君とボクの交われない交差点 ~始まりを求める僕と終わりを求める君~

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怪我人と

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リーンゼィルに促されるままアンジェは、リノのそばまで音を立てないようにそっと近づき、覗き込みました。シーツから覗くリノの顔色は血を失ったせいで白く、その顔色に言い様の無い不安な感覚がアンジェに走ります。
慌てて、胸に手を当てようとしますが、それは、リーゼィルに止められと辛くも押さえました。
じっと、観察しているとリノの呼吸で胸が動き確かに生きているのを理解出来ると不安はほんの少しだけ安堵に変わりました。

「本当に生きてる‥‥よかった。
お兄さん、ありがとうございます。本当になんてお礼をしたらいいか」

「別に大したことはしていない。
俺はただ友人の願いで動いているだけだから気にしなくていい」

「いえ、何かお礼を」

アンジェが、リーンゼィルに手を伸ばしました。
しかし、それを遮るように大きな声が部屋中に響きます。
リノがベッドから無理矢理立ち上がってこちらを指差してさけびます。

「アンジェから、離れろよ!!っていうか!なんだこれ滅茶苦茶いってぇ!」

「リノ!!こら!あんまり動かないの!」

アンジェは、殴って沈めようとしましたが、リーンゼィルに触れることを止められていたことを思い出し寸前でとまりました。
止まった拳にリノは冷や汗をダラダラ流しながら、それでも、リーンゼィルに向かって睨み付け叫び続けました。

「おい、ええっと。あんた!あんまりアンジェに良い顔すんな!!」

「ん?いや、俺は、そんなつもりはないが。
お前は、もう動いて大丈夫なのか?」

──普通の人間ならまだ動くのは厳しいんだが、あの薬が上手くいったのかな?

「えっ、あ、うん 」

アンジェは、触れないように細心の注意をしやながら、そっとリノに耳打ちします。

「あんた、そこのお兄さんに助けて貰ったんだからちゃんとお礼言いなさおよ」

「え!?あ、そなの?」

アンジェが無言の圧力をかけ、それに屈するようにリノはペコリと頭をさげました。

「っか、はい。
えっと‥‥‥‥すんません。
助かりました‥‥正直あのまま死ぬんだと‥‥でも、その、あの‥‥‥‥‥‥」

「う、ぅうぅ」

リノはアンジェの方をじーっと見つめて、それからリーンゼィルになんとか言おうとますが、口がパクパクするだけです。
それに気がついたリーゼィルはニンマリと微笑みます。
その表情はどこか達観しており、その若い風貌に見合わないような微笑みにリノは戸惑いをかくせませんが、想いが通じたことはわかりました。

「あ、なるほど。そういうことか」

「あ、アンジェには言わないで‥‥‥‥ください‥‥」
「」

「んー、そうだな。少し考えるな」

「ええ!?」

少しだけ意地悪そうに、彼はわらい、リノは頬に血が昇っているのが、わかり慌てて誤魔化すように起き上がります。


「まぁまぁ、悪いようにはしないさ。どうやら傷ももう大丈夫そうだな」
「あ、はい。なんとか。痛みも動かなければ殆んどないです」

「それなら、もう暫くすればそれも収まるさ」

───まぁ、多分だが。
大人ならもう少し掛かりそうだがやはり子供は早いな。

「あの、そういえばマガトキでしたっけ??この嵐。
それって一体どれくらいで収まるんですか?」

アンジェはリーンゼィルに問いかけます。

「そうだな……通常なら1日だが、今回は大禍時だからな。
最低でも1週間はかかる」

「えっ!?そんなに、そんなに待ってられない!ユナのお母さんが私達の帰りを待ってるの!リーンゼィルさん!外に出してください!」

「‥‥‥‥いや、まぁ、お前たちはまが禍時さえ過ぎれば村へ帰らせるつもりだが」

‥‥‥さて、どうしたものかな?
正直ユナの村。
この禍時も普通は、よっぽどの障りがなければ起きない。
大禍時なんてもっと強烈な、そう神程の力をもった障りが現れない限りはおきないんだがなぁ。
村まで行くより、治まるまでこの地に留まらせる方が安全なんだが、納得は難しいかもな。



『リーンゼィル様‥‥』

パーラの声が天から、聞こえてきました。
どうやら、準備ができたようです。

「できた?」

『はい、リーンゼィル様、泉の支度ができました』

「そっか。じゃあ、アンジェちゃん行こうか」

パーラの声が聞こえない
「え?どこですか?」

「が、呼んでる。聖なる泉があるから、そこでその穢れを御祓いでもらう。
そこの少年の傷は塞がっているが障ると下手したら傷口が開きかねない。」
「それは、困ります!わかりました」

「ってわけで、彼女ちょっと借りるな」
「な、なら、俺も行く!!」

慌てて立ち上がろうとシンはベッドから降りようとしますが、リーンゼィルが手で制します。 それでも降りようとする、シンのおでこにデコピン。
軽い音でしたが、シンは痛みにのたうちます

「なにもしないし大丈夫だっての。基本的に女の子の精霊が手伝ってくれるからな。
ほら、ちゃんと寝ときな。じゃないとばらしちゃうぞ」

「は、はい」

「リノ、あんたデコピンだけなのに情けないなぁ。もう。見してみなよ」

「え、あ、うん」

そっと額に手を伸ばそうとするアンジェを慌ててリーゼィルはとめます。

「おっと!お嬢ちゃん!まだ障りを落としてないから少年に触ったらだめだよ」
「あっ!はい、危ない」
「うー」
「唸るなって、仕方ないだろ?傷口開いたら次は助けてやれる保証がない。すぐに済むから寝て待ってな」

「ちぇ」

むくれながリノは大人しくベッドに横たわりました。


一方その頃のユナ達はというと。

『あと少しですよー』

そういってふわふわと、煽るように踊る精霊を目の前にしながら、シンは、ユナを背負って必死で崖のような道を走っていました。
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