判断されたら最後――残念ながら読む事はできないよ」
対話書エリアを静かに通り抜けたセラフィウスが首を横に振って答える。
「気難しい魔導書もいるのね。」
シエルは静かにため息をついて後を追う。
「ここから先が、君たちの目的地――秘匿エリアだよ」
薄暗い石造りの通路には古びた燭台が並び、壁に埋め込まれた魔力石が青白い光を放っていた。
他のエリアとは違い、ひんやりと冷たい空気が肌を刺す。
まるで異次元へ迷い込んだような錯覚に陥った。
「なんか、不気味な雰囲気ね……」
シエルの小さなつぶやきが石壁に反響した。
通路を抜けると、薄紫色をしたアーチ状のゲートが姿を現した。
セラフィウスが中に入っていき、シエルも後に続いてゲートを通過する。
そしてノクターンがゲートを潜ろうとしたその瞬間――。
――バチッ
大きな電撃音と共に紫色の稲妻が走った。
その衝撃でノクターンの身体が一瞬だけ痺れる。
「なっ――!?」
ノクターンはゲートに弾かれてしまい、中に入ることができなかった――。
オルディアナとノクターンの間にスッと身体を割り込ませ、静かに沈黙を破る。
「この2人は……僕が直接案内するつもりだったのさ。」
濃紫の瞳がチラリとシエルとノクターンを捉えた。
「だから、通行許可証を渡さなかったんだけど……どうやら、行き違いが起きちゃったみたいだね?」
セラフィウスの目が細められ、静かに微笑む。
「……そういうことでしたか。それであれば、私の案内は不要ですね」
失礼します、と深く頭を下げてオルディアナは受付に戻っていった。
「……どういうつもり?昨日はそんなこと、一言も言ってなかったと思うけど」
シエルが警戒の眼差しを向け、セラフィウスに尋ねる。
「私も年だからね……つい、言い忘れちゃっただけだよ。」
セラフィウスは微笑みながら告げた。
(……つまり見た目は青年、中身は老いぼれってこと?)
シエルは心の中で悪態をつき、この胡散臭いエルフは信用できない――と警戒の炎が灯った。
「ついておいで。秘匿区域まで案内するよ」
踵を返したセラフィウスがゆっくりと歩き出した。
シエルとノクターンも、数歩後ろを静かに歩く。
一般開放されているエリアには、煌びやかな魔導服に身を包んだ人々が静かに魔導書を読んでいた。
中には魔導書に書かれている呪文を唱えて練習する者。
別の場所には宙に浮いて魔導書を読み漁る者。
そんな様子がシエルの視界に飛び込んできた。
「魔導図書館で魔法を練習するなんて、魔法に長けた国らしいわね」
その様子を見たシエルがクスっと笑う。
「ここは一般開放エリア。取るに足らない普通の書物があるだけさ。」
セラフィウスはそこにいる魔導士たちを一瞥し、つまらなそうに目をそらした。
「さて、一般開放エリアはここまで。お次は――対話書エリアの登場さ。」
セラフィウスが声をかけると同時に、ふわっと温かな風が頬を撫でた。
静かな一般開放エリアとは異なり、そこには賑やかな空間が広がっていた。
喋る魔導書が宙を飛び交い、魔導師たちと談笑していた。
「……これは、一体?」
ノクターンは目を見開き、宙を舞う魔導書を凝視した。
「ここには意志のある魔導書が保管されているんだ。魔導書が読者を選ぶこともあるよ」
セラフィウスはフロアごとに丁寧な説明を交えつつ、淡々と先へ進んだ。
「もし、その本に選ばれなかったら?」
シエルが興味本位で魔導書に選ばれなかったらどうなるのかを尋ねた。
「本に読む資格が無いと判断されたら最後――残念ながら読む事はできないよ」
対話書エリアを静かに通り抜けたセラフィウスが首を横に振って答える。
「気難しい魔導書もいるのね。」
シエルは静かにため息をついて後を追う。
「ここから先が、君たちの目的地――秘匿エリアだよ」
薄暗い石造りの通路には古びた燭台が並び、壁に埋め込まれた魔力石が青白い光を放っていた。
他のエリアとは違い、ひんやりと冷たい空気が肌を刺す。
まるで異次元へ迷い込んだような錯覚に陥った。
「なんか、不気味な雰囲気ね……」
シエルの小さなつぶやきが石壁に反響した。
通路を抜けると、薄紫色をしたアーチ状のゲートが姿を現した。
セラフィウスが中に入っていき、シエルも後に続いてゲートを通過する。
そしてノクターンがゲートを潜ろうとしたその瞬間――。
――バチッ
大きな電撃音と共に紫色の稲妻が走った。
その衝撃でノクターンの身体が一瞬だけ痺れる。
「なっ――!?」
ノクターンはゲートに弾かれてしまい、中に入ることができなかった――。
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