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風の精霊

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「これで、暫くは僕の守護がつくはずだ。」

額に口づけた後、そう言って、ナギはユナから離れました。

「ふぇ、なっ」

びっくりした、ユナは顔を赤くして尻餅をついてしまいました。

「ふふ。ユナはまだまだ、可愛らしいなぁリィンは、可愛げがなくなったね」

ニヤニヤとナギは笑い、リーンゼィルは微妙な顔でナギを見ていました。

「……」

ナギが笑っていると、どこからともなく遠吠えが響きました。
酷く荒れ狂うような、震えるような叫びに、一同は目を見合わせます。

「何事かな?リィン、わかる?」

ナギは、リィンを見つめます。
彼は静かにその長い耳を澄ませて目を閉じていました。

「…、東の方向。
何かに、黒い影に…、襲われているみたいです。
あっちは、精霊の泉の方だ」

「リーンゼィルさん、この遠吠えでわかるんですか??」

「あぁ、まぁな。 
精霊の泉はこことは別の光苔が群生している場所だ。それと風の精霊の巣でもある。ただ、ここに来る前にもいったように今日は大禍時だ。
精霊達が酷く荒れている。その上、魔の悪いことに
闇の神の侵入が頻繁になってきたせいで精霊石をわずかに汚されてしまった。だから、今は精霊達は殆ど話が通じないし近寄れば襲ってくる」

リィンの、話にナギは、ほんのすこし真面目な顔になりました。

「へぇ、そんな状態なのか。
なら、ボクも様子を見に行かないといけないな。
一応この世界の精霊の統括者だしね  」

「ナギ様、お一人では危ないです」

「ふふ、だから、君にも守護を与えたんじゃないか!」

にっこり微笑むとバシンと音が、たつとほどにリーンゼィルの背中を叩きました。

「頑張ってよ。
君たちは、さっきので一蓮托生。
ユナが死ねばリィンも死んじゃうからね」

「へ?」

リーンゼィルはなんのことかわからず、ぽかんと口を開きました。

「「はぁ!?」」

「え?あ?
なっ、何をしたんですか!?」

「君たちのおでこと頬にキスしたろう。
それを光の神が許すと??」

「うぐ、もしや光の神は嫉妬心の塊のようなお方ときいてます。
…、つまり、光の神の怒りで俺らは、呪われたと?」

「そう!そういうこと!流石リィン!!
いやぁ、光の神ってさ。
こういう時に、とっても便利なんだよ。ボクは自分の神通力を使わないから消費もないしね」

くすりと微笑む姿は妖艶で、見た目は天使なのにその笑みは悪魔のようでした。


「あ、悪魔だ」
「光の神子様って一体…」

二人して脱力してしまいました。

「しかし、ナギ様。俺は何度も言いますが此処を離れられません。
わかっているでしょう?意地悪神子様」

意地悪に仕返しするように不貞腐れたようにリーンゼィルは言いますが、ナギは意にも介していません。

「フフン。その理由は、ちゃんと一蓮托生のユナにも教えてあげなよ。
リィン。
僕は一足先にユナのお友だちの様子でも見てきてあげるよ。
まぁ、これは合格したユナへのサービスさ。じゃあね」

そう嵐のようにナギは消えてしまいました。

「マジかよ。あの人」

「リーンゼィルさん」

「…、光の神子様が向かったんだ。
光の早さだから俺らよりも遥かに早くお前の友達の元にむかったろう。
俺たちも追うぞ!」

走ろうとして、リーンゼィルは壁にぶつかりました。
高い鼻がぶつかった痛みで赤くなっています。


「痛っ!なんだこれ?!」

「どうしたんですか?」

「まさか!?…一蓮托生って!ユナこい」

そう言ってユナの腕を引っ張って引き寄せます。
それから、先ほど壁のあった場所に腕を伸ばしました。

「見えない壁が、なくなった」

「?どうしました?」

「あの性悪神子め!こい!フェイン!!」

「ひっ!?」
「いくぞ!ユナ!この呪いを解いてもらわないと!!」


「この子も大きい!怖いですよ!」

「落ち着けって!暴れたらフェインが走れない!しっかりしがみついとけよ!面倒見切れないからな!」

「ひっ、はっ、はい」

「フェイン!ルーナの遠吠えだった!そこへ向かってくれ!」

「おおおおん」

「よし!いい子だ。」

走る先は、全て崖のように切り立っています。普通の人間には歩けそうにもない悪路をお構いなしにフェインは駆け抜けていきます。
その間ユナは目を閉じてリーンゼィルに、すがりついていました。

「大丈夫だ!フェインは狼達一の走り屋だ!この程度の道なんて問題ない。
問題なのは!きたな!」

後ろから竜巻の渦が追いかけて来ていました。

「来やがった!」
リーンゼィルは叫びました。

「なっ、なんですか!あれ!」

ユナも興味本意で本の少しだけ覗くと後ろから巨大な龍が渦を巻きながら追いかけてきています。


「気にするな。風の精霊だ」

「精霊!?
ドラゴンじゃないですか!」

「?ドラゴン?まぁ、よく見てみろよ」
「?」

フェインに乗せられながらなのでスピードは、とても早いですがユナら目を凝らして彼を見つめます。
すると、よく見れば、それは、たくさんの精霊達がひしめき合った姿でした。

「風の精霊は、一体一体はか弱いがああやって束になると厄介なんだ!フェイン!!もっと複雑な林へ!一時しのぎにしかならんが、やつらを分解してやる!」

「ひっ!」

恐ろしくてユナはフェインの毛皮に頭を埋もれさせます。

『ぇ、そのまま震えてるだけでいいの?』

「え?ナギ?どこに?」

どこからともなくナギの声がします。


『いま君の額につけた呪いから声をかけているんだ。』

「そんなことできるんだ。ねぇ、僕はどうしたら?」
『君たちせっかくあげたのに僕の剣は? 』
「あっ!?」

『しょうがないな。
僕があげた剣呼び寄せて、こっちにこいって強く思うんだ』

「へ?」

『ボクはヒントをあげたよ。後は自分で考えるんだね』 

そう言ってナギの声は消えました。


「うう!どうすれ ば 」

ユナは、更に悩んでいました。

「フェイン!前だ!かわせ!」

「ぐっ!」


このままだと、リーンゼィルさんが危ない!!

「剣よ!こい!!」

ユナは離れてしまった剣に強く呼び掛けました。


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