転生召喚者は異世界で陰謀を暴く~神獣を従えた白き魔女~

*⋆☾┈羽月┈☽⋆*

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第3章:魔導国家編 ②

第9話 真実の幕開け

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セラフィウスはシエルの肩から頭をあげ、本棚に押し付けているシエルの両手をそっと離した。

「ついてきて。話が長くなるから座って話そう」

そう言ってセラフィウスが静かに移動を始めた。
数歩後ろをシエルは黙ってついて行く。

モノクロを基調とした秘匿区域の中央に読書スペースがあり、テーブルと椅子が並んでいる。
上質な白い木製の椅子にセラフィウスが腰を下ろした。
シエルが向かいに座ると同時に、セラフィウスは短い呪文を唱えた。

「……時間停止ヴレーミャ・スターシ

セラフィウスの声に反応した紫色の光が周囲を優しく包み、ゆっくりと光が消えていく。
淡い輝きを放っていた回転する魔方陣はピタリと動きが止まっている。
室内には物音ひとつ聴こえず、秘匿区域に静寂が訪れた。

「今のは……?」

シエルは首をかしげて問いかけた。

「周囲の時間を止めたんだ。長話をするのに丁度いいだろ?今、この世界で動いているのは俺と……お前だけ。」

シエルの問いにセラフィウスが静かに答える。

「魔塔主レベルになると、そんなこともできるのね」

シエルは感心してセラフィウスを見つめる。

「……まぁ、そんなもんだ」

セラフィウスは言葉を濁し、曖昧な回答をする。
少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

「……さっき、俺が何を知っているのか――と、尋ねたな?」

シエルはセラフィウスの目をじっと見つめて静かに頷く。

「……すべてを、知っている。白き魔女の事も、当時のことも……な」

低く重たい声が響き、濃紫の瞳がそっと伏せられる。
セラフィウスから悲愴感が漂い、その表情はどこか儚げに見えた。

「だが、真実を知る前に……まずこれを読め」

セラフィウスがパチンと指を鳴らし、本棚から1冊の本を抜きとった。
2人のもとへ、ふわりと漂うと静かにテーブルへ着地した。

「……この本は?」

シエルはテーブルに置かれた本とセラフィウスを見つめた。

「王都から預かっている白き魔女の文献だ。お前は、これを探しに来たんだろ?」

本を指でつつきながらセラフィウスが淡々と答えた。

「そうよ。でも……本を読んで無防備になったところで、何かしたり……するんじゃないの?」

セラフィウスへ警戒の眼差しを向ける。

「……しないよ。もし俺が敵だったなら、お前らを分断した時点で襲撃していたはずだろ?」

深いため息をつき、呆れたようにセラフィウスが言葉を紡ぐ。

(気配探知も使えない中で、本当に信用して大丈夫なのかな……)

シエルは不安な気持ちを抱きつつも、真実を明らかにする方が先だという考えに至った。

(この文献に、私の知りたい答えがあるのね……)

高鳴る鼓動を落ち着かせるように、深呼吸をしながら胸元に輝く濃紺のブローチを握り締める。
ゆっくりと本を手に取ったシエルは震える指先で、そっとページを捲った――。
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