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湯殿の魔物
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切り立った崖の上の道は一歩踏み外せば底が見えない。
一体なんでこんな道を歩かされてるんだ俺は?
そんな事を考えながらシンは細い細い道をユナを背負って歩きます。
変な仮面のお陰で見えるが、外せば真っ白な湯気のせいで道がみえない。
どうやら、とてもとても厄介な所に連れてこられたようだ。
何が湯殿だ。
こんなところ落ちたら風呂どころの話じゃない。
一歩踏み間違えれば文字通り あの世行きだ。
『えぇ、落ちればその通りになりますね』
のんきなジーンの声にシンは珍しく眉間に皺を寄せました。
「俺の心を読むな」
「シン?どうしたの?」
「ユナ、気にするな」
げんなりとしながらシンはまた一歩歩きます。湯気の影響で、足元は摩擦が少なく下手をすれば滑って落ちてしまう上に、前を見ればあちらこちららに分かれ道がありますので、間違えてしまえば、この細い細い道をまた戻らねばなりません。
苦々しそうにシンはジーンを睨みます。
なんせ彼は飛べるのでこんな道など関係ありません。
そんな案内人はシンの不機嫌などお構いに時折彼を挑発するように、そんなスピードではいつまで経ってもたどり着けませんよとばかりに回りをぐるぐると回っているのです。
不満もたまるというもの。
それに、ユナは不安そうにシンの様子を伺いそっと彼の肩を叩きました。
「シン、僕降りるよ」
「ダメだ。ユナ。ここは俺に任せろ」
「う、でも」
「ダメなものはダメだ」
「わ、わかったよ」
シンの覇気に当てられてユナは、外していた腕を再度シンの背中に回します。
今日は、この子を一度見失ってしまった。
大事な弟なのに、なんて失態だ。
それに、こんなところでおろして、もし足を滑らせてしまったら。
そんな最悪な想像をしてシンはその想像を打ち払うようにジーンを睨みながら前へ前へと進んでいきます。
「おい、ジーンっだけ?目的地には後どれくらいなんだ?」
『そうでございますね。後もう少しでございます』
「そうか、わかった」
頷くとシンはまた先の見えない霧の道をあゆんでいきます。
ふーん、それにしてもこの青年。
なんでそんなに頑張ってるのかな?一緒にその少年と歩けば良いのに。
変わった人間だ。
あぁ、それにしてもパーラ様はなぜこっちに案内したのだろう?
普通に転送すれば直接湯殿にいけるのに。なぜ?
ジーンは、そんな事を思いながらそれでも、何本も別れた道を案内し続けました。そうして、ようやく見えて来たのは湖のように広い温泉。
「ここか?」
『ええ、ですが、おかしいですね?』
ジーンはシンとユナの回りをくるりと回ります。
「どうしたの?」
『いえ、本来たどり着く場所と異なるのです』
「お前まさか道をまちがた?」
呆れたように、シンが半目でジーンをにらみます。
『いいえ、合ってはいるのです。
ここにたどり着く道以外は全て崖でございますので。崖から落ちますから』
「!?」
「そ、そんな危険な道を歩かされてたの!?シン!!」
「かなり滑る地面だった。お前が落ちたら困るだろ。」
「でも、」
『まぁ、もう過ぎたことですので、おや??』
ジーンが不思議そうに遠くを覗きます。
それに気がついたユナはジーンの示す方向に首を動かして、それから、すぐに慌てるようにシンの肩をゆらします。
「シン!シン、あれ!」
「どうした?」
ユナの指差す方向に大きな影がみえます。
「なんだ?あれ?」
『!!??なんでここにいるんだ?』
ジーンは、心底驚いた声で警戒の音を更に高ぶらせて鳴り響かせます。
それに気がついたのか、その大きな影はのそりのそりとこちらに泳いできます。
「おい、ジーン。どうした?」
『ひっ、』
ジーンは、ひどく怯え喉がつかえたような変な悲鳴を、あげます。
「どうやらアイツは敵のようだな」
『なんでここに!?ここはリィン様の結界の中なのに!なんで!!』
大きな波をたてながら、それはすぐ近くまであっという間に泳ぎきり姿を現しました。
それは、巨大な蛇。
青い鱗に大きな牙。それに鋭く大きな赤い瞳。
「おい!ジーン!落ち着け!こいつはやばいのか」
シンの声にジーンは、一度大きく息をはきます。
『そうですね。やばいです。
それに彼は腹でも‥減ってるのかもしれません‥‥‥
ですぎ、僕も食べられたくはない。お二人とも戦えます?』
シンはユナをおろして身構えます。
手持ちの武器はパーラの元にあるため、丸腰です。
「丸腰でこいつとってことか?」
『その辺りは何とかします。来ますよ』
凄まじい威圧感が、辺りをつつみます。
「ユナ!下がっていろ!」
『シャアアァ!!』
巨大な蛇が牙を向きシン達に襲いかかってきました。
『リィン様の領域でこのようなことしたくありませんが!致し方ありませんが、光よ』
ジーンが叫ぶと閃光が蛇の目を焼きます。
不意打ちに叫び暴れ狂うせいで湯が溢れ津波のようにユナ達に襲いかかってきました。
『空へ!』
ジーンの声にあわせて淡い光に包まれると、フワリとシンとユナは空へと浮き上がりました。
「おまえ!こんなこと出きるなら最初からしろよ!!」
シンが本気で怒鳴ります。何せさっきまで切り立った崖の小路を歩かされていたのですから、当然かもしれません。
『落ちそうになったらそのつもりでしたよ』
「ったく、調子の良いやつめ」
「でも、どうやって戦う?」
剣はあの広間に置いたままだし。
リーンゼィルさん無しには持ち上げることさえ出来ない。
あれ?いや。出きるかも。
ユナは、腕を天に掲げます。
『どうしました?』
「ユナ?」
二人が不思議そうな顔でユナをみます。
構わずにユナは叫びました。
「剣よ!こい!!」
一体なんでこんな道を歩かされてるんだ俺は?
そんな事を考えながらシンは細い細い道をユナを背負って歩きます。
変な仮面のお陰で見えるが、外せば真っ白な湯気のせいで道がみえない。
どうやら、とてもとても厄介な所に連れてこられたようだ。
何が湯殿だ。
こんなところ落ちたら風呂どころの話じゃない。
一歩踏み間違えれば文字通り あの世行きだ。
『えぇ、落ちればその通りになりますね』
のんきなジーンの声にシンは珍しく眉間に皺を寄せました。
「俺の心を読むな」
「シン?どうしたの?」
「ユナ、気にするな」
げんなりとしながらシンはまた一歩歩きます。湯気の影響で、足元は摩擦が少なく下手をすれば滑って落ちてしまう上に、前を見ればあちらこちららに分かれ道がありますので、間違えてしまえば、この細い細い道をまた戻らねばなりません。
苦々しそうにシンはジーンを睨みます。
なんせ彼は飛べるのでこんな道など関係ありません。
そんな案内人はシンの不機嫌などお構いに時折彼を挑発するように、そんなスピードではいつまで経ってもたどり着けませんよとばかりに回りをぐるぐると回っているのです。
不満もたまるというもの。
それに、ユナは不安そうにシンの様子を伺いそっと彼の肩を叩きました。
「シン、僕降りるよ」
「ダメだ。ユナ。ここは俺に任せろ」
「う、でも」
「ダメなものはダメだ」
「わ、わかったよ」
シンの覇気に当てられてユナは、外していた腕を再度シンの背中に回します。
今日は、この子を一度見失ってしまった。
大事な弟なのに、なんて失態だ。
それに、こんなところでおろして、もし足を滑らせてしまったら。
そんな最悪な想像をしてシンはその想像を打ち払うようにジーンを睨みながら前へ前へと進んでいきます。
「おい、ジーンっだけ?目的地には後どれくらいなんだ?」
『そうでございますね。後もう少しでございます』
「そうか、わかった」
頷くとシンはまた先の見えない霧の道をあゆんでいきます。
ふーん、それにしてもこの青年。
なんでそんなに頑張ってるのかな?一緒にその少年と歩けば良いのに。
変わった人間だ。
あぁ、それにしてもパーラ様はなぜこっちに案内したのだろう?
普通に転送すれば直接湯殿にいけるのに。なぜ?
ジーンは、そんな事を思いながらそれでも、何本も別れた道を案内し続けました。そうして、ようやく見えて来たのは湖のように広い温泉。
「ここか?」
『ええ、ですが、おかしいですね?』
ジーンはシンとユナの回りをくるりと回ります。
「どうしたの?」
『いえ、本来たどり着く場所と異なるのです』
「お前まさか道をまちがた?」
呆れたように、シンが半目でジーンをにらみます。
『いいえ、合ってはいるのです。
ここにたどり着く道以外は全て崖でございますので。崖から落ちますから』
「!?」
「そ、そんな危険な道を歩かされてたの!?シン!!」
「かなり滑る地面だった。お前が落ちたら困るだろ。」
「でも、」
『まぁ、もう過ぎたことですので、おや??』
ジーンが不思議そうに遠くを覗きます。
それに気がついたユナはジーンの示す方向に首を動かして、それから、すぐに慌てるようにシンの肩をゆらします。
「シン!シン、あれ!」
「どうした?」
ユナの指差す方向に大きな影がみえます。
「なんだ?あれ?」
『!!??なんでここにいるんだ?』
ジーンは、心底驚いた声で警戒の音を更に高ぶらせて鳴り響かせます。
それに気がついたのか、その大きな影はのそりのそりとこちらに泳いできます。
「おい、ジーン。どうした?」
『ひっ、』
ジーンは、ひどく怯え喉がつかえたような変な悲鳴を、あげます。
「どうやらアイツは敵のようだな」
『なんでここに!?ここはリィン様の結界の中なのに!なんで!!』
大きな波をたてながら、それはすぐ近くまであっという間に泳ぎきり姿を現しました。
それは、巨大な蛇。
青い鱗に大きな牙。それに鋭く大きな赤い瞳。
「おい!ジーン!落ち着け!こいつはやばいのか」
シンの声にジーンは、一度大きく息をはきます。
『そうですね。やばいです。
それに彼は腹でも‥減ってるのかもしれません‥‥‥
ですぎ、僕も食べられたくはない。お二人とも戦えます?』
シンはユナをおろして身構えます。
手持ちの武器はパーラの元にあるため、丸腰です。
「丸腰でこいつとってことか?」
『その辺りは何とかします。来ますよ』
凄まじい威圧感が、辺りをつつみます。
「ユナ!下がっていろ!」
『シャアアァ!!』
巨大な蛇が牙を向きシン達に襲いかかってきました。
『リィン様の領域でこのようなことしたくありませんが!致し方ありませんが、光よ』
ジーンが叫ぶと閃光が蛇の目を焼きます。
不意打ちに叫び暴れ狂うせいで湯が溢れ津波のようにユナ達に襲いかかってきました。
『空へ!』
ジーンの声にあわせて淡い光に包まれると、フワリとシンとユナは空へと浮き上がりました。
「おまえ!こんなこと出きるなら最初からしろよ!!」
シンが本気で怒鳴ります。何せさっきまで切り立った崖の小路を歩かされていたのですから、当然かもしれません。
『落ちそうになったらそのつもりでしたよ』
「ったく、調子の良いやつめ」
「でも、どうやって戦う?」
剣はあの広間に置いたままだし。
リーンゼィルさん無しには持ち上げることさえ出来ない。
あれ?いや。出きるかも。
ユナは、腕を天に掲げます。
『どうしました?』
「ユナ?」
二人が不思議そうな顔でユナをみます。
構わずにユナは叫びました。
「剣よ!こい!!」
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