ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第12話(3)山王、単純に強い

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「スピードだけでなく、高い戦闘テクニックも兼ね備えているのでありんすか……」

「ふふふっ……」



 エリーの言葉を聞いて、山王は得意気に笑う。



「まったくもって、厄介極まりない存在でありんすな……」

「照れるな……」

「全然褒めてやせん」

「おお、なんだ、そうか……」



 山王が肩をすくめる。



「さてと……」



 エリーが本を取り出す。山王が興味深そうな表情になる。



「どんなモンスターを出してくるのだ?」

「……なんだと思いんすか?」

「やはり……『バハムート』か……いや、それとも『フェニックス』あたりか? わしと相対するにふさわしいのは」

「これはまた……思い上がりも甚だしゅうござりんすね……」

「むっ……」



 山王が厳めしい顔をより一層しかめる。エリーはそれを気にも留めないで話す。



「それ相応のモンスターでお相手して差し上げんしょう……」

「それ相応だと……?」

「ええ、山賊の長殿にもっともふさわしいね……」

「さ、山賊だと⁉」

「あら? 違いんしたか?」



 エリーがわざとらしく首を傾げる。山王がキッと睨みながら話す。



「随分と好き勝手言ってくれるな……」

「好き勝手などではなく、適切な言葉を選んでいるつもりでありんすが……」

「ふざけるなよ!」

「来なんし! 『ファイアドラゴン』!」

「むっ⁉ ドラゴン⁉」

「その炎をもって燃やし尽くしなんし!」

「ぐ、ぐおおっ⁉」



 ファイアドラゴンの吐いた炎が山王の巨体を覆い尽くす。エリーが笑みを浮かべる。



「ふふん、陰ながらの鍛錬の賜物……これまでとは比較にならないほどの炎の放出量……ひとたまりもありんせんでしょう……」

「ふん!」

「なっ⁉」



 ドラゴンの炎を山王が消し飛ばしてしまう。山王が首の骨を鳴らしながら呟く。



「山火事注意だぞ……」

「ど、どうやったでありんすか?」

「なに、少しばかり足を踏み鳴らして、強い風を起こしたまでだ……」

「そ、そんな馬鹿な……な、なんというパワー……」

「こちらの番だな……そらあっ!」

「ガアアッ!」

「! きゃ、きゃあ!」



 山王がドラゴンを殴り飛ばし、エリーがその下敷きになってしまう。



「可愛がっているドラゴンごと踏みつけてやろう……!」

「そ、そうはさせません! ええい!」

「むうっ⁉」



 飛び込んできたヴァネッサの強烈なパンチが山王の横っ面に当たる。



「あ、当たった⁉ だ、だけど、手応えがまったくない⁉」

「ふん、ゴブリンにしては少々やるようだが……相手が悪かったな!」

「⁉」



 山王がすかさず反撃を繰り出し、ヴァネッサを倒す。山王が力を見せつけた。



「さ、さすがでございます!」

「ふん、これくらいは当然だ……」



 ジャックの言葉に対して、山王が答える。



「くっ……」

「く、くそっ……」

「むっ! 殴り飛ばしてもまだ動けるのか……」



 アヤカとイオが半身を起こしたことに山王が少し驚く。



「も、戻りなんし、ファイアドラゴン……」

「つ、強い……」

「むっ‼ もう起き上がってくるだと……」



 エリーとヴァネッサが起き上がったことに山王がやや驚く。



「ふん……」

「ま、まだまだでござるよ……」

「むっ⁉ 銃弾を受けて、まだ生きていたのか⁉」



 オリビアとウララが立ち上がろうとしたことに山王が大いに驚く。



「や、山王さま! とどめを! お、お早く!」

「言われるまでもない。かつての……いや、それ以上の勢威を得る為には、こんなところで時間を浪費している暇などないからな……ちょうどいい具合に固まっているな……次の一撃でまとめて終わらせてやろう」



 山王が太い右腕をぐるぐると回す。



「うおおおっ⁉」

「なにっ⁉」

「キョ、キョウ⁉」



 キョウが地中から飛び出して、山王たちの背後にいた兵士たちを派手に吹き飛ばす。
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