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第一章
第7話(3) あえて受けてみる
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「……断る」
「何じゃと?」
「こ・と・わ・る」
「それは分かる! 何故じゃ!」
御剣は溜息を突きながら答える。
「管区長という地位は勝負事で左右されるべきものではないからだ」
「前例が全く無いわけではないというのは其方も知っているはずじゃ。他より強い者、他所より強い隊がその管区を束ねる……自然な話であろう」
「……」
「それともなにか? 譲ってくれと素直に頼めば良いのか?」
「……地位に執着は無いが、放り出すほど無責任ではない」
「ふむ、そうであろうな、なればこその果たし状じゃ。どちらの実力が上か下かをはっきりさせようではないか」
「管区長にこだわる理由は?」
「実力に相応しい地位を求めるのはこれまたごくごく自然なことではないか?」
そう言って御盾が大袈裟に両手を広げてみせる。
「……何も一年かけての大戦をしようと言っているのではない。一日限りの合同演習のようなものじゃ。隊員も経験を積める、悪い話ではないはずじゃ」
「経験か……」
「既に審判兼監査役も頼んである」
「誰にだ?」
「関東管区の星ノ条管区長じゃ。話してみたところ、あの魔女さんもノリノリでの~本人がわざわざやって来るそうじゃ。治癒・治療の術に長けた隊員も複数連れてきてくれる。負傷者が出ても心配は無用じゃ」
「あの方は貴様の方がお気に入りの様だが?」
「つまらぬ依怙贔屓はせぬよ。何気ない悪戯はあるかもしれんがの」
「それが困るのだが……わざわざ他の管区から呼ばなくても、同管区では駄目なのか?」
「対抗戦当日とその前後一日ずつの計三日間、古前田隊には其方の隊の担当区域を、華田隊には此方の隊の担当区域を、代わりに警備してもらうように既に手配してある。その点手抜かりは無い」
「肝心の私の許可が後回しなのが一番の手抜かりなのだが……」
御剣は片手で軽く頭を抑える。御盾が腕を組んで尋ねる。
「これでも断るつもりか? さては怖気づいたか?」
「稚拙な挑発には乗らん……」
御剣は勇次に視線を向ける。
「経験を積ませるという意味では存外悪くはないか……」
「?」
勇次は首を捻る。御剣は視線を御盾に戻して答える。
「分かった、武枝。貴様の申し出を受けよう」
御盾の顔がパアっと明るくなる。
「ふふっ、そうこなくてはな! 詳細は書状に記してあるからしっかりと一字一句目を通しておくのじゃぞ! では、また会おう!」
「待て、一点抗議しておくことがある」
「? なんじゃ?」
「貴様の所の隊員……山牙だったか? あの赤髪の。奴がつい先程、こちらの勇次のことを殺そうとしたそうだ」
「! なんと!」
「どういう理由があるのか知らんが、隊員の教育はしっかりしておくんだな」
「うむう……」
「急に殺しにかかるとはあまり感心できんな」
「全くその通り……」
「隊長とお前が言うか……」
勇次は御剣と、その言葉に同調する三尋に冷ややかな視線を向ける。
「……すまんな、半妖君! 奴めにはよ~く言っておく!」
「は、はあ……」
「それではごきげんよう!」
御盾が転移鏡に吸い込まれていく。愛が呟く。
「嵐のような人でしたね……」
「あいつの相手をするとドッと疲れる……」
「そのわりには少し楽しそうな様にも見えましたが?」
「そう見えたか? まあ、あの上昇志向自体は嫌いではないからな」
御剣が静かに微笑む。
「隊長、対抗戦の日にちは?」
三尋の問いに御剣は書状を広げて確認する。
「……一週間後だな」
「大丈夫でしょうか?」
「負けるつもりは毛頭ない」
「これは愚問でした」
御剣は頭を下げる三尋の肩を気にするなというようにポンと叩いて、指示を出す。
「億千万トリオもそろそろ戻る頃だろう。作戦室に移動しろ、対策会議を行うぞ。それと愛、貴様に頼みがある」
約数十分後、武枝隊の隊舎のトレーニングルームにて、筋トレを行う一人の女性がいた。長身かつスタイルも良く、ベリーショートの黒い髪が印象的な女性である。
「ふん! ふう……」
「火場さん、只今質問を行っても宜しいでしょうか?」
トレーニングが一息ついた頃に、さほど長身ではないが細身でスラッとした体格の女性が話しかける。左目の眼帯とオフホワイト色のセミロング髪が特徴的な女性である。
「ん? どうした、林根?」
「山牙さんと風坂さんの現在の居場所をご存知でしょうか?」
「いや、日中は非番だから出掛けるとは言っていたが……どうかしたのか?」
「先程、隊長がお戻りになられ、二人はどこかと大層お怒りのご様子だったもので」
「お館さまは大抵お怒りだが……」
「左様でごさいますか。自分の認識を改めます」
「いや、冗談だ。そろそろ戻るだろう」
「わたくしたちのお話かしら?」
風坂と山牙が部屋に入ってくる。林根と呼ばれた女性が恭しく礼をする。
「お帰りなさいませ。隊長がお二人をお探しの様です」
「もう会って参りました」
「流石に速いな。で、どうしたんだ?」
火場と呼ばれた女性は二人に尋ねる。山牙が唇を尖らせて答える。
「……怒られた」
「またか、今度は何をやらかしたんだ?」
「……」
「上杉山隊に所属する半妖の少年を刺殺しようとしたのです」
「なんと、それはまた……」
むくれる山牙の代わりに風坂が答え、火場は呆れる。
「先日の独断専行といい、隊長の山牙さんへの信頼度は著しく低下したと思われます」
「な、なんだと!」
「止めろ、林根、無自覚に煽るな」
「それよりもお二人にお伝えすることがありますわ。一週間後、上杉山隊と対抗戦を行うそうですわ。勝った方が管区長になるというご主人様にとって大事な勝負です」
「! そうか……もう1セット、追加するか」
「上杉山隊のデータ収集を開始します」
火場はトレーニングを再開し、林根は金属音を響かせながら部屋を出ていく。
「山牙さん、対抗戦、良い所を見せなくてなりませんね?」
「ふふっ、また会える、勇次君に……」
風坂の問いかけに山牙は不気味な笑みを浮かべる。
「何じゃと?」
「こ・と・わ・る」
「それは分かる! 何故じゃ!」
御剣は溜息を突きながら答える。
「管区長という地位は勝負事で左右されるべきものではないからだ」
「前例が全く無いわけではないというのは其方も知っているはずじゃ。他より強い者、他所より強い隊がその管区を束ねる……自然な話であろう」
「……」
「それともなにか? 譲ってくれと素直に頼めば良いのか?」
「……地位に執着は無いが、放り出すほど無責任ではない」
「ふむ、そうであろうな、なればこその果たし状じゃ。どちらの実力が上か下かをはっきりさせようではないか」
「管区長にこだわる理由は?」
「実力に相応しい地位を求めるのはこれまたごくごく自然なことではないか?」
そう言って御盾が大袈裟に両手を広げてみせる。
「……何も一年かけての大戦をしようと言っているのではない。一日限りの合同演習のようなものじゃ。隊員も経験を積める、悪い話ではないはずじゃ」
「経験か……」
「既に審判兼監査役も頼んである」
「誰にだ?」
「関東管区の星ノ条管区長じゃ。話してみたところ、あの魔女さんもノリノリでの~本人がわざわざやって来るそうじゃ。治癒・治療の術に長けた隊員も複数連れてきてくれる。負傷者が出ても心配は無用じゃ」
「あの方は貴様の方がお気に入りの様だが?」
「つまらぬ依怙贔屓はせぬよ。何気ない悪戯はあるかもしれんがの」
「それが困るのだが……わざわざ他の管区から呼ばなくても、同管区では駄目なのか?」
「対抗戦当日とその前後一日ずつの計三日間、古前田隊には其方の隊の担当区域を、華田隊には此方の隊の担当区域を、代わりに警備してもらうように既に手配してある。その点手抜かりは無い」
「肝心の私の許可が後回しなのが一番の手抜かりなのだが……」
御剣は片手で軽く頭を抑える。御盾が腕を組んで尋ねる。
「これでも断るつもりか? さては怖気づいたか?」
「稚拙な挑発には乗らん……」
御剣は勇次に視線を向ける。
「経験を積ませるという意味では存外悪くはないか……」
「?」
勇次は首を捻る。御剣は視線を御盾に戻して答える。
「分かった、武枝。貴様の申し出を受けよう」
御盾の顔がパアっと明るくなる。
「ふふっ、そうこなくてはな! 詳細は書状に記してあるからしっかりと一字一句目を通しておくのじゃぞ! では、また会おう!」
「待て、一点抗議しておくことがある」
「? なんじゃ?」
「貴様の所の隊員……山牙だったか? あの赤髪の。奴がつい先程、こちらの勇次のことを殺そうとしたそうだ」
「! なんと!」
「どういう理由があるのか知らんが、隊員の教育はしっかりしておくんだな」
「うむう……」
「急に殺しにかかるとはあまり感心できんな」
「全くその通り……」
「隊長とお前が言うか……」
勇次は御剣と、その言葉に同調する三尋に冷ややかな視線を向ける。
「……すまんな、半妖君! 奴めにはよ~く言っておく!」
「は、はあ……」
「それではごきげんよう!」
御盾が転移鏡に吸い込まれていく。愛が呟く。
「嵐のような人でしたね……」
「あいつの相手をするとドッと疲れる……」
「そのわりには少し楽しそうな様にも見えましたが?」
「そう見えたか? まあ、あの上昇志向自体は嫌いではないからな」
御剣が静かに微笑む。
「隊長、対抗戦の日にちは?」
三尋の問いに御剣は書状を広げて確認する。
「……一週間後だな」
「大丈夫でしょうか?」
「負けるつもりは毛頭ない」
「これは愚問でした」
御剣は頭を下げる三尋の肩を気にするなというようにポンと叩いて、指示を出す。
「億千万トリオもそろそろ戻る頃だろう。作戦室に移動しろ、対策会議を行うぞ。それと愛、貴様に頼みがある」
約数十分後、武枝隊の隊舎のトレーニングルームにて、筋トレを行う一人の女性がいた。長身かつスタイルも良く、ベリーショートの黒い髪が印象的な女性である。
「ふん! ふう……」
「火場さん、只今質問を行っても宜しいでしょうか?」
トレーニングが一息ついた頃に、さほど長身ではないが細身でスラッとした体格の女性が話しかける。左目の眼帯とオフホワイト色のセミロング髪が特徴的な女性である。
「ん? どうした、林根?」
「山牙さんと風坂さんの現在の居場所をご存知でしょうか?」
「いや、日中は非番だから出掛けるとは言っていたが……どうかしたのか?」
「先程、隊長がお戻りになられ、二人はどこかと大層お怒りのご様子だったもので」
「お館さまは大抵お怒りだが……」
「左様でごさいますか。自分の認識を改めます」
「いや、冗談だ。そろそろ戻るだろう」
「わたくしたちのお話かしら?」
風坂と山牙が部屋に入ってくる。林根と呼ばれた女性が恭しく礼をする。
「お帰りなさいませ。隊長がお二人をお探しの様です」
「もう会って参りました」
「流石に速いな。で、どうしたんだ?」
火場と呼ばれた女性は二人に尋ねる。山牙が唇を尖らせて答える。
「……怒られた」
「またか、今度は何をやらかしたんだ?」
「……」
「上杉山隊に所属する半妖の少年を刺殺しようとしたのです」
「なんと、それはまた……」
むくれる山牙の代わりに風坂が答え、火場は呆れる。
「先日の独断専行といい、隊長の山牙さんへの信頼度は著しく低下したと思われます」
「な、なんだと!」
「止めろ、林根、無自覚に煽るな」
「それよりもお二人にお伝えすることがありますわ。一週間後、上杉山隊と対抗戦を行うそうですわ。勝った方が管区長になるというご主人様にとって大事な勝負です」
「! そうか……もう1セット、追加するか」
「上杉山隊のデータ収集を開始します」
火場はトレーニングを再開し、林根は金属音を響かせながら部屋を出ていく。
「山牙さん、対抗戦、良い所を見せなくてなりませんね?」
「ふふっ、また会える、勇次君に……」
風坂の問いかけに山牙は不気味な笑みを浮かべる。
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