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第一章
第2話(4)居飛車か振り飛車か
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「……」
「ええっと、居飛車と振り飛車で戦法と定跡は分けられるんだ」
「じょうせき……」
「定跡というのは、将棋の序盤でベストに近いとされる指し方のことだね」
「ふむ……」
「まずは相居飛車でのメジャーな戦法、『矢倉戦法』だね」
「『矢倉囲い』を用いるんじゃな?」
「そう……こんな感じだね」
パパが駒を並べる。竜子が頷く。
「お互いにしっかりと矢倉を組んでおるな……」
「うん、例えば、▲7六歩、△8四歩、▲7八銀、△3四歩、7七銀と進むのが一般的なんだけれど……」
「相手の角を塞いでおるの……」
「そう、角道を閉じて囲いを作るのを優先する……」
「うむ……」
「逆に角道を開ける場合もある」
「む?」
「『角換わり』という戦法だ」
「かくがわり……」
「色々とあるけれど、まず▲7六歩と指してから――相手の出方にもよるけれど――▲7七角と誘って、相手が△3四歩で角道を開けたら、▲7八銀……するとどうなる?」
「△7七角……いや、成った方がいいから、△7七角成か?」
「そう、それに対して、▲同――同じ位置に置く時は、こう表す――銀で角を取り返す」
「角を交換するんじゃな」
「厳密に言うと、『角交換』と『角換わり』はまた違うんだけれどね……とりあえずはそういう認識で良いとは思うよ」
「お互いが自身の手駒に角を持てるんじゃな……」
「そう、だから角をより自由に使える……矢倉戦法よりも序盤から激しい展開になるね」
「他には?」
「『横歩取り』というのがある……こんな感じかな」
パパが駒を並べる。竜子が顎をさする。
「よこふどり……2筋だけでなく3筋の歩も飛車で取って、角を牽制するのか……」
「これはまあ、上級者向けの戦法だね」
「上級者向けでも構わん、知っているものは全部教えてくれ」
「ええっと……これが『相掛かり』」
「あいがかり……2筋の歩を進めて、相手に歩で取らせて、その歩を飛車で取る……」
「これも力戦になりやすいから、苦手とする人は多いね……」
「りきせん?」
「本来の意味は力を尽くして戦うことだけど、将棋や囲碁では定跡(定石)から外れた戦い方のことだね」
「定跡外れか……」
竜子が腕を組む。
「後は相手が振り飛車の場合は対抗型になる。対抗型はふたつに分けられる」
「ふたつ?」
「急戦と持久戦だ」
「きゅうせんとじきゅうせん……」
「すごく簡単に言うと、急戦は相手の守りが整っていない内に早目にしかけること、持久戦は先手・後手ともに玉の守りをしっかりとかためてからじっくりと戦うことだ」
「短期決戦か長期決戦かということか……」
「そういうことかな」
「……振り飛車の戦法は?」
「色々とあるけれど……もっともスタンダードなのは『四間飛車』」
「しけんびしゃ……」
「まず飛車を、先手なら6筋に、後手ならば4筋に振るんだ。左から4マス目だから四間という……攻守のバランスがとれた戦法だね」
「なるほど……ということは」
「うん?」
「飛車の振った位置で戦法の名前が変わるということじゃな?」
「なかなか鋭いねえ……」
パパが感心する。
「真ん中に振った場合は?」
「『中飛車』だね」
「なかびしゃ……」
「派生形で『ゴキゲン中飛車』というのは初心者から上級者まで指すそうだよ」
「ゴ、ゴキゲン……」
「お気楽な戦法名前ね……」
太郎とママが思わず微笑む。
「後はまず角を動かしてからの『三間飛車』」
「さんけんびしゃ……」
「四間飛車よりも攻撃的だね……飛車を相手の飛車向かいに置くのが、『向飛車』」
「むかいびしゃ……」
「後は『角交換振り飛車』というのがあるよ……こんな感じに」
パパが駒を並べる。竜子が盤面をじっくりと見つめる。
「早々と角を交換してしまうのか……」
「そうだね、速攻を仕掛けやすいというのがある」
「ほう……」
竜子が顎をさする。
「他には、『相振り飛車』」
「互いに飛車を振るんじゃな」
「そう、力戦というか、乱戦模様になりやすいから、嫌がる人も多いみたいだけどね」
「なるほど……」
竜子が改めて腕を組む。それからしばらく時間が経つ。
「……戦法や定跡についてはざっとこんなところかな。まあ、一度ずつの説明じゃあ、なかなか頭には入らないとは思うけれど……」
「いや、大体分かった……」
「ええっ⁉」
「ありがとう、パパさん、感謝する……」
竜子が頭を下げる。
「い、いや、ど、どういたしまして……」
「とりあえずは戦型を決めなければ戦いにはならんか……」
竜子が顎に手を添える。
「そ、そうだね……居飛車か振り飛車か……」
「飛車は成ると『龍王』に成るんじゃな……」
竜子は飛車の駒を手に取り、まじまじと見つめる。
「あ、ああ、タイトル戦の竜王とは字が違うけれどね……」
「決めた」
「え?」
「飛車を暴れさせた方が性に合いそうじゃ、ワシは振り飛車で行く!」
竜子は力強く宣言する。
「ええっと、居飛車と振り飛車で戦法と定跡は分けられるんだ」
「じょうせき……」
「定跡というのは、将棋の序盤でベストに近いとされる指し方のことだね」
「ふむ……」
「まずは相居飛車でのメジャーな戦法、『矢倉戦法』だね」
「『矢倉囲い』を用いるんじゃな?」
「そう……こんな感じだね」
パパが駒を並べる。竜子が頷く。
「お互いにしっかりと矢倉を組んでおるな……」
「うん、例えば、▲7六歩、△8四歩、▲7八銀、△3四歩、7七銀と進むのが一般的なんだけれど……」
「相手の角を塞いでおるの……」
「そう、角道を閉じて囲いを作るのを優先する……」
「うむ……」
「逆に角道を開ける場合もある」
「む?」
「『角換わり』という戦法だ」
「かくがわり……」
「色々とあるけれど、まず▲7六歩と指してから――相手の出方にもよるけれど――▲7七角と誘って、相手が△3四歩で角道を開けたら、▲7八銀……するとどうなる?」
「△7七角……いや、成った方がいいから、△7七角成か?」
「そう、それに対して、▲同――同じ位置に置く時は、こう表す――銀で角を取り返す」
「角を交換するんじゃな」
「厳密に言うと、『角交換』と『角換わり』はまた違うんだけれどね……とりあえずはそういう認識で良いとは思うよ」
「お互いが自身の手駒に角を持てるんじゃな……」
「そう、だから角をより自由に使える……矢倉戦法よりも序盤から激しい展開になるね」
「他には?」
「『横歩取り』というのがある……こんな感じかな」
パパが駒を並べる。竜子が顎をさする。
「よこふどり……2筋だけでなく3筋の歩も飛車で取って、角を牽制するのか……」
「これはまあ、上級者向けの戦法だね」
「上級者向けでも構わん、知っているものは全部教えてくれ」
「ええっと……これが『相掛かり』」
「あいがかり……2筋の歩を進めて、相手に歩で取らせて、その歩を飛車で取る……」
「これも力戦になりやすいから、苦手とする人は多いね……」
「りきせん?」
「本来の意味は力を尽くして戦うことだけど、将棋や囲碁では定跡(定石)から外れた戦い方のことだね」
「定跡外れか……」
竜子が腕を組む。
「後は相手が振り飛車の場合は対抗型になる。対抗型はふたつに分けられる」
「ふたつ?」
「急戦と持久戦だ」
「きゅうせんとじきゅうせん……」
「すごく簡単に言うと、急戦は相手の守りが整っていない内に早目にしかけること、持久戦は先手・後手ともに玉の守りをしっかりとかためてからじっくりと戦うことだ」
「短期決戦か長期決戦かということか……」
「そういうことかな」
「……振り飛車の戦法は?」
「色々とあるけれど……もっともスタンダードなのは『四間飛車』」
「しけんびしゃ……」
「まず飛車を、先手なら6筋に、後手ならば4筋に振るんだ。左から4マス目だから四間という……攻守のバランスがとれた戦法だね」
「なるほど……ということは」
「うん?」
「飛車の振った位置で戦法の名前が変わるということじゃな?」
「なかなか鋭いねえ……」
パパが感心する。
「真ん中に振った場合は?」
「『中飛車』だね」
「なかびしゃ……」
「派生形で『ゴキゲン中飛車』というのは初心者から上級者まで指すそうだよ」
「ゴ、ゴキゲン……」
「お気楽な戦法名前ね……」
太郎とママが思わず微笑む。
「後はまず角を動かしてからの『三間飛車』」
「さんけんびしゃ……」
「四間飛車よりも攻撃的だね……飛車を相手の飛車向かいに置くのが、『向飛車』」
「むかいびしゃ……」
「後は『角交換振り飛車』というのがあるよ……こんな感じに」
パパが駒を並べる。竜子が盤面をじっくりと見つめる。
「早々と角を交換してしまうのか……」
「そうだね、速攻を仕掛けやすいというのがある」
「ほう……」
竜子が顎をさする。
「他には、『相振り飛車』」
「互いに飛車を振るんじゃな」
「そう、力戦というか、乱戦模様になりやすいから、嫌がる人も多いみたいだけどね」
「なるほど……」
竜子が改めて腕を組む。それからしばらく時間が経つ。
「……戦法や定跡についてはざっとこんなところかな。まあ、一度ずつの説明じゃあ、なかなか頭には入らないとは思うけれど……」
「いや、大体分かった……」
「ええっ⁉」
「ありがとう、パパさん、感謝する……」
竜子が頭を下げる。
「い、いや、ど、どういたしまして……」
「とりあえずは戦型を決めなければ戦いにはならんか……」
竜子が顎に手を添える。
「そ、そうだね……居飛車か振り飛車か……」
「飛車は成ると『龍王』に成るんじゃな……」
竜子は飛車の駒を手に取り、まじまじと見つめる。
「あ、ああ、タイトル戦の竜王とは字が違うけれどね……」
「決めた」
「え?」
「飛車を暴れさせた方が性に合いそうじゃ、ワシは振り飛車で行く!」
竜子は力強く宣言する。
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