46 / 50
第1章
第12話(1)山王、かなり速い
しおりを挟む
12
「ま、まさか、三幹部がやられるとは……」
「イチローさん……」
「ジローさん……」
「ゴローさん……」
「ジャック、どうすれば……」
「いや、俺もジャックさんと呼べよ⁉」
「だけど……」
頼りにしていたイチロー、ジロー、ゴローを一気に失い、兵士たちは意気消沈する。そんな様子を見ていたジャックは内心、舌打ち交じりに呟く。
(ちっ、マズいな……いきなり士気が低下どころか、挫けちまったぞ……あの三幹部ならば、キョウと相打ちくらいは出来ると踏んでいたんだが……のっけから計画が狂っちまった……くそが! ん?)
ジャックが視線を向けると、山王が前に進み出てきて、その重い口を開く。
「案ずるな……」
「……! 山王さま……!」
「イチロー、斬殺……」
「……」
「ジロー、銃殺……」
「………」
「ゴロー、毒殺……」
「…………」
「こやつらを失ったのは痛恨の極みだ。しかし……まだわしがいるぞ……!」
「……‼」
「今目の前にいる連中を血祭りに上げて、わしらは先に進むぞ!」
「お、おおおっ!」
山王の力強い言葉を受けて、兵士たちが大いに気勢を上げる。それを見て、ジャックは笑みを浮かべながら呟く。
「そうだ、まだまだ負けたわけじゃねえ、この御方がいれば、国盗りは十分に可能だ……! 俺の勝負もまだここからだ!」
「さて……」
「む……!」
山王がアヤカたちの方にゆっくりと向かってくる。
「かわいい部下たちが大層世話になったな……」
「くっ……」
山王の発する言葉それ自体が、圧力となって、アヤカたちに迫る。アヤカたちは押し潰されまいと懸命に踏ん張る。
「……………」
「?」
「………………」
アヤカたちが視線を向けると、山王は遠くを見て、涙を流していた。アヤカとジャックが揃って戸惑う。
「な、泣いている……?」
「や、山王さま……?」
「イチロー、ジロー、ゴロー……いずれもわしにとっては大事な子どものようなものだ……覚悟はしていたとはいえ、このようなかたちで失うのはとても辛い……女ども、楽に死ねると思うなよ!」
「くっ……! 声だけでなんという圧だ⁉」
「さあ、まずはどいつだ!」
「せ、先手必勝だ! はあああっ!」
アヤカが勢いよく斬りかかる。
「なかなかの速さだが……」
「なっ⁉」
アヤカの背後に、山王の巨体が一瞬で回り込んだ。
「そんなものか!」
「がはっ!」
アヤカが地面に激しく叩きつけられる。わずかに指先が動く。
「ほう、今の一撃を食らっても、生きているとは、生命力もなかなかだな……」
「や、山王さま、こやつめは、軍とも繋がりがあります! 人質として生かしておいてはいかがでしょうか?」
「ジャック……!」
「は、はい……!」
「そのような下らぬ提案……二度と口にするなよ!」
「は、ははっ! た、たいへん失礼を致しました!」
ジャックが慌てて頭を下げる。山王が太い腕を振りかざす。
「そうはさせないよ!」
「! イオか……お前は別だ」
「え?」
「戻ってこい、お前も我が子同然に大切に育ててきたからな……」
山王がさきほどまでとは打って変わっての優しい声色で語りかける。
「嘘つき!」
「う、嘘つき……?」
「ボクのことネコの獣人とか言って! 本当はライオンの獣人なのに」
「い、いや、それはだな……」
「なにが大切に育ててきただよ! 今のお前は敵だ!」
「て、敵……だと?」
「今のボクの牙には毒が仕込まれている! 噛まれたらその時点で終わりさ!」
「むう……」
「がああっ!」
「はっ!」
「なっ、いつの間に後ろに⁉ は、速い!」
「ふん!」
「!」
「ならば噛ませなければ良い。危うく飼い猫に手を噛まれるところだった……」
山王はイオを殴り飛ばすと、どこか悲し気に呟く。山王が速さを見せつけた。
「ま、まさか、三幹部がやられるとは……」
「イチローさん……」
「ジローさん……」
「ゴローさん……」
「ジャック、どうすれば……」
「いや、俺もジャックさんと呼べよ⁉」
「だけど……」
頼りにしていたイチロー、ジロー、ゴローを一気に失い、兵士たちは意気消沈する。そんな様子を見ていたジャックは内心、舌打ち交じりに呟く。
(ちっ、マズいな……いきなり士気が低下どころか、挫けちまったぞ……あの三幹部ならば、キョウと相打ちくらいは出来ると踏んでいたんだが……のっけから計画が狂っちまった……くそが! ん?)
ジャックが視線を向けると、山王が前に進み出てきて、その重い口を開く。
「案ずるな……」
「……! 山王さま……!」
「イチロー、斬殺……」
「……」
「ジロー、銃殺……」
「………」
「ゴロー、毒殺……」
「…………」
「こやつらを失ったのは痛恨の極みだ。しかし……まだわしがいるぞ……!」
「……‼」
「今目の前にいる連中を血祭りに上げて、わしらは先に進むぞ!」
「お、おおおっ!」
山王の力強い言葉を受けて、兵士たちが大いに気勢を上げる。それを見て、ジャックは笑みを浮かべながら呟く。
「そうだ、まだまだ負けたわけじゃねえ、この御方がいれば、国盗りは十分に可能だ……! 俺の勝負もまだここからだ!」
「さて……」
「む……!」
山王がアヤカたちの方にゆっくりと向かってくる。
「かわいい部下たちが大層世話になったな……」
「くっ……」
山王の発する言葉それ自体が、圧力となって、アヤカたちに迫る。アヤカたちは押し潰されまいと懸命に踏ん張る。
「……………」
「?」
「………………」
アヤカたちが視線を向けると、山王は遠くを見て、涙を流していた。アヤカとジャックが揃って戸惑う。
「な、泣いている……?」
「や、山王さま……?」
「イチロー、ジロー、ゴロー……いずれもわしにとっては大事な子どものようなものだ……覚悟はしていたとはいえ、このようなかたちで失うのはとても辛い……女ども、楽に死ねると思うなよ!」
「くっ……! 声だけでなんという圧だ⁉」
「さあ、まずはどいつだ!」
「せ、先手必勝だ! はあああっ!」
アヤカが勢いよく斬りかかる。
「なかなかの速さだが……」
「なっ⁉」
アヤカの背後に、山王の巨体が一瞬で回り込んだ。
「そんなものか!」
「がはっ!」
アヤカが地面に激しく叩きつけられる。わずかに指先が動く。
「ほう、今の一撃を食らっても、生きているとは、生命力もなかなかだな……」
「や、山王さま、こやつめは、軍とも繋がりがあります! 人質として生かしておいてはいかがでしょうか?」
「ジャック……!」
「は、はい……!」
「そのような下らぬ提案……二度と口にするなよ!」
「は、ははっ! た、たいへん失礼を致しました!」
ジャックが慌てて頭を下げる。山王が太い腕を振りかざす。
「そうはさせないよ!」
「! イオか……お前は別だ」
「え?」
「戻ってこい、お前も我が子同然に大切に育ててきたからな……」
山王がさきほどまでとは打って変わっての優しい声色で語りかける。
「嘘つき!」
「う、嘘つき……?」
「ボクのことネコの獣人とか言って! 本当はライオンの獣人なのに」
「い、いや、それはだな……」
「なにが大切に育ててきただよ! 今のお前は敵だ!」
「て、敵……だと?」
「今のボクの牙には毒が仕込まれている! 噛まれたらその時点で終わりさ!」
「むう……」
「がああっ!」
「はっ!」
「なっ、いつの間に後ろに⁉ は、速い!」
「ふん!」
「!」
「ならば噛ませなければ良い。危うく飼い猫に手を噛まれるところだった……」
山王はイオを殴り飛ばすと、どこか悲し気に呟く。山王が速さを見せつけた。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
☆ほしい
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる