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第二章
第23話(1) 根回しをしてみた
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拾
「山形へ向かう?」
「ええ」
雅と画面で通話する御剣が頷く。
「目的は?」
「鬼ヶ島一美の身柄の奪還です」
「は、はっきりと言うわね……」
「隠しても仕方がありませんので……」
「それもそうね」
「加茂上管区長の行動について善川管区長はなにかおっしゃっていましたか?」
「……正直黙認状態よ」
「そうですか……」
「今回の妖の多数出現についての後始末でそれどころじゃないというのが本当のところね」
「ふむ……」
御剣が顔をしかめる。雅が苦笑する。
「妖は迅速に根絶出来たわ。ただ、ごく一部ではあるけど、現世でも影響が出てしまったことがあって、各方面から色々とつつかれているようね。大変なのよ、あの子も」
「まあ……かえって好都合かもしれません」
「晃穂ちゃんには会うつもり?」
「……出し抜くことは難しいでしょうから、どこかで顔を合わせることになるでしょうね」
御剣は腕を組む。雅が尋ねる。
「平和的な話し合いは出来そう?」
「それは向こうの出方次第ですね」
「御剣っちの方が譲るつもりは……さらさらないわよね」
「当然です」
「一戦交えることも辞さないって感じね」
「そこまでは避けたいのが本音ですが……多少の衝突はやむを得ないでしょうね」
「衝突って……御剣っちと晃穂ちゃんがでしょう?」
「恐らくそうですね」
「それは全然多少じゃないのよ……」
雅が笑顔を浮かべながらも困った様子をみせる。
「喧嘩を売られたようなものですから」
「子供じゃないんだから」
「今のは半分冗談です」
「半分なの……」
「しかし、加茂上管区長の今回取った行動の真意については問い質す必要があります」
「何の権限で?」
「鬼ヶ島一美は我が隊の隊員の身内です」
「ふむ、そうくるか……」
雅が腕を組む。御剣が話を続ける。
「それに……加茂上管区長については気になる点がありますので」
「なにかしら?」
「それは……あくまで推論の域を出ないので、ここで申し上げることは出来ません」
「……恐らくだけど、私が掴んでいる情報と同じようなものね」
「ほう、さすがですね」
「こちらもあくまで噂レベルだけどね……隣接している管区だから、色々と調べてはいるわ。言ってしまえば警戒しているって感じかしら」
「やはりそうでしたか」
「晃穂ちゃん、なかなか尻尾を掴ませてくれないから苦労するわ」
雅がそう言って笑う。御剣も笑みを浮かべた後、すぐ真顔に戻る。
「……そうであれば話が早い」
「ん?」
「今回の我々の行動についてですが……」
「……根回しをしてくれってこと?」
「そういうことです」
雅はため息を大きくつく。
「また面倒なことを……」
「そこをなんとかお願いします」
御剣は画面を通してではあるが、頭を下げる。雅はしばらく考えてから答える。
「まあ、なんとかはなると思うわ……」
「そうですか、ありがとうございます」
「その代わりと言ってはなんだけど……」
「はい?」
御剣が首を傾げる。
「第六管区の織田桐摩央ちゃん……」
「やりますか」
御剣が即座に刀に手をやる。雅が慌てる。
「いやいや、そうじゃないわよ!」
「織田桐がなにか?」
「色々とね……彼女が加古川副管区長と揉めているのは知っているかしら?」
「……武枝からなんとなくは」
「そうか。御盾ちゃんも仲が良かったわね」
御剣の言葉に雅は頷く。御剣が問う。
「なにかありましたか?」
「具体的にはまだなにも……ただ、あの摩央ちゃん、結構野心があるようだから……」
「結構というか、大分ありますよ、あれは」
「個人的には嫌いじゃないのよ? 今まではカワイイものだと思っていたのだけど……」
「……」
「最近はなかなか看過出来なくなってきてね……万が一今後トラブった場合は……」
「雅さんの側につけということですね」
「そうしてくれると助かるわ」
「お安い御用です」
御剣の答えに雅は満足気に笑みを浮かべる。
「取引は成立ね。根回しは任せておきなさい」
「ありがとうございます」
「ちょうど良い手も思いついたしね……」
「良い手?」
御剣が首を捻る。
「まあ、それは後になってのお楽しみよ」
「はあ……」
「それよりどうやって東北管区に向かうの?」
「どうやってとは?」
「堂々と乗り込むとか……」
「ははっ、まさか」
「いや、御剣っちの性格なら十分あり得るなと思って……」
「私としても出来る限り大事にはしたくありませんので……東北管区には我が家ゆかりの者も多数おります。その者らの手引きを頼んであります」
「……全く気付かれないとは思えないけど」
雅が顎に手をやって呟く。御剣が話を続ける。
「東北管区に向かうという情報はあえて流してあります。いくつかのルートなので、すぐに特定するのは難しいかと」
「へえ、そういう攪乱戦法を使うとは意外だったわ……」
雅は妙に感心する。
「とは言っても、やはりどこかで遭遇は免れないとは思いますが……」
「今、お姉さんが良いことを思いついたのだけど……」
「え?」
「聞く?」
雅は画面越しにウィンクをする。
「山形へ向かう?」
「ええ」
雅と画面で通話する御剣が頷く。
「目的は?」
「鬼ヶ島一美の身柄の奪還です」
「は、はっきりと言うわね……」
「隠しても仕方がありませんので……」
「それもそうね」
「加茂上管区長の行動について善川管区長はなにかおっしゃっていましたか?」
「……正直黙認状態よ」
「そうですか……」
「今回の妖の多数出現についての後始末でそれどころじゃないというのが本当のところね」
「ふむ……」
御剣が顔をしかめる。雅が苦笑する。
「妖は迅速に根絶出来たわ。ただ、ごく一部ではあるけど、現世でも影響が出てしまったことがあって、各方面から色々とつつかれているようね。大変なのよ、あの子も」
「まあ……かえって好都合かもしれません」
「晃穂ちゃんには会うつもり?」
「……出し抜くことは難しいでしょうから、どこかで顔を合わせることになるでしょうね」
御剣は腕を組む。雅が尋ねる。
「平和的な話し合いは出来そう?」
「それは向こうの出方次第ですね」
「御剣っちの方が譲るつもりは……さらさらないわよね」
「当然です」
「一戦交えることも辞さないって感じね」
「そこまでは避けたいのが本音ですが……多少の衝突はやむを得ないでしょうね」
「衝突って……御剣っちと晃穂ちゃんがでしょう?」
「恐らくそうですね」
「それは全然多少じゃないのよ……」
雅が笑顔を浮かべながらも困った様子をみせる。
「喧嘩を売られたようなものですから」
「子供じゃないんだから」
「今のは半分冗談です」
「半分なの……」
「しかし、加茂上管区長の今回取った行動の真意については問い質す必要があります」
「何の権限で?」
「鬼ヶ島一美は我が隊の隊員の身内です」
「ふむ、そうくるか……」
雅が腕を組む。御剣が話を続ける。
「それに……加茂上管区長については気になる点がありますので」
「なにかしら?」
「それは……あくまで推論の域を出ないので、ここで申し上げることは出来ません」
「……恐らくだけど、私が掴んでいる情報と同じようなものね」
「ほう、さすがですね」
「こちらもあくまで噂レベルだけどね……隣接している管区だから、色々と調べてはいるわ。言ってしまえば警戒しているって感じかしら」
「やはりそうでしたか」
「晃穂ちゃん、なかなか尻尾を掴ませてくれないから苦労するわ」
雅がそう言って笑う。御剣も笑みを浮かべた後、すぐ真顔に戻る。
「……そうであれば話が早い」
「ん?」
「今回の我々の行動についてですが……」
「……根回しをしてくれってこと?」
「そういうことです」
雅はため息を大きくつく。
「また面倒なことを……」
「そこをなんとかお願いします」
御剣は画面を通してではあるが、頭を下げる。雅はしばらく考えてから答える。
「まあ、なんとかはなると思うわ……」
「そうですか、ありがとうございます」
「その代わりと言ってはなんだけど……」
「はい?」
御剣が首を傾げる。
「第六管区の織田桐摩央ちゃん……」
「やりますか」
御剣が即座に刀に手をやる。雅が慌てる。
「いやいや、そうじゃないわよ!」
「織田桐がなにか?」
「色々とね……彼女が加古川副管区長と揉めているのは知っているかしら?」
「……武枝からなんとなくは」
「そうか。御盾ちゃんも仲が良かったわね」
御剣の言葉に雅は頷く。御剣が問う。
「なにかありましたか?」
「具体的にはまだなにも……ただ、あの摩央ちゃん、結構野心があるようだから……」
「結構というか、大分ありますよ、あれは」
「個人的には嫌いじゃないのよ? 今まではカワイイものだと思っていたのだけど……」
「……」
「最近はなかなか看過出来なくなってきてね……万が一今後トラブった場合は……」
「雅さんの側につけということですね」
「そうしてくれると助かるわ」
「お安い御用です」
御剣の答えに雅は満足気に笑みを浮かべる。
「取引は成立ね。根回しは任せておきなさい」
「ありがとうございます」
「ちょうど良い手も思いついたしね……」
「良い手?」
御剣が首を捻る。
「まあ、それは後になってのお楽しみよ」
「はあ……」
「それよりどうやって東北管区に向かうの?」
「どうやってとは?」
「堂々と乗り込むとか……」
「ははっ、まさか」
「いや、御剣っちの性格なら十分あり得るなと思って……」
「私としても出来る限り大事にはしたくありませんので……東北管区には我が家ゆかりの者も多数おります。その者らの手引きを頼んであります」
「……全く気付かれないとは思えないけど」
雅が顎に手をやって呟く。御剣が話を続ける。
「東北管区に向かうという情報はあえて流してあります。いくつかのルートなので、すぐに特定するのは難しいかと」
「へえ、そういう攪乱戦法を使うとは意外だったわ……」
雅は妙に感心する。
「とは言っても、やはりどこかで遭遇は免れないとは思いますが……」
「今、お姉さんが良いことを思いついたのだけど……」
「え?」
「聞く?」
雅は画面越しにウィンクをする。
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