枯れ落ちる花

塚口悠良

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分かりきった答え

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 そろそろ、自分の気持ちを自覚すべきなんだろう。私は、優菜のことが好きだ。これはどうしようもなく、変えられない事実になってしまった。その気持ちをいざ自覚するといやにすんなり受け入れられてしまった。だから、けじめをつけなくちゃいけない。こうなってしまったら、やることはただ一つだった。

 メッセージアプリで通話できるかと連絡を入れる。こんな日に限って珍しくも即レスで、話の早さに渇いた笑いが出てしまう。通話が繋がって、第一声。ゆっくり息を吸い込んで簡潔に言葉を吐き出す。

「別れよう」
「え……? あー……うん。美咲が決めたなら、仕方ないね。わかったよ」

 戸惑いは一瞬で、あっさりとした言葉。未練なんて一ミリも感じられない淡白な返事にもはや何の感情も動かなかった。情けなく追い縋ってくれれば、なにか感じられたかもしれなかったのに。付き合うって決めたのも惰性だった。そりゃあ長くは続かない。そんなことは、彼にもわかっていたのだろう。

「これからはまた友だちとして、仲良くしようね。それじゃ」

 なんて。私からは連絡なんてするつもりないくせに。最後まで狡く予防線を張るんだ。電話を切ってベッドにスマホを投げ捨て寝っ転がる。

「優菜、好きだよ。・・・はは。アホくさ」

 口に出した言葉の軽さに吐き気がする。好きにもちゃんと分類分けがあれば、こんなバグは起こらなかったんだろうか。くだらない、どうにもならないこの気持ちは、ホントの恋になってくれるのだろうか。



 彼氏と別れて数日後、優菜とショッピングに行った。服を見たり、アクセを見たり、カフェに入って他愛もない話をしたり。すごく楽しくて、友だちとして、この子が好きだと思う。でも、恋愛の好きと何が違うのか、私にはいまいちわからない。きっと、ただの友達とはしないことをたくさんしてる。でも、男の友だちとも寝られる私は、きっと友情と愛情の境目が分からない。

「今日さ、この後うち来ない?」
「え、あー……」

 意表を突かれたような顔をして優菜は頬を掻いた。

「今日は、やめとく。ごめんね」

 そう言った優菜の顔は、少し大人びて見えた。それがどうしてなのかは分からなかったけれど。
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