ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第12話(4)山王との決戦

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「ふう……」



 どうやらなんとか地上に戻ってこられたようだ。



「キョウ! てめえ、いきなり姿が見えなくなったと思ったら! なんでそんなところから現れやがる!」



 ジャックがわめいてくる。確かに……なんでだろうか……。俺はほんの数分前のことを思い返してみる。

 そうだ、イチローたちをアヤカたちが――わりと情け容赦なく――倒した後、山王がこちらへと向かってきた。そして言葉をいくつか発した。流石は王というだけあって、ただ言葉を発するだけでも強烈な“圧”というものがひしひしと感じられた。すると……。

 

「【特殊スキル:防衛本能(過剰気味)を発動しました】」



 は?と思った次の瞬間、俺はドリルのように回転し、地中へと掘り進んでいったのだ。つまりどういうことかというと……自らを守る為に、その場の圧力、プレッシャーから回避するという一種の防衛プログラムのようなものが作動したのだろう。あくまでも推測ではあるのだが……って、これじゃあまるで敵前逃亡したみたいじゃないか……。



「ま、まあ、ちょっと穴掘りしたい気分になっただけだ……」

「なんだそりゃ⁉」

「なんだろう?」

「聞き返すな! こっちが聞いてんだよ!」



 ジャックが声を上げる。まあそうなるな。山王が声をかけてくる。



「怪しげな全裸の男か……こやつらを片付けたら、次は貴様の番だ」

「全裸じゃねえ。ちゃんと腰巻きを付けてるだろう」

「あ、怪しげなのは否定せんのだな……」

「その辺の自覚はあるさ……って、おいおい! ちょっと待て! 彼女らはもうボロボロじゃないか!」

「待たん! イチローたちの仇だ!」

「くっ!」

「むっ⁉」



「【特殊スキル:緊急加速を発動しました】」

「【特殊スキル:両手に華を発動しました】」



「危ない、危ない……」



 俺は素早く回り込んで、アヤカたちを抱きかかえ、山王の近くから離れる。しかし……緊急加速は分かるが、両手に華ってなんだ? 女しか抱きかかえられないスキルか? それはちょっと特殊過ぎるな……。まあ、それよりもだ。俺は手をかざす。



「【特殊スキル:癒しの手かざしを発動しました】」



「キョウ殿、ありがとうございます……」

「なっ⁉ 女どもが一瞬で回復しただと⁉」

「奴は危険な存在です! 捨ててはおけません!」

「ふむ、よくよく分かった……」



 ジャックの言葉に山王が頷く。山王が近づいてくる。俺は皆に声をかける。



「危険だ……離れていてくれ……」

「え、援護します!」

「いや、大丈夫だ……ヴァネッサ」

「さ、流石に手に余るのではござらんか?」

「問題ないぜ、ウララ」

「あ、相手はあの山の王だよ⁉」

「それは知っているさ、イオ」

「ふっ、下手な援護はかえって迷惑かな?」

「オリビア、そういうわけでもないんだが……一対一の方が幾分戦いやすいと思う」

「あ~もう、みなまで言うなでありんす! キョウ様の意向に従いんす……!」

「すまん、エリー」

「皆さん、離れるでありんす!」



 エリーに促されて、皆が俺の周りから離れる。山王が笑う。



「ふふっ、別に多対一でもわしは構わんぞ?」

「……弱い者いじめは嫌いなんでね」

「! ふざけるな!」



 山王がまるでボクサーのようなパンチのラッシュを繰り出してきた。速さと技術を兼ね備えた攻撃だ。力任せではなくこのような攻撃も出来るとは……。しかし……。



「【特殊スキル:ミラクルスウェーを発動しました】」



「おっと! よっと! あらよっと!」

「あ、当たらん⁉」



 俺は上半身を器用に捻ったり、反らしたりして、パンチをことごとくかわしてみせる。反らし過ぎて、首が股間を通った。自分でも引くくらいの軟体さだ。俺は体勢を戻す。



「よっと……」

「はあ、はあ、はあ……」

「パンチの打ち疲れか? それならこっちの番だな……『やっほー‼』」

「【特殊スキル:声量がおかしい山びこを発動しました】」

「!」



 俺の発した大声で、山王の鎧兜が粉々に砕けた。山王が唖然とする。



「たたみかけるぜ! ふう……」

「【特殊スキル:荒い鼻息を発動しました】」

「‼」



 接近した俺の鼻息を首筋に受けて、山王は腰砕けになる。自分でやっといてなんだが、なんだこのスキルは……。しかし、相手に精神的なダメージを与えられたようだ。



「こいつでとどめだ! うおおおおおっ!」

「【特殊スキル:山引っこ抜きを発動しました】」

「⁉」

「山王とかのたまうなら、いっそのこと、山に埋まってしまえ!」



 俺は近くの手ごろな山を引っこ抜き、山王に向かって豪快に叩きつける。山王は山の下敷きになった。リアクションはない。単なる屍になったか……。どうか安らかに眠ってくれ、山王……。俺たちは勝利を収めた。

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