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第1章
第2話(4)竜が如く
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「ぶっ倒すだと⁉ はははっ! やれるもんならやってみろ!」
「……」
男が高らかに笑う横で、囚人たちが一斉に黙り込む。男が首を傾げる。
「……なんだ、どうした?」
「い、いや、こいつはやべえよ……」
「そういえば、こいつがいたな……」
「すっかり忘れていたぜ……」
囚人たちが皆、俺に対して怯えた様子を見せる。男が声を上げる。
「お、お前ら! 揃いも揃って、何を怖気づいている!」
「いや……ついさっき、全員こいつにやられたんだよ……」
「ジャックの兄貴もな……」
「ば、馬鹿な⁉ ただの全裸男だぞ!」
「全裸じゃねえ、海藻を巻いているだろう」
俺は股間に巻いた海藻を両手で指し示す。
「黙れ! そんなものはほぼ全裸だ!」
「そ、そんなものって……海藻に謝れ!」
「何を訳の分からんことを言っているのだ、貴様は!」
「むう……」
本当に何を言っているんだろうか、俺は……。
「お前ら、こいつを叩きのめせ! どうやったのか、不浄なものを顔にかけよって……」
「だ、だけどよ……」
「よく見てみろ! 両腕はきつく縛ってある! 何を恐れることがある!」
「! そ、それもそうか!」
「よっしゃ! さっきの借りを返すぜ!」
「ヒャッハー!」
囚人たちが勢いよく俺に向かってくる。
「やれやれ……」
「あ、危ないぞ!」
アヤカが慌てて俺に声をかける。俺は体をくるりと半回転させ、頭を地面に着けて、逆立ちのような体勢をとる。
「はあっ!」
「!」
俺は頭を軸に回転し、両足を豪快に振り回す。向かってきた囚人たちが俺のキックをまともに食らってことごとく吹き飛ばされる。
「【特殊スキル:ブレイクダンスを発動しました】」
試しにやってみたら出来たぜ。今の俺はどんなダンスフロアだって沸かせられるぜ。
「な、なんだ……⁉ 今のは……?」
「へへっ、両足も縛っておくべきだったな……」
俺は笑みを浮かべる。男が銃を構える部下たちに声をかける。
「う、撃て! 接近さえしなければ、どうということはない!」
「は、はっ!」
「おっと!」
「‼」
俺は地面を強く踏み、転がる小石をいくつも宙に浮かせて、飛んでくる銃弾を防ぐ。
「【特殊スキル:四股踏みを発動しました】」
やってみたら出来たぜ(数秒ぶり二回目)。今の俺はどんなちゃんこだって食えるぜ。
「な、なんだ……⁉ 銃弾を防いだだと⁉」
「ははっ、だから両足もちゃんと縛っておけって……」
俺は笑いながら告げる。男が唇を嚙む。
「くっ……」
「どうした、来ないのか? それならこっちから行くぜ?」
「ほ、ほざけ! そんな体勢で何が出来る!」
「出来るんだな、これが!」
「⁉」
俺は体を真っ直ぐにしてから、ねじりを加えて、水平に飛ぶ。自分でも驚くほどの凄い勢いで飛んだ俺は、頭突きを男の腹に食らわせる。男は苦悶の表情を浮かべながら、その場に崩れ落ちて、動かなくなった。
「【特殊スキル:人間弾丸を発動しました】」
やってみたら出来たぜ(数秒ぶり三度目)。今の俺はさながら、さまようことのない青臭い弾丸だな。何を言っているのかは俺もよく分からん。
「あ、ああ……」
「……これ以上続けるか? 大人しく降参した方が身の為だぜ?」
「わ、分かった……!」
残った部下たちが全員銃を捨てて、両手を挙げる。俺はアヤカに声をかける。
「アヤカさんよ……」
「えっ……」
「何をぼうっとしているんだ、指示を出しなよ」
「そ、そうですね……お、お前ら、囚人たちの身柄を確保し、監獄へ連れていけ! 残っている連中にも投降を呼びかけろ! 抵抗は無駄だ!」
「は、はい!」
アヤカの指示に従い、部下たちは囚人たちを再び縛り上げて、監獄へと移送した。監獄に残っていた連中は投降の呼びかけになかなか応じなかったが、アヤカの振るった剣が監獄の分厚い壁の一部を切断するのを見て、ようやく投降した。サムライすげえな。
その後、しばらくしてから駆け付けた部隊の手伝いもあって、囚人たちと反乱分子たちは監獄に閉じ込められた。幸いにも、死者が出なかったことにアヤカは安堵した。
「我らの勝利だ!」
「アヤカ部隊長、万歳!」
夜になり、引き継ぎなどを終えた部下たちが船室内でわいわいと騒ぐ。俺は両手を縛られたまま、あぐらをかいて座っていた。そこにアヤカが酒を持って隣に座る。
「貴様、いえ、貴方様のお陰です……誠にありがとうございました」
「いや、全然大したことはしていないさ」
「……これからどうされるおつもりでしょうか?」
「う~ん、特に決めてはいないな……」
「もしよろしければ……拙者の部隊に加わってはもらえないでしょうか? 貴方様の強さが必要なのです」
「断る」
「そ、即答⁉」
「軍隊みたいなところに入ったら息が詰まっちまう。俺は自由に生きると決めたんだ」
「自由……なるほど、その破廉恥な恰好にも意味があったのですね」
「いや、この恰好はたまたまなんだが……」
「つまらぬことを申しました。ささ、どうぞ、お呑みになってください……」
「あ、ああ……」
俺はアヤカのお酌で酒を呑む。おお、日本酒っぽい味だな……ってか、久々にアルコールを摂取したような気がする……なんだか、たった一口で眠くなってきたぞ……。
「あらあら……これは拙者の部屋に運ばないといけませんね……」
「……はっ⁉」
翌朝、俺は両腕を縛られたまま目が覚める。それを確認したアヤカが隣で言う。
「拙者、職を辞し、キョウ殿についていくことに決めました……」
「ええっ⁉ ど、どうして……?」
「まるで竜が如く……」
アヤカが俺の股間を見て、顔を赤らめながら呟く。いや、意味が分かるようで分からないぞ。ナニかあったんだろうが、意識がない時にはやめてくれよ。なんか損した気分だ……ってか、両腕の縄、解いてくれても……あっ、力入れたら、あっさりちぎれた……。
「……」
男が高らかに笑う横で、囚人たちが一斉に黙り込む。男が首を傾げる。
「……なんだ、どうした?」
「い、いや、こいつはやべえよ……」
「そういえば、こいつがいたな……」
「すっかり忘れていたぜ……」
囚人たちが皆、俺に対して怯えた様子を見せる。男が声を上げる。
「お、お前ら! 揃いも揃って、何を怖気づいている!」
「いや……ついさっき、全員こいつにやられたんだよ……」
「ジャックの兄貴もな……」
「ば、馬鹿な⁉ ただの全裸男だぞ!」
「全裸じゃねえ、海藻を巻いているだろう」
俺は股間に巻いた海藻を両手で指し示す。
「黙れ! そんなものはほぼ全裸だ!」
「そ、そんなものって……海藻に謝れ!」
「何を訳の分からんことを言っているのだ、貴様は!」
「むう……」
本当に何を言っているんだろうか、俺は……。
「お前ら、こいつを叩きのめせ! どうやったのか、不浄なものを顔にかけよって……」
「だ、だけどよ……」
「よく見てみろ! 両腕はきつく縛ってある! 何を恐れることがある!」
「! そ、それもそうか!」
「よっしゃ! さっきの借りを返すぜ!」
「ヒャッハー!」
囚人たちが勢いよく俺に向かってくる。
「やれやれ……」
「あ、危ないぞ!」
アヤカが慌てて俺に声をかける。俺は体をくるりと半回転させ、頭を地面に着けて、逆立ちのような体勢をとる。
「はあっ!」
「!」
俺は頭を軸に回転し、両足を豪快に振り回す。向かってきた囚人たちが俺のキックをまともに食らってことごとく吹き飛ばされる。
「【特殊スキル:ブレイクダンスを発動しました】」
試しにやってみたら出来たぜ。今の俺はどんなダンスフロアだって沸かせられるぜ。
「な、なんだ……⁉ 今のは……?」
「へへっ、両足も縛っておくべきだったな……」
俺は笑みを浮かべる。男が銃を構える部下たちに声をかける。
「う、撃て! 接近さえしなければ、どうということはない!」
「は、はっ!」
「おっと!」
「‼」
俺は地面を強く踏み、転がる小石をいくつも宙に浮かせて、飛んでくる銃弾を防ぐ。
「【特殊スキル:四股踏みを発動しました】」
やってみたら出来たぜ(数秒ぶり二回目)。今の俺はどんなちゃんこだって食えるぜ。
「な、なんだ……⁉ 銃弾を防いだだと⁉」
「ははっ、だから両足もちゃんと縛っておけって……」
俺は笑いながら告げる。男が唇を嚙む。
「くっ……」
「どうした、来ないのか? それならこっちから行くぜ?」
「ほ、ほざけ! そんな体勢で何が出来る!」
「出来るんだな、これが!」
「⁉」
俺は体を真っ直ぐにしてから、ねじりを加えて、水平に飛ぶ。自分でも驚くほどの凄い勢いで飛んだ俺は、頭突きを男の腹に食らわせる。男は苦悶の表情を浮かべながら、その場に崩れ落ちて、動かなくなった。
「【特殊スキル:人間弾丸を発動しました】」
やってみたら出来たぜ(数秒ぶり三度目)。今の俺はさながら、さまようことのない青臭い弾丸だな。何を言っているのかは俺もよく分からん。
「あ、ああ……」
「……これ以上続けるか? 大人しく降参した方が身の為だぜ?」
「わ、分かった……!」
残った部下たちが全員銃を捨てて、両手を挙げる。俺はアヤカに声をかける。
「アヤカさんよ……」
「えっ……」
「何をぼうっとしているんだ、指示を出しなよ」
「そ、そうですね……お、お前ら、囚人たちの身柄を確保し、監獄へ連れていけ! 残っている連中にも投降を呼びかけろ! 抵抗は無駄だ!」
「は、はい!」
アヤカの指示に従い、部下たちは囚人たちを再び縛り上げて、監獄へと移送した。監獄に残っていた連中は投降の呼びかけになかなか応じなかったが、アヤカの振るった剣が監獄の分厚い壁の一部を切断するのを見て、ようやく投降した。サムライすげえな。
その後、しばらくしてから駆け付けた部隊の手伝いもあって、囚人たちと反乱分子たちは監獄に閉じ込められた。幸いにも、死者が出なかったことにアヤカは安堵した。
「我らの勝利だ!」
「アヤカ部隊長、万歳!」
夜になり、引き継ぎなどを終えた部下たちが船室内でわいわいと騒ぐ。俺は両手を縛られたまま、あぐらをかいて座っていた。そこにアヤカが酒を持って隣に座る。
「貴様、いえ、貴方様のお陰です……誠にありがとうございました」
「いや、全然大したことはしていないさ」
「……これからどうされるおつもりでしょうか?」
「う~ん、特に決めてはいないな……」
「もしよろしければ……拙者の部隊に加わってはもらえないでしょうか? 貴方様の強さが必要なのです」
「断る」
「そ、即答⁉」
「軍隊みたいなところに入ったら息が詰まっちまう。俺は自由に生きると決めたんだ」
「自由……なるほど、その破廉恥な恰好にも意味があったのですね」
「いや、この恰好はたまたまなんだが……」
「つまらぬことを申しました。ささ、どうぞ、お呑みになってください……」
「あ、ああ……」
俺はアヤカのお酌で酒を呑む。おお、日本酒っぽい味だな……ってか、久々にアルコールを摂取したような気がする……なんだか、たった一口で眠くなってきたぞ……。
「あらあら……これは拙者の部屋に運ばないといけませんね……」
「……はっ⁉」
翌朝、俺は両腕を縛られたまま目が覚める。それを確認したアヤカが隣で言う。
「拙者、職を辞し、キョウ殿についていくことに決めました……」
「ええっ⁉ ど、どうして……?」
「まるで竜が如く……」
アヤカが俺の股間を見て、顔を赤らめながら呟く。いや、意味が分かるようで分からないぞ。ナニかあったんだろうが、意識がない時にはやめてくれよ。なんか損した気分だ……ってか、両腕の縄、解いてくれても……あっ、力入れたら、あっさりちぎれた……。
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