7 / 50
序章
第2話(2)あの方のお陰
しおりを挟む
「しかし……今更ながら異様な光景だな」
瘦身の男性は恐竜たちが平然と歩きまわる、竜京の町並みを見て呟く。
「気候変動などの様々な要因が積み重なり、この北陸地方を中心に恐竜が“復活”しました」
「様々な要因っていうのはなんだよ?」
小柄な男性に大柄な男性が尋ねる。小柄な男性はボサボサの青みがかった髪を撫でまわしながら答える。
「う~ん……それが……良く分からないのです……」
「なんだよそれ、その白衣は飾りか?」
「衣服で謎が分かれば喜んでレオタードだって着ますよ」
「見たかねえよ、お前さんのレオタードなんか」
「研究は進めていますよ」
「金の無駄遣いだなんだ言われているぜ?」
「研究にはお金がつきものなのです」
「目に見える結果を出してもらわねえと、こちとら戦費調達にも苦労してんだ」
「戦線をいたずらに拡大させすぎなのでは?」
「俺に言わず、『あの方』に申し上げろよ」
大柄な男性が両手を広げる。小柄な男性がため息をつく。
「言って聞いてくれるような方ではありません……」
「分かってんじゃねえか」
大柄な男性がくくっと笑う。小柄な男性が頭を抑える。
「頭が痛くなります……」
瘦身の男性が口を開く。
「とはいえ、あの方がいなければ、我々は他の道州の侵攻によってあっけなく蹂躙されていたことだろう」
「ええ……」
「元々、十の道州の中でも最弱と言われていた『北信越州』……さらに新潟県と長野県を奪われ、北陸三県のみの『北陸道』になった時、皆が最悪の未来を想定した」
「……」
「あの方の登場により、我々は活力を取り戻した」
「色々な意味でな」
大柄な男性が笑みを浮かべながら呟く。瘦身の男性は無視する。
「……あの圧倒的なカリスマ性と行動力、決断力、そしてなにより強さに引っ張られ、我々はまた立ち上がることが出来た」
「カリスマ性、行動力、決断力、強さ……あ、あと美貌な」
指折り数えながら話を聞いていた大柄な男性が一言付け加えてくるが、瘦身の男性はまたも無視をした。
「我々は新潟県と長野県を取り戻し、さらに山梨県を併合、新たに『北陸甲信越州』となって生まれ変わった! それも全てあの方のお陰である!」
「それは分かっているつもりですよ」
小柄な男性が頷く。
「もちろん、突如としてこの地上に復活した恐竜たちを手なずけ、調教、さらに大量繁殖させることが出来たのは、研究者諸君の不断の努力があってこそだ」
「ああ、ご理解いただけて嬉しいですよ……」
「我々は強力無比な生物兵器を多数手に入れた。あの方とこれらの恐竜たちがいれば恐れるものはなにもない!」
瘦身の男性が力強く拳を握りしめる。大柄な男性が口を開く。
「……とは言ってもよ~」
「ん?」
「油断は大敵だぜ?」
「それももちろん分かっている。決意を示したまでだ」
「あ、そう、それなら良いんだけどよ……」
「……貴様、『あの地』で何を見た?」
「報告は逐一受けているんだろう?」
「データだけでは分からないこともある」
「そうか……まあ、それについては遅かれ早かれ知ることになると思うぜ」
「?」
瘦身の男性が首を傾げる。小柄な男性が呟く。
「……着きました」
男性たちは竜京の街の中心部から少し離れた巨大な施設に到着する。男性たちは恐竜から降りると、その施設の中に入る。大柄な男性が周囲を見回す。
「はあ~まったくご立派な施設で……」
「それで? 急ぎの用とはなんだ?」
「それは……僕の研究室についてからお話ししましょう」
「ははっ、ここに来て焦らすね~」
大柄な男性が笑う。
「……こちらです」
巨大な施設の奥の方まで入り、小柄な男性がある部屋を指し示す。
「うむ」
「どうぞお入りください」
「失礼する」
「お邪魔しま~す」
男性たちが部屋に入る。
「おう、来たか!」
「なっ⁉」
「元気そうだな、お前ら!」
広い部屋の中心に立っていた金髪碧眼の女性が振り返る。動物の毛皮で出来た茶色系統のビキニを纏っただけの極めて露出度が高い恰好である。振り返った際に、セミロングの髪がなびくと同時にその豊満な肉体が揺れる。瘦身の男性は慌てて視線を逸らしながら、小柄な男性に小声で耳打ちする。
「か、閣下がおられるなら、それを早く言え!」
「い、いや、僕も知りませんでしたよ!」
小柄な男性が小声で言い返す。大柄な男性がもみ手をする。
「いや~閣下におかれましては本日も美しく……」
「おう、『イロ』! 今回の活躍も聞いているぜ!」
「あ、ありがたき幸せです……」
「ふむ……」
イロと呼ばれた大柄な男性がうやうやしく頭を下げる。女性がそこにつかつかと近づき、イロの顎をクイっと上げる。
「!」
「良い色のレンズだな、似合っているぜ……」
「あ、ありがとうごさいます!」
「『ダテ』!」
「は、はい!」
「う~ん……」
女性がずかずかと近づいてくる。ダテと呼ばれた痩身の男性は思わず後ずさりして、壁際まで追い込まれる。女性はダテの顔の真横の壁にドンと手を置く。
「‼」
「相変わらず良いフレームだな……センスを感じるぜ」
「あ、ありがとうございます……」
「『マル』!」
「あ、はい!」
「ふ~ん……」
女性は小柄な男性に近づき、頭をポンポンとする。マルと呼ばれた小柄な男性は驚く。
「⁉」
「レンズの縁の色変えたな、かわいいぜ……」
「あ、ど、どうもありがとうございます……」
「さてと……実験とやらを始めろ!」
女性が高々と右腕を掲げる。
瘦身の男性は恐竜たちが平然と歩きまわる、竜京の町並みを見て呟く。
「気候変動などの様々な要因が積み重なり、この北陸地方を中心に恐竜が“復活”しました」
「様々な要因っていうのはなんだよ?」
小柄な男性に大柄な男性が尋ねる。小柄な男性はボサボサの青みがかった髪を撫でまわしながら答える。
「う~ん……それが……良く分からないのです……」
「なんだよそれ、その白衣は飾りか?」
「衣服で謎が分かれば喜んでレオタードだって着ますよ」
「見たかねえよ、お前さんのレオタードなんか」
「研究は進めていますよ」
「金の無駄遣いだなんだ言われているぜ?」
「研究にはお金がつきものなのです」
「目に見える結果を出してもらわねえと、こちとら戦費調達にも苦労してんだ」
「戦線をいたずらに拡大させすぎなのでは?」
「俺に言わず、『あの方』に申し上げろよ」
大柄な男性が両手を広げる。小柄な男性がため息をつく。
「言って聞いてくれるような方ではありません……」
「分かってんじゃねえか」
大柄な男性がくくっと笑う。小柄な男性が頭を抑える。
「頭が痛くなります……」
瘦身の男性が口を開く。
「とはいえ、あの方がいなければ、我々は他の道州の侵攻によってあっけなく蹂躙されていたことだろう」
「ええ……」
「元々、十の道州の中でも最弱と言われていた『北信越州』……さらに新潟県と長野県を奪われ、北陸三県のみの『北陸道』になった時、皆が最悪の未来を想定した」
「……」
「あの方の登場により、我々は活力を取り戻した」
「色々な意味でな」
大柄な男性が笑みを浮かべながら呟く。瘦身の男性は無視する。
「……あの圧倒的なカリスマ性と行動力、決断力、そしてなにより強さに引っ張られ、我々はまた立ち上がることが出来た」
「カリスマ性、行動力、決断力、強さ……あ、あと美貌な」
指折り数えながら話を聞いていた大柄な男性が一言付け加えてくるが、瘦身の男性はまたも無視をした。
「我々は新潟県と長野県を取り戻し、さらに山梨県を併合、新たに『北陸甲信越州』となって生まれ変わった! それも全てあの方のお陰である!」
「それは分かっているつもりですよ」
小柄な男性が頷く。
「もちろん、突如としてこの地上に復活した恐竜たちを手なずけ、調教、さらに大量繁殖させることが出来たのは、研究者諸君の不断の努力があってこそだ」
「ああ、ご理解いただけて嬉しいですよ……」
「我々は強力無比な生物兵器を多数手に入れた。あの方とこれらの恐竜たちがいれば恐れるものはなにもない!」
瘦身の男性が力強く拳を握りしめる。大柄な男性が口を開く。
「……とは言ってもよ~」
「ん?」
「油断は大敵だぜ?」
「それももちろん分かっている。決意を示したまでだ」
「あ、そう、それなら良いんだけどよ……」
「……貴様、『あの地』で何を見た?」
「報告は逐一受けているんだろう?」
「データだけでは分からないこともある」
「そうか……まあ、それについては遅かれ早かれ知ることになると思うぜ」
「?」
瘦身の男性が首を傾げる。小柄な男性が呟く。
「……着きました」
男性たちは竜京の街の中心部から少し離れた巨大な施設に到着する。男性たちは恐竜から降りると、その施設の中に入る。大柄な男性が周囲を見回す。
「はあ~まったくご立派な施設で……」
「それで? 急ぎの用とはなんだ?」
「それは……僕の研究室についてからお話ししましょう」
「ははっ、ここに来て焦らすね~」
大柄な男性が笑う。
「……こちらです」
巨大な施設の奥の方まで入り、小柄な男性がある部屋を指し示す。
「うむ」
「どうぞお入りください」
「失礼する」
「お邪魔しま~す」
男性たちが部屋に入る。
「おう、来たか!」
「なっ⁉」
「元気そうだな、お前ら!」
広い部屋の中心に立っていた金髪碧眼の女性が振り返る。動物の毛皮で出来た茶色系統のビキニを纏っただけの極めて露出度が高い恰好である。振り返った際に、セミロングの髪がなびくと同時にその豊満な肉体が揺れる。瘦身の男性は慌てて視線を逸らしながら、小柄な男性に小声で耳打ちする。
「か、閣下がおられるなら、それを早く言え!」
「い、いや、僕も知りませんでしたよ!」
小柄な男性が小声で言い返す。大柄な男性がもみ手をする。
「いや~閣下におかれましては本日も美しく……」
「おう、『イロ』! 今回の活躍も聞いているぜ!」
「あ、ありがたき幸せです……」
「ふむ……」
イロと呼ばれた大柄な男性がうやうやしく頭を下げる。女性がそこにつかつかと近づき、イロの顎をクイっと上げる。
「!」
「良い色のレンズだな、似合っているぜ……」
「あ、ありがとうごさいます!」
「『ダテ』!」
「は、はい!」
「う~ん……」
女性がずかずかと近づいてくる。ダテと呼ばれた痩身の男性は思わず後ずさりして、壁際まで追い込まれる。女性はダテの顔の真横の壁にドンと手を置く。
「‼」
「相変わらず良いフレームだな……センスを感じるぜ」
「あ、ありがとうございます……」
「『マル』!」
「あ、はい!」
「ふ~ん……」
女性は小柄な男性に近づき、頭をポンポンとする。マルと呼ばれた小柄な男性は驚く。
「⁉」
「レンズの縁の色変えたな、かわいいぜ……」
「あ、ど、どうもありがとうございます……」
「さてと……実験とやらを始めろ!」
女性が高々と右腕を掲げる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる