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古の騎士
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ユナは、リーンゼィルが消えた後に首を傾げました。
──あれ?リーンゼィルさんと離れたのにナギ様の壁にぶつからない。
なんでだろう?
キョロキョロと辺りを見渡し手を伸ばしてみますが、透明な壁にぶつかることはありませんでした。
そんな彼にパーラが、目の前まできていました。
「さて、あなたも随分ぼろぼろですね。案内します。湯殿へ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。パーラさん」
ユナは丁寧にパーラに頭を下げました。しかし、その光景をシンやアンジェは困惑した顔で見ています。
「……おい、ユナ」
「ねぇ、ユナ、それとさっきのお兄さんもだけど、貴方たち、一体…誰と話ているの?」
奇怪なものをみたかのような2人の反応に、ユナは最初何を言われているかわかりませんでした。
「え?パーラさんだよ」
「パーラ?誰もいないぞ…」
「え?、二人とも何言ってるの??」
「いや、お前の方こそ何いってんだ?そこは、何にもないぞ」
「二人ともみえないの?
ほら、ここにいるピンク色の光」
ユナはパーラのいる辺りを指で指して必死に伝えようとしますが、二人は尚も不可思議なものを見るような目付きでした。
「……光?みえないけど」
「ユナ、なんのことだ」
困惑するユナを尻目にパーラは毅然とユナにいい放ちました。
「赤髪の子、彼らに私はみえません。
貴方とリーンゼィル様は特別だから見えてるのです」
「え?」
「ここは、交われない交差点にあります。
人と精霊は本来お互いを見ることが出来ません」
「でも、ボクはパーラさんが見えているし、パーラさんは僕も皆も見えてるでしょ?」
「ええ、私は通常の精霊とは異なります。
ですので、貴方の目を借りて彼らを見ているのです」
「え?そんなことできるんですか!?」
ユナは慌てて自分の目に触れてみます。それをみて、パーラはやれやれと呆れたように、ため息をつきました。
「いいえ、できませんよ。
少しだけからかってみたかっただけです。あまり気になさらないでください。あなたに私がみえる理由ですが、それは貴方の髪を赤に染めたニーチェの侵食によるものでしょう」
「ニーチェ……またニーチェ……か」
「おい!ユナ 今度はニーチェって、誰だよ」
シンは、ユナの肩を掴んでシンの方へと彼の目線を無理矢理シンへとむけます。
「あのね!二人とも聞いて!
ここに、リーンゼィルさんのお友達がいるんだ。」
そう言ってユナはパーラのいる方へ指を指します。
「友人ではございませんよ」
「?あ、そうなの?リーンゼィルさんの知り合いの人!」
あまりにも真っ直ぐな眸でユナがそういうので、シンは少しだけ困惑した目をユナにむけます。
「あ、ああ??ふざけてる訳じゃない……よな??」
「そんなわけないよ!非常時だもん!」
「わかったわかった。つまること言うなら、特別な人間にしか見えないし聞こえないパーラってやつがそこにいて何かをいってるんだな?」
ようやっとシンは、ユナの言葉を信じようとしていました。
先程までは、空中での酷い悲鳴を上げていた様に、更になにもない所に話をかけている姿。
きっと、一人ではぐれたときに気が触れてしまったのかも、と心配していたのです。しかし、彼の瞳はとても幻覚をみているものの目にはみえませんでした。だから、シンはユナを信じることにしました。
「うん!」
「ふむ、ユナは……元々封印の力があったから見えてるのかもしれないな。
なら、パーラさんに伝えてほしい。弟のことありがとうと、それと、直ぐにでも俺は発ちたいと」
「え!何言ってるのさ、シン!」
「この状態になったとはいえ、大樹の万能薬を手に入れる必要があるだろ?こんなところでのんびりしている時間はない。お前らは危ないからな。ここで待っていてくれ。リノを頼むよ」
シンは今にも外に飛び出して行きそうでしたが、
それを止めるように、狼達が出口に立ち並び扉が消えていきました
「赤髪の子。彼に伝えてくださいませ。
どういたしまして。
ですが、あなた方は、何もわかっておられませんね。
今宵は、禍時、外に出れば風の精霊に切り裂かれるだけ
私はリーンゼィル様にあなた方を任されたのです。出ていかれては困ります」
「ありがとう!パーラさん。
わかった、伝えてみるよ。
えっとね、シン!パーラさんが、どういたしましてと、それと、その今は禍時だから精霊に切り裂かれるだけだって
あと、リーンゼィルさんに任されたから出ていかれたら困るって!」
「出口を塞ぐとは……それに、禍時?なんだそれ?」
「私も、あちこちに修行にいくけどそんな言葉聞いたことないわ」
「アンジェでも聞いたことないんだ……」
「それは、知らなくて当然です。禍時は大樹の根の森にしか起こりません。禍時は風の精霊の力が最も高ぶる時。そして、この時に、森は不必要な物を根こそぎ浄化するのです。
この時ばかりは、森の守り人達も外に出るような無謀な真似はいたしません。リーンゼィル様の命令故、時が過ぎるまで大人しく休養なさいな」
「えっと、大樹の森の人も絶対に外に出ない日だからリーンゼィルさんが戻るまでゆっくりしてろって。」
「………正直今すぐにでも、飛び出して行きたいが、出口が消えた以上俺にはどうしようもないか……」
「シン!そんなに落ち込まないで。
母さんを助けるために外で精霊にシンが殺されてしまったら絶対母さん悲しむもん。だから、お願い、シン」
ユナはシンの手を握り、彼の目をしっかりと見つめます。
「そうね。現地の人の言葉を蔑ろにして大ケガする人私も見たことあるわ。焦る気持ちもわかるけど、今は大人しく待ちましょう」
ユナは意外そうな顔でアンジェを見つめました。
「なによ。ユナ」
アンジェが、不服そうな目でユナを睨みます。
「い、いや、別になにもないよ。
そ、そういえばリーンゼィルさんは、どこにいったんですか?ナギにかけられた呪いで確かそんなに遠くにいけないはずのに」
「ナギ……?あぁ、光の御子様ですね。
成る程。あの方ならそういう真似もできましょう。
ですが、ここはリィン様の領域。
この場では例え女神様も影響を及ぼすことはできません」
「リィン様?」
「女神様が、唯一側にあることを赦された古の騎士です。ここは、彼が自ら作り出した隠れ家のようなものなのです」
──あれ?リーンゼィルさんと離れたのにナギ様の壁にぶつからない。
なんでだろう?
キョロキョロと辺りを見渡し手を伸ばしてみますが、透明な壁にぶつかることはありませんでした。
そんな彼にパーラが、目の前まできていました。
「さて、あなたも随分ぼろぼろですね。案内します。湯殿へ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。パーラさん」
ユナは丁寧にパーラに頭を下げました。しかし、その光景をシンやアンジェは困惑した顔で見ています。
「……おい、ユナ」
「ねぇ、ユナ、それとさっきのお兄さんもだけど、貴方たち、一体…誰と話ているの?」
奇怪なものをみたかのような2人の反応に、ユナは最初何を言われているかわかりませんでした。
「え?パーラさんだよ」
「パーラ?誰もいないぞ…」
「え?、二人とも何言ってるの??」
「いや、お前の方こそ何いってんだ?そこは、何にもないぞ」
「二人ともみえないの?
ほら、ここにいるピンク色の光」
ユナはパーラのいる辺りを指で指して必死に伝えようとしますが、二人は尚も不可思議なものを見るような目付きでした。
「……光?みえないけど」
「ユナ、なんのことだ」
困惑するユナを尻目にパーラは毅然とユナにいい放ちました。
「赤髪の子、彼らに私はみえません。
貴方とリーンゼィル様は特別だから見えてるのです」
「え?」
「ここは、交われない交差点にあります。
人と精霊は本来お互いを見ることが出来ません」
「でも、ボクはパーラさんが見えているし、パーラさんは僕も皆も見えてるでしょ?」
「ええ、私は通常の精霊とは異なります。
ですので、貴方の目を借りて彼らを見ているのです」
「え?そんなことできるんですか!?」
ユナは慌てて自分の目に触れてみます。それをみて、パーラはやれやれと呆れたように、ため息をつきました。
「いいえ、できませんよ。
少しだけからかってみたかっただけです。あまり気になさらないでください。あなたに私がみえる理由ですが、それは貴方の髪を赤に染めたニーチェの侵食によるものでしょう」
「ニーチェ……またニーチェ……か」
「おい!ユナ 今度はニーチェって、誰だよ」
シンは、ユナの肩を掴んでシンの方へと彼の目線を無理矢理シンへとむけます。
「あのね!二人とも聞いて!
ここに、リーンゼィルさんのお友達がいるんだ。」
そう言ってユナはパーラのいる方へ指を指します。
「友人ではございませんよ」
「?あ、そうなの?リーンゼィルさんの知り合いの人!」
あまりにも真っ直ぐな眸でユナがそういうので、シンは少しだけ困惑した目をユナにむけます。
「あ、ああ??ふざけてる訳じゃない……よな??」
「そんなわけないよ!非常時だもん!」
「わかったわかった。つまること言うなら、特別な人間にしか見えないし聞こえないパーラってやつがそこにいて何かをいってるんだな?」
ようやっとシンは、ユナの言葉を信じようとしていました。
先程までは、空中での酷い悲鳴を上げていた様に、更になにもない所に話をかけている姿。
きっと、一人ではぐれたときに気が触れてしまったのかも、と心配していたのです。しかし、彼の瞳はとても幻覚をみているものの目にはみえませんでした。だから、シンはユナを信じることにしました。
「うん!」
「ふむ、ユナは……元々封印の力があったから見えてるのかもしれないな。
なら、パーラさんに伝えてほしい。弟のことありがとうと、それと、直ぐにでも俺は発ちたいと」
「え!何言ってるのさ、シン!」
「この状態になったとはいえ、大樹の万能薬を手に入れる必要があるだろ?こんなところでのんびりしている時間はない。お前らは危ないからな。ここで待っていてくれ。リノを頼むよ」
シンは今にも外に飛び出して行きそうでしたが、
それを止めるように、狼達が出口に立ち並び扉が消えていきました
「赤髪の子。彼に伝えてくださいませ。
どういたしまして。
ですが、あなた方は、何もわかっておられませんね。
今宵は、禍時、外に出れば風の精霊に切り裂かれるだけ
私はリーンゼィル様にあなた方を任されたのです。出ていかれては困ります」
「ありがとう!パーラさん。
わかった、伝えてみるよ。
えっとね、シン!パーラさんが、どういたしましてと、それと、その今は禍時だから精霊に切り裂かれるだけだって
あと、リーンゼィルさんに任されたから出ていかれたら困るって!」
「出口を塞ぐとは……それに、禍時?なんだそれ?」
「私も、あちこちに修行にいくけどそんな言葉聞いたことないわ」
「アンジェでも聞いたことないんだ……」
「それは、知らなくて当然です。禍時は大樹の根の森にしか起こりません。禍時は風の精霊の力が最も高ぶる時。そして、この時に、森は不必要な物を根こそぎ浄化するのです。
この時ばかりは、森の守り人達も外に出るような無謀な真似はいたしません。リーンゼィル様の命令故、時が過ぎるまで大人しく休養なさいな」
「えっと、大樹の森の人も絶対に外に出ない日だからリーンゼィルさんが戻るまでゆっくりしてろって。」
「………正直今すぐにでも、飛び出して行きたいが、出口が消えた以上俺にはどうしようもないか……」
「シン!そんなに落ち込まないで。
母さんを助けるために外で精霊にシンが殺されてしまったら絶対母さん悲しむもん。だから、お願い、シン」
ユナはシンの手を握り、彼の目をしっかりと見つめます。
「そうね。現地の人の言葉を蔑ろにして大ケガする人私も見たことあるわ。焦る気持ちもわかるけど、今は大人しく待ちましょう」
ユナは意外そうな顔でアンジェを見つめました。
「なによ。ユナ」
アンジェが、不服そうな目でユナを睨みます。
「い、いや、別になにもないよ。
そ、そういえばリーンゼィルさんは、どこにいったんですか?ナギにかけられた呪いで確かそんなに遠くにいけないはずのに」
「ナギ……?あぁ、光の御子様ですね。
成る程。あの方ならそういう真似もできましょう。
ですが、ここはリィン様の領域。
この場では例え女神様も影響を及ぼすことはできません」
「リィン様?」
「女神様が、唯一側にあることを赦された古の騎士です。ここは、彼が自ら作り出した隠れ家のようなものなのです」
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