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第一章
第1話(1)生い立ちを知る
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「いや~とうとうバレちゃったか~」
「ノリが軽い⁉」
自らの後頭部をポリポリと掻くママを見て、太郎があらためて驚く。
「やはり……遠い親戚の子というのは真っ赤な嘘なんじゃな?」
「そだねー」
「そ、そだねーって……」
太郎がママの言葉に思わず苦笑してしまう。竜子が真面目な顔で呟く。
「妙だとは思っていたんじゃ……その遠い親戚の写真すら無いというのが……」
「う~ん、隠していたわけじゃないんだけどね」
「隠していたわけじゃない?」
「うん、どう切り出したらいいものかと思ってさ……」
「十歳の誕生日にでも言えば良かったじゃろうに」
「いや、いきなり、『あなたは竜王の血を引く者なのよ』って言われたらどうよ?」
「ドン引きするな」
「でしょ?」
「そう考えれば無理もないか……」
「まあ、この話はまた今度にでも……それよりおやつにしましょう?」
「うわ~い、おやつじゃ~!」
「い、いや、おやつに釣られている場合じゃないでしょ⁉ 絶対に!」
太郎が声を上げる。
「はっ! そう言われてみると確かに……!」
「そう言われなくても気付いてよ!」
「……ママさん、ワシは本当に竜王の血を引く者なんじゃな?」
「……うん」
「竜王というのは異世界のか?」
「まあ、そうだね」
「どうして本来異世界の者であるワシがここに?」
「それは……話せば長くなるんだけど……」
「ふむ……」
「ご、ごくり……」
竜子と太郎が息を呑む。ママが寝室の押し入れを指差す。
「そこの押し入れが異世界と繋がって、王様的な人が『この子を頼む』って……以上」
「短っ⁉」
太郎がさらに驚く。竜子が尋ねる。
「……異世界と繋がったじゃと?」
「後にも先にもそれだけだけどね、ドンドンと叩く音がするから、おっかなびっくり開いてみたら、王様的な人がまだ幼かったあなたを抱いて立っていたの」
「その王様的な人が竜王?」
「うん、『わしは竜王じゃ』って言っていたから……」
「何故に、ワシをママさんたちに託したんじゃ?」
「それは分からないわ」
ママが首を左右に振る。
「分からないか……」
「ただ……」
「ただ?」
「こちらから見る感じだと、かなり切羽詰まった感じだったわね……」
「切羽詰まった……」
「あまりこういうことは想像したくないのだけれど……」
「うん?」
「恐らく……向こうの世界は戦争中だったんじゃないのかしら」
「戦争中……」
「これはあくまでもママの推測だけどね……戦争に負けそうになったから、自分の子であるあなただけでも逃がそうとしたんじゃないのかしら」
「ふむ……」
竜子が腕を組んで考え込む。ママが申し訳なさそうにする。
「ごめんなさいね……いつかは話さないといけないとは思っていたんだけど……」
「……いや、当のワシが何も思い出していないのに話しても無駄じゃろう……そればかりは仕方がないことじゃ……」
「そう言ってもらえるといくらか助かるわ……」
「しかし、今の今まで気が付かなかった自分が情けない……」
「それは無理も無いんじゃないのかな?」
太郎が慰める。
「くしゃみをした瞬間火を吐いたり、空を飛べた時、おかしいとは思ったんじゃが……」
「その時点で気が付きなよ!」
「一人称ワシが大きなヒントじゃったか……」
「いや、それはわりとどうでもいいよ! ……っていうか、空飛べたの⁉」
太郎が三度驚く。
「ああ、調子が大分良い時だけじゃけどな」
「え、ええ……気付かなかった……学校とか遅刻しないじゃん」
「それは思いつかなかったのう……シャワーを浴びて、バスタブに入るときによく飛ぶ」
「もったいない使い方⁉」
「まあ、それは別に良い」
「良いんだ……」
「……」
竜子が顎に手を当てて考え込む。太郎が問う。
「りゅ、竜子?」
「竜子!」
「パ、パパ⁉」
「お前はうちの子だ! 将野竜子(まさのりゅうこ)だ! まぎれもない家族の一員だ!」
寝室に入ってきたパパが涙ながらに叫ぶ。
「うん、まあ、それはこの際どうでも良いんじゃ」
「ど、どうでも良い⁉」
「け、結構感動的な場面じゃないの⁉ 今のは⁉」
竜子の淡泊なリアクションにパパと太郎が愕然とする。
「……ママさん、異世界に戻る方法は?」
「正直見当もつかないわ。知っての通り、ママもパパもごく普通の人間だしね」
ママは両手を広げて、首を左右に振る。
「ふむ、そうか……」
「竜子、帰りたいの?」
「興味はあるが、帰れないのなら考えても仕方がない」
「ド、ドライだね……」
「ママさん、さきほど、テレビで竜王がどうとか言うとったんじゃが?」
「? ああ、将棋の竜王戦でしょ?」
「将棋……」
「……今調べたけど、誰でも挑戦出来るタイトルみたいね」
「……よし、とりあえずはその竜王になるぞ!」
「はあっ⁉」
竜子の宣言に太郎が度肝を抜かれる。
「いや~とうとうバレちゃったか~」
「ノリが軽い⁉」
自らの後頭部をポリポリと掻くママを見て、太郎があらためて驚く。
「やはり……遠い親戚の子というのは真っ赤な嘘なんじゃな?」
「そだねー」
「そ、そだねーって……」
太郎がママの言葉に思わず苦笑してしまう。竜子が真面目な顔で呟く。
「妙だとは思っていたんじゃ……その遠い親戚の写真すら無いというのが……」
「う~ん、隠していたわけじゃないんだけどね」
「隠していたわけじゃない?」
「うん、どう切り出したらいいものかと思ってさ……」
「十歳の誕生日にでも言えば良かったじゃろうに」
「いや、いきなり、『あなたは竜王の血を引く者なのよ』って言われたらどうよ?」
「ドン引きするな」
「でしょ?」
「そう考えれば無理もないか……」
「まあ、この話はまた今度にでも……それよりおやつにしましょう?」
「うわ~い、おやつじゃ~!」
「い、いや、おやつに釣られている場合じゃないでしょ⁉ 絶対に!」
太郎が声を上げる。
「はっ! そう言われてみると確かに……!」
「そう言われなくても気付いてよ!」
「……ママさん、ワシは本当に竜王の血を引く者なんじゃな?」
「……うん」
「竜王というのは異世界のか?」
「まあ、そうだね」
「どうして本来異世界の者であるワシがここに?」
「それは……話せば長くなるんだけど……」
「ふむ……」
「ご、ごくり……」
竜子と太郎が息を呑む。ママが寝室の押し入れを指差す。
「そこの押し入れが異世界と繋がって、王様的な人が『この子を頼む』って……以上」
「短っ⁉」
太郎がさらに驚く。竜子が尋ねる。
「……異世界と繋がったじゃと?」
「後にも先にもそれだけだけどね、ドンドンと叩く音がするから、おっかなびっくり開いてみたら、王様的な人がまだ幼かったあなたを抱いて立っていたの」
「その王様的な人が竜王?」
「うん、『わしは竜王じゃ』って言っていたから……」
「何故に、ワシをママさんたちに託したんじゃ?」
「それは分からないわ」
ママが首を左右に振る。
「分からないか……」
「ただ……」
「ただ?」
「こちらから見る感じだと、かなり切羽詰まった感じだったわね……」
「切羽詰まった……」
「あまりこういうことは想像したくないのだけれど……」
「うん?」
「恐らく……向こうの世界は戦争中だったんじゃないのかしら」
「戦争中……」
「これはあくまでもママの推測だけどね……戦争に負けそうになったから、自分の子であるあなただけでも逃がそうとしたんじゃないのかしら」
「ふむ……」
竜子が腕を組んで考え込む。ママが申し訳なさそうにする。
「ごめんなさいね……いつかは話さないといけないとは思っていたんだけど……」
「……いや、当のワシが何も思い出していないのに話しても無駄じゃろう……そればかりは仕方がないことじゃ……」
「そう言ってもらえるといくらか助かるわ……」
「しかし、今の今まで気が付かなかった自分が情けない……」
「それは無理も無いんじゃないのかな?」
太郎が慰める。
「くしゃみをした瞬間火を吐いたり、空を飛べた時、おかしいとは思ったんじゃが……」
「その時点で気が付きなよ!」
「一人称ワシが大きなヒントじゃったか……」
「いや、それはわりとどうでもいいよ! ……っていうか、空飛べたの⁉」
太郎が三度驚く。
「ああ、調子が大分良い時だけじゃけどな」
「え、ええ……気付かなかった……学校とか遅刻しないじゃん」
「それは思いつかなかったのう……シャワーを浴びて、バスタブに入るときによく飛ぶ」
「もったいない使い方⁉」
「まあ、それは別に良い」
「良いんだ……」
「……」
竜子が顎に手を当てて考え込む。太郎が問う。
「りゅ、竜子?」
「竜子!」
「パ、パパ⁉」
「お前はうちの子だ! 将野竜子(まさのりゅうこ)だ! まぎれもない家族の一員だ!」
寝室に入ってきたパパが涙ながらに叫ぶ。
「うん、まあ、それはこの際どうでも良いんじゃ」
「ど、どうでも良い⁉」
「け、結構感動的な場面じゃないの⁉ 今のは⁉」
竜子の淡泊なリアクションにパパと太郎が愕然とする。
「……ママさん、異世界に戻る方法は?」
「正直見当もつかないわ。知っての通り、ママもパパもごく普通の人間だしね」
ママは両手を広げて、首を左右に振る。
「ふむ、そうか……」
「竜子、帰りたいの?」
「興味はあるが、帰れないのなら考えても仕方がない」
「ド、ドライだね……」
「ママさん、さきほど、テレビで竜王がどうとか言うとったんじゃが?」
「? ああ、将棋の竜王戦でしょ?」
「将棋……」
「……今調べたけど、誰でも挑戦出来るタイトルみたいね」
「……よし、とりあえずはその竜王になるぞ!」
「はあっ⁉」
竜子の宣言に太郎が度肝を抜かれる。
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