12 / 63
第一章
第3レース(3)それぞれの問題点
しおりを挟む
「……さて、本日も騎乗訓練がメインだ。諸君らにとっては喜ばしいだろう」
鬼ヶ島が並ぶ学生たちに告げる。隣に並ぶ炎仁と真帆の顔は堅い。
「課題が山積みだからな……」
「喜んでばかりもいられないわ……」
「ドラゴンに乗ったらコースに出ろ。ああ、朝日と天ノ川、お前らは罰走だ」
「ええ~なんでですか~」
「なんでって、まだ一週間も経っていないのに何度目だ、寝坊は」
「朝は弱いんですよ~」
「それでジョッキーが務まるか」
鬼ヶ島が翔に対して呆れた目を向ける。
「ちょっと待った! アタシは今日遅れてないっすよ⁉」
「厩舎で寝泊まりするやつがいるか」
「そ、その方がより確実だと思って……」
「決められた場所で過ごせ、ルールを守れない奴は周囲の迷惑だ」
「ちぇ……いいアイデアだと思ったんだけどな」
翔と青空はぶつぶつ言いながら走り出す。
「……今日は最初から模擬レースを行う。但し、強度は少し高める」
「強度?」
レオンが首を傾げる。
「教官二名が混ざり、六頭立てで行う。さらに結果も求めたい。これまでは走り切ることに重きを置いていたが、一回一回勝ちにこだわれ、以上だ」
「……うおっしゃ! 一着だ!」
深緑色の竜体をしたドラゴンに跨る嵐一が吠える。並走していた学生が抗議する。
「ちょ、ちょっと待て! 今の走りは妨害だろう」
「あん? 難癖付けんのかよ?」
「やめろ……今の程度ならばルール上問題はない」
レースを見ていた鬼ヶ島が冷静にジャッジする。
「ほら見ろ」
「くっ……」
「ただ、やや強引だった。草薙、もう少し仕掛けは早くしろ」
「……っす」
鬼ヶ島の指摘に嵐一は頷く。
「三日月」
「は、はい!」
「今のレースは貴様が優勢だったぞ、最後まで油断するな」
「……はい」
海が頷いて、スタート位置へ戻る。
(草薙嵐一と『アラクレノブシ』号、多少の不利な状況なら打開出来る力強さがあるな。王道路線よりもあるいはあの路線の方が可能性あるのかもしれん。ただ、草薙のすぐに苛立つ性格が厄介だな……三日月海と『ミカヅキルナマリア』号、ややお上品過ぎるな……少しでも計算外のことが起こると、すぐに対応出来なくなる。せっかくの能力を活かしきれていない……)
鬼ヶ島は模擬レースを見ながら分析する。
「よっし! 一着ですわ!」
飛鳥がガッツポーズを取る。
「……撫子、こっちへ来い」
「は、はい!」
飛鳥が鬼ヶ島の下へ近づく。
「……」
「ガ、ガッツポーズはちょっとはしたなかったですわね」
「それはいい……何故あそこで無理に突っ込ませた?」
「!」
「そのドラゴンならば無理をしなくても勝てたレースだった」
「いや、その……」
「多少の無理をしても勝てるのは一流のジョッキーだ。ただ、貴様の技術はまだそこまでは達していない、姉の真似をして背伸びをするのはやめろ」
「そ、そんなつもりは!」
「そう言ってすぐムキになるのがなによりの証拠だ、戻れ」
「ぐっ……」
飛鳥が悔しそうな表情を浮かべながら、スタート地点に戻る。鬼ヶ島が叫ぶ。
「金糸雀! こっちへ来い!」
「は、はい……」
「呼ばれた理由は分かるな……」
「ええっと……」
「何故ドラゴンを下げた? あのタイミングで抜け出せば勝ちを狙えたぞ」
「それは……」
「……事情は概ね把握しているつもりだ」
「えっ……」
「ただ、冷たいようだがそれは貴様自身で克服してもらわねばならん。この短期コースは時間が無い上に、貴様の為だけにあるものではない。戻っていい」
「はい……」
レオンがトボトボと黄色い体色のドラゴンをスタート地点へ歩かせていく。
(撫子飛鳥と『ナデシコハナザカリ』号、技術はこの時点でも申し分ないが、このままではそれに溺れかねんな……金糸雀レオンと『ジョーヌエクレール』号、血統的には可能性を感じるドラゴンだが、乗っている騎手があの状態ではな……騎手の不安などマイナス要因が伝播しやすいのが競争竜というものだ。このままではポテンシャルを完全には発揮できないだろう。さてどうしたものか……)
「教官~走り終わりました」
青空が鬼ヶ島に声をかける。
「ああ、貴様らもドラゴンに乗って混ざれ、今日は徹底して模擬レースだ」
「よっしゃあ!」
「やった~」
青空と翔が喜び勇んで厩舎へ走っていく。鬼ヶ島は苦笑しながら呟く。
「奴らの場合は問題点が別の所にあるからな……」
「は~い、スタート!」
やる気があまり無さそうな男性教官の掛け声でスタートを切る。
「いっくぜ~!」
「よっと」
「うおっ!」
勢いよく飛び出した青空のドラゴンの前に翔のドラゴンが巧みに位置する。
(アタシの腕じゃ、内に包まれる! 外に持ち出す!)
「おわっ!」
青空がやや強引に位置取りを変える。外側を走っていた学生は驚く。青空が外に持ち出したことで、内側にやや空きが生まれる。
(外側がかえってごちゃついた! 内側がチャンスだ!)
レースを見ていた炎仁はそう感じる。少し後方を走っていたレオンとジョーヌエクレールにとってはここを突いていくべきところである。
「……くっ!」
しかし、レオンはジョーヌエクレールを突っ込ませようとはしなかった。レースは先行策を取った翔が勝ち切ってみせた。
「……十分休憩だ! 金糸雀、こっちへ来い!」
鬼ヶ島に呼び出され、レオンがなにやら指導を受ける。その後、レオンは皆とは違う水飲み場に向かう。気になった炎仁はそれを追いかける。
「レオン?」
水を頭にかけて、さっとそれを振り払ったレオンは炎仁を見ずに呟く。
「……僕は今日限りで辞めるよ」
「ええっ⁉」
思わぬ発言に炎仁は驚く。
鬼ヶ島が並ぶ学生たちに告げる。隣に並ぶ炎仁と真帆の顔は堅い。
「課題が山積みだからな……」
「喜んでばかりもいられないわ……」
「ドラゴンに乗ったらコースに出ろ。ああ、朝日と天ノ川、お前らは罰走だ」
「ええ~なんでですか~」
「なんでって、まだ一週間も経っていないのに何度目だ、寝坊は」
「朝は弱いんですよ~」
「それでジョッキーが務まるか」
鬼ヶ島が翔に対して呆れた目を向ける。
「ちょっと待った! アタシは今日遅れてないっすよ⁉」
「厩舎で寝泊まりするやつがいるか」
「そ、その方がより確実だと思って……」
「決められた場所で過ごせ、ルールを守れない奴は周囲の迷惑だ」
「ちぇ……いいアイデアだと思ったんだけどな」
翔と青空はぶつぶつ言いながら走り出す。
「……今日は最初から模擬レースを行う。但し、強度は少し高める」
「強度?」
レオンが首を傾げる。
「教官二名が混ざり、六頭立てで行う。さらに結果も求めたい。これまでは走り切ることに重きを置いていたが、一回一回勝ちにこだわれ、以上だ」
「……うおっしゃ! 一着だ!」
深緑色の竜体をしたドラゴンに跨る嵐一が吠える。並走していた学生が抗議する。
「ちょ、ちょっと待て! 今の走りは妨害だろう」
「あん? 難癖付けんのかよ?」
「やめろ……今の程度ならばルール上問題はない」
レースを見ていた鬼ヶ島が冷静にジャッジする。
「ほら見ろ」
「くっ……」
「ただ、やや強引だった。草薙、もう少し仕掛けは早くしろ」
「……っす」
鬼ヶ島の指摘に嵐一は頷く。
「三日月」
「は、はい!」
「今のレースは貴様が優勢だったぞ、最後まで油断するな」
「……はい」
海が頷いて、スタート位置へ戻る。
(草薙嵐一と『アラクレノブシ』号、多少の不利な状況なら打開出来る力強さがあるな。王道路線よりもあるいはあの路線の方が可能性あるのかもしれん。ただ、草薙のすぐに苛立つ性格が厄介だな……三日月海と『ミカヅキルナマリア』号、ややお上品過ぎるな……少しでも計算外のことが起こると、すぐに対応出来なくなる。せっかくの能力を活かしきれていない……)
鬼ヶ島は模擬レースを見ながら分析する。
「よっし! 一着ですわ!」
飛鳥がガッツポーズを取る。
「……撫子、こっちへ来い」
「は、はい!」
飛鳥が鬼ヶ島の下へ近づく。
「……」
「ガ、ガッツポーズはちょっとはしたなかったですわね」
「それはいい……何故あそこで無理に突っ込ませた?」
「!」
「そのドラゴンならば無理をしなくても勝てたレースだった」
「いや、その……」
「多少の無理をしても勝てるのは一流のジョッキーだ。ただ、貴様の技術はまだそこまでは達していない、姉の真似をして背伸びをするのはやめろ」
「そ、そんなつもりは!」
「そう言ってすぐムキになるのがなによりの証拠だ、戻れ」
「ぐっ……」
飛鳥が悔しそうな表情を浮かべながら、スタート地点に戻る。鬼ヶ島が叫ぶ。
「金糸雀! こっちへ来い!」
「は、はい……」
「呼ばれた理由は分かるな……」
「ええっと……」
「何故ドラゴンを下げた? あのタイミングで抜け出せば勝ちを狙えたぞ」
「それは……」
「……事情は概ね把握しているつもりだ」
「えっ……」
「ただ、冷たいようだがそれは貴様自身で克服してもらわねばならん。この短期コースは時間が無い上に、貴様の為だけにあるものではない。戻っていい」
「はい……」
レオンがトボトボと黄色い体色のドラゴンをスタート地点へ歩かせていく。
(撫子飛鳥と『ナデシコハナザカリ』号、技術はこの時点でも申し分ないが、このままではそれに溺れかねんな……金糸雀レオンと『ジョーヌエクレール』号、血統的には可能性を感じるドラゴンだが、乗っている騎手があの状態ではな……騎手の不安などマイナス要因が伝播しやすいのが競争竜というものだ。このままではポテンシャルを完全には発揮できないだろう。さてどうしたものか……)
「教官~走り終わりました」
青空が鬼ヶ島に声をかける。
「ああ、貴様らもドラゴンに乗って混ざれ、今日は徹底して模擬レースだ」
「よっしゃあ!」
「やった~」
青空と翔が喜び勇んで厩舎へ走っていく。鬼ヶ島は苦笑しながら呟く。
「奴らの場合は問題点が別の所にあるからな……」
「は~い、スタート!」
やる気があまり無さそうな男性教官の掛け声でスタートを切る。
「いっくぜ~!」
「よっと」
「うおっ!」
勢いよく飛び出した青空のドラゴンの前に翔のドラゴンが巧みに位置する。
(アタシの腕じゃ、内に包まれる! 外に持ち出す!)
「おわっ!」
青空がやや強引に位置取りを変える。外側を走っていた学生は驚く。青空が外に持ち出したことで、内側にやや空きが生まれる。
(外側がかえってごちゃついた! 内側がチャンスだ!)
レースを見ていた炎仁はそう感じる。少し後方を走っていたレオンとジョーヌエクレールにとってはここを突いていくべきところである。
「……くっ!」
しかし、レオンはジョーヌエクレールを突っ込ませようとはしなかった。レースは先行策を取った翔が勝ち切ってみせた。
「……十分休憩だ! 金糸雀、こっちへ来い!」
鬼ヶ島に呼び出され、レオンがなにやら指導を受ける。その後、レオンは皆とは違う水飲み場に向かう。気になった炎仁はそれを追いかける。
「レオン?」
水を頭にかけて、さっとそれを振り払ったレオンは炎仁を見ずに呟く。
「……僕は今日限りで辞めるよ」
「ええっ⁉」
思わぬ発言に炎仁は驚く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪役令嬢と入れ替えられた村娘の崖っぷち領地再生記
逢神天景
ファンタジー
とある村の平凡な娘に転生した主人公。
「あれ、これって『ダンシング・プリンス』の世界じゃない」
ある意味好きだった乙女ゲームの世界に転生していたと悟るが、特に重要人物でも無かったため平凡にのんびりと過ごしていた。
しかしそんなある日、とある小娘チート魔法使いのせいで日常が一変する。なんと全てのルートで破滅し、死亡する運命にある中ボス悪役令嬢と魂を入れ替えられてしまった!
そして小娘チート魔法使いから手渡されたのはでかでかと真っ赤な字で、八桁の数字が並んでいるこの領地収支報告書……!
「さあ、一緒にこの崖っぷちの領地をどうにかしましょう!」
「ふざっけんなぁあああああああ!!!!」
これは豊富とはいえない金融知識と、とんでもチートな能力を活かし、ゲーム本編を成立させれる程度には領地を再生させる、ドSで百合な少女の物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる