【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
30 / 50
第一章

第8話(1)馬乙女

しおりを挟む
                  8

「よろしかったのですか、姫様?」

「シモツキ、もう五回はその質問をしていますよ」

 カンナが苦笑をする。

「す、すみません……どうしても心配で」

 シモツキが恐縮しながら呟く。ヤヨイが笑みを浮かべる。

「やれやれ、気が弱いねえ……」

「慎重だと言え」

「臆病の間違いだろう?」

「なんだと?」

 ヤヨイのからかいにシモツキがムッとしているなか、カンナが口を開く。

「……ここまでかなり飛ばしているとはいえ、妖の襲撃はありませんし、あの者たちの追撃もないです。タイヘイ殿……緊急の同盟はとりあえず正解だったようです……」

「追撃してくる余力がないだけかもしれませんよ?」

 ヤヨイが後ろを振り返りながら呟く。

「ふっ、案外そういうことなのかもしれませんね……」

「奴め、姫を謀ったということですか! 許せん!」

「落ち着きなさい、シモツキ」

「は、はい……」

「それならそれで、ということです……」

「きっちりとお礼参りですね?」

 ヤヨイが笑う。カンナも穏やかな笑みを浮かべる。

「まあ、これからの向こうの出方次第ですが、それに……」

「……」

「今はクーデターの鎮圧が最優先です」

「む! キサラギか!」

 カンナたちの下にキサラギが接近してきた。カンナが問う。

「クーデターの首謀者は分かりましたか?」

「はっ……!」

「!」

 カンナに向かって矢が飛んでくる。シモツキがそれを叩き落として叫ぶ。

「襲撃か! 全軍、隊列を止めろ!」

 ヤヨイが呟く。

「横から来るとはね……」

「この機動力は……」

「みなまで言うな、キサラギ。あいつの部隊しかないだろう……おい、サツキ!」

 ヤヨイの声に反応し、かなり離れたところから上半身が人で、下半身が馬の女性が顔を出す。やや面長ではあるが、凛々しい顔立ちをしている、サツキと呼ばれた女性は、ペロっと舌を出す。

「ちっ、バレたか……」

「バレバレなんだよ。この距離で、しかも走りながらこんな鋭く正確な矢を放てるのは、ケンタウロスのアンタにしか出来ない芸当だ」

「ヤヨイが褒めてくれるなんて珍しいこともあるもんだね、明日は矢でも降るかな?」

 サツキがおどけながら空を見上げる。

「毛づやが良いとか、体がよく絞れているとか、結構褒めていただろう?」

「褒め方に偏りがあるんだよ……」

「そうかい?」

「そうだよ、一応乙女なんだけど……」

 サツキが首をすくめる。

「それは悪かったね、でも……」

「うん?」

「この行為はとても褒められたもんじゃないね……!」

 ヤヨイが大声を上げる。サツキが呟く。

「おおっ、激おこってやつだね……」

「人獣のアンタをそこまで取り立ててやったのは他でもないカンナ姫だってのに、その姫に弓を引くとは……!」

「もちろん姫さまには大変な恩義を感じているよ、だからせめて苦しまないようにと心の臓を狙ったんだけどな……」

「黙れ! シモツキ!」

「! 分かった!」

 シモツキがヤヨイを抱き抱え、思いっきり投げつける。ヤヨイがサツキとの距離をほとんど一瞬で詰めてみせる。サツキが虚を突かれた表情になる。

「なっ⁉」

「ふん!」

「くっ!」

 ヤヨイの斬りつけた剣をサツキはなんとかかわす。

「む!」

「へへっ、間一髪だね……」

「それはどうかね?」

「なに? うっ……⁉」

 サツキが体勢を崩す。

「アタシの膂力があれば、当たらなくても十分さ……」

「ま、まさか、風圧だけで……⁉」

 サツキが目を丸くする。

「足が痛むだろう、さっさと終わらせる!」

「なめるな!」

「‼」

 サツキがヤヨイの攻撃を続けてかわし、距離を取る。

「それっ!」

「むん!」

 サツキが放った弓をヤヨイが剣で叩き落とす。サツキが驚く。

「なっ、こんな近距離で……!」

「アンタの射撃は正確だからね、その分、狙いは読みやすい」

「そ、そうだとしても、どんな反射神経してんの⁉」

「それは決まっているだろう……」

「え?」

「アタシは超人だからね!」

「! しまっ……」

 ヤヨイが素早く踏み込んで、剣を振るう。サツキは咄嗟に弓で防ぐが、弓の本体がぶった切られてしまう。ヤヨイが感心する。

「ほう! よく防いだね!」

「な、なんとかね!」

「しかし、得意の弓は使えない! これでしまいだ!」

「はっ!」

「なにっ⁉」

 ヤヨイが驚く。サツキが剣を両手で受け止めたからである。

「し、真剣白刃取り、初めてだけど上手くいった……」

「は、反応はともかくとして、なんだその力は?」

「ビギナーズラックってやつかな?」

「ふ、ふざけるな!」

「真面目に答えると……!」

「はっ⁉」

 サツキが体を素早く反転させ、後ろ足を向ける。

「アタシも超人の流れを汲んでいるのさ!」

「がはっ……!」

 サツキの強烈な蹴りを喰らったヤヨイが崩れ落ちる。

「人の恋路を邪魔する奴はなんとやらだね……恋路じゃないか」

 サツキは再び舌をペロっと出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...