ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第2話(3)ポニーテールと拳銃

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「ほら、さっさと歩け……!」

「お、押すなよ……!」



 俺はリーダー格の男に文句を言う。ゲームで『縛りプレイ』という言葉があるが、まさかこうして実際に縛られることになるとはな……。先を歩くアヤカが振り返る。



「……それにしても意外だったな」

「何がだ?」

「貴様はもっと抵抗してくるかと思ったが……」

「無駄なことはしない主義なんだよ」

「格好に似合わず賢明だな」



 アヤカは再び前を向いて歩き出す。実際問題、抵抗する気は毛頭無かった。恐らくは楽に勝てるとは思うのだが、アヤカたちはこの国の正規軍隊のようなものなのだろう。そんな連中を倒してしまったら、一国を敵に回すことになりかねない。そんなリスクを背負う必要はない。この世界で自由に生きようとは決めたが、いたずらにかき回すようなことは出来る限りは避けたい……あくまでも今のところはだが。どこかで心変わりを起こすかもしれない。だが、それは今ではない。とりあえずは流れに身を任せてみよう。



 ……というのは建前で、本音では、縛られた状況で、美人に見下され気味で『貴様』とか言われるシチュエーションにかつてないほどの興奮を覚えている。前世ではまずありえないことだ。お金を払わないとならないだろう。いや、お金を払っても無理ではないだろうか。外をほぼ全裸で歩くなんて。まさかこのような体験が出来るとは……これでこそ転生した甲斐があるというものだ。もっとも俺のことを縛ったのはむさ苦しい男だが。それはこの場合気にしないこととする。



「ふふふ……」

「な、何を笑っている?」



 アヤカが再び振り返る。俺は笑みを浮かべながら告げる。



「楽しんでいるんだよ、この状況を……」

「……」



 アヤカが黙り込む。



「大胆不敵だろう? どうだい、惚れたか?」

「大概な変態だということはよく理解した……」

「酷い言い草だな」

「いいからもっと早く歩け!」

「だから押すなって!」



 俺はリーダー格の男に文句を言う。アヤカが男に声をかける。



「……あらためて確認なのだが、逃げた囚人は全員確保したか?」

「ええ」

「周辺に逃げてはいないのか?」

「念のため、捜索をさせています。とはいえ、仮に逃げていたとしても、この小さい島なら、すぐに見つかりますよ」

「取り逃がすようなことがあっては困るぞ」

「そうですね。重大な責任問題になってしまいますからね……アヤカ部隊長の」

「! あ、ああ、そうだ……」

「ひとつご提案があるのですが……」

「提案? なんだ?」

「いえ……ん?」



 俺たちの目の前に傷を負った者が現れる。服装からして、こいつもアヤカの部下か。



「ぶ、部隊長!」

「ど、どうした⁉」

「しゅ、囚人どもが武装蜂起を!」

「な、なんだと⁉ ど、どういうことだ⁉」

「い、いえ、単に逃げ遅れただけかと思っていたのですが、どこかに隠していた武器を持って暴れ出して……」

「そ、そんな……だ、第一小隊は⁉」

「奇襲を受けて、苦戦中です……」

「くっ……!」

「部隊長、ご提案の続きですが……」

「なんだ! っ⁉」



 振り返ったアヤカが驚く。リーダー格の男がアヤカに拳銃を向けていたからだ。



「勇敢なる部隊長殿にはこの島で名誉ある戦死を遂げてもらおうかと……」

「なっ……そんなことをしたらどうなるか……」

「武勇一辺倒の貴女なんかよりも立ち回りには長けております。貴女に責任を押し付けて、私が部隊長の後釜に座ります。軍の要職に近づけば、計画も成就させやすい……」

「き、貴様、ジャックと繋がっていたのか……⁉」

「さすがに気が付きましたか……ですが少し、いや、だいぶ遅かったですね……」

「むう……」

「ジャックにこの島を襲撃させれば、貴女がいち早く治安維持へと動く……軍のエリートを多数輩出する名家に生まれながら、今までこれといった手柄を上げられていない貴女は近頃かなり焦っておられましたからね……」

「くっ、そこまで読んでいたというのか……」



 アヤカが顔をしかめる。男が周囲に対して声をかける。



「おい、お前らもそろそろ動けるだろう?」

「ああ……」



 囚人たちが自ら縄を解く。他の軍人たちもアヤカに対して銃を向ける。アヤカが驚く。



「なっ……!」

「お、おい、噂に聞いていた以上の別嬪さんじゃねえか、このまま殺っちまうのはもったいねえ、その前にみんなで犯っちまおうぜ?」



 囚人の一人が下卑な笑みを浮かべながら、男に提案する。男が苦笑する。



「随分とまあ、下劣な考えをするものだな……」

「監獄暮らしでご無沙汰なんだよ!」

「まあ、それくらいの褒美は先にくれてやっても良いか。これから私の尖兵として働いてもらうわけだからな……おい、アヤカ、着物を脱げ」

「な⁉ そ、そんなこと、死んでもごめんだ!」

「それならこいつを殺すぞ? 部下を見殺しにするのか?」



 男が傷を負っている男に銃口を向ける。アヤカが悔しそうに唇を嚙む。



「くっ……」



 アヤカが着物を脱ごうと手をかける。男が笑いながら告げる。



「ははっ、どうせならいやらしく脱げ……ギャラリーをもっと楽しませろ」

「ぐへへっ……」

「ちっ……き、貴様ら、地獄に落ちろ……」



 アヤカが震えながら片方の肩を出す。絹のような柔肌が覗く。囚人たちがどよめく。



「おおっ!」

「ビュル!」

「のあっ⁉ な、なんだ⁉ め、目が……」



 男が顔を抑える。



「【特殊スキル:顔……」

「言わせねえよ! ってか、どんな特殊スキルだよ!」



 俺は大声で叫び、若干前屈みになりながら、足元のウィンドウを蹴っ飛ばす。



「【補足:こちらは(オートホーミング機能)になります】」

「やかましいわ!」



 俺はさらに大声を出す。なんだ、その無駄な機能は……。



「き、貴様の仕業か⁉」



 男が目を拭いながら、銃口を俺に向けてくる。俺は頷く。



「……認めたくないが、そうだ。しかし、情けない。ちょっと肩を見せられたくらいでイってしまうなんて……。俺も結構ご無沙汰だったからな。いいや、シチュエーションが悪い。そんな薄い本みたいなことを目の前でやられたら……」

「何をごちゃごちゃと言っている!」

「流れが変わったようだからな。お前ら全員ぶっ倒す……!」



 俺は低い声色で告げる。
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