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相方のいない午後

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洗濯かごの底で、僕は彼の手が来るのをじっと待っていた。

少し湿っていて、ちょっとだけ泥の跡が残っている。
でも、それも全部、僕たちが一緒に歩いた証だ。

今日も駅までの道を、バタバタと急ぎ足で走った。
公園のベンチでコーヒーを飲んだ。
午後には、デスクの下でくたびれた足をそっと包んでいた。

そう、僕はいつだって、彼の一日を足元から支えてきた。

でも――

今日は様子が違った。

洗濯機の中でぐるぐる回されたあと、乾燥機から出てきたのは、僕だけだった。
そう、「相方」がいない。
どこにも、いないのだ。

あの子とはいつも一緒だった。
洗われるのも、履かれるのも、片づけられるのも、同じタイミングだったのに。

乾燥機の奥? カゴの隙間? どこかで落ちた?
いや、そんなことより――どうして、こんなにも寒いのだろう。
たった一晩で、こんなにも孤独を感じるなんて、思わなかった。

翌朝、彼が引き出しを開けたとき、僕は見つからないふりをした。
もう「靴下」としての役割を果たせないなら、ただの布きれだ。
彼が僕の「相方」を探すふりをして、しばらく立ち尽くしていたのを、僕は知っている。

そのあと、僕はそっと、引き出しの奥に戻された。
二度と選ばれることのない場所へ。

それでも、願ってしまうんだ。

どうか、相方が見つかりますように。
そしたら、また二人で歩けるかもしれない。
土の匂いのする道も、雨上がりのアスファルトも――一緒に。

たとえ、次に履かれる日が来なくても。
僕は君の足元で、静かに寄り添っていた日々を、忘れない。
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