枯れ落ちる花

塚口悠良

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変化

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 優菜の様子がおかしい。あの日から二か月、一度も家に来てくれなくなった。どうして? タイミングが悪いだけだろうか? 外では遊んでも家には来ない。これは、私とのセックスを拒んでいるって事だろうか。だとしたら……。

「ねえ、優菜」
「なーに?」
「もう私とはしてくれないの?」
「っ……いや、えと……」
「別に、それはそれでいいの。でも、理由は聞かせといて欲しい」

 頬を掻きながら目線を彷徨わせる優菜の目を覗き込んでまっすぐ見つめる。私は中途半端が一番嫌いなんだ。やめるにしても、理由が欲しい。

「じつ、は……その……彼氏と、したの」
「は?」
「そ、れで……美咲とは、もうしない方が……いい、かな、とか」

 しどろもどろに紡がれる言葉はなぜか予想だにしなかったもので、ふっと周囲の音が遠のく感覚がした。したって、何を? だって、あんたの彼氏は手も繋いでこないような奴だったでしょ? それが、急に何。男気見せちゃった? だったら、もっとさっさとしてくれれば、こんな感情に気付かずに済んだのに。

「美咲、あの……大丈夫?」
「何が?」
「なんか、上の空って感じだったから」
「別に、何でもない。でも、うん。そっか。分かった。彼氏とお幸せに」

 いたたまれなくて、いてもたってもいられなくて、どうしようもなくて、きっと作れてないだろう笑顔を顔に貼りつけてお金を置いて店を出た。私と優菜は付き合ってたわけじゃない。明確にセフレだったわけでもない。手近に発散できる相手がいたからしてただけ。ノーカンで、眼中にない、ただのトモダチ。分かってる。知ってる。大丈夫。

「これは、恋だった?」

 自分への問いかけが虚しく響く。逃がした魚が大きく見えただけかもしれない。手に入らなかった宝石がよりキレイに見えただけかもしれない。幼稚な独占欲かもしれない。知らないうちに、あの子のことを誰よりも知っているのは私だと、思い込んだだけ。セックスしたくらいでなにかが変わったりしないこと、私なら知ってたはずなのに。いや、あの子の場合、私としたものはセックスですらなかったのか。現に、彼氏としたら変わったわけだし。無性に腹が立つ。でもこの腹立たしさが一体どこに向かってるものなのかが分からない。何も分からない。まとまらない思考を抱えてふらふらと自宅に帰る。着替えるのも億劫でベッドに倒れこんだ途端、いろんなことを思い出して涙が出た。頭が痛くなるくらい泣いて、疲れて眠った。もう、目覚めなくてもいい。そんなことを考えながら。
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