上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

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第三章

第28話(1) 話題のズレ

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                  弐

「連日の任務ご苦労であった」

「いえ……」

 隊長室にて御剣から労いの言葉をかけられた一美が静かに首を振る。

「勇次もご苦労だったな」

「いえ、全然平気です」

 一美の隣に立つ勇次は首を振る。御剣が問う。

「交流は深められたか?」

「ええ、それなりにではありますが……」

「どうだった? それぞれの戦いぶりなどは」

「新参者の私がどうこうと言うのは少しはばかられます……」

「新参者ならではの意見を聞きたいのだ」

「はあ……」

「なに、別に告げ口したりはせん」

「そうですか……?」

 一美は御剣のテーブルの上に座る又左をじっと見つめる。又左が声を上げる。

「にゃ⁉ ワシもしゃべらんにゃ!」

「……本当ですか?」

「し、信用がにゃい! 心外だにゃ!」

「すみません、冗談です」

「冗談って! 傷つくにゃ!」

 御剣が又左を抑え込む。

「又左、静かにしろ」

「ふにゃ!」

「さあ、遠慮は要らんぞ」

「はい……まず樫崎千景さんですが……少しというか、大分荒っぽい方ですね」

「ふむ、やはりそのように見えるか……」

「良くも悪くも感情的というのでしょうか……」

「頭に血が上りやすいのが欠点だな」

「脳みそに筋肉がついているようだにゃ、誰かさんによく似ている……」

「うるさい」

「うにゃ!」

 御剣が又左を強く抑え込む。一美が話を続ける。

「男勝りな部分に案外女性的なところも見え隠れします」

「うん?」

「ん?」

 御剣と勇次が少し首を傾げる。

「次は苦竹万夜さんですが……もちろん実力の程は申し分ないのですが、少しそれを過信しているような点が見受けられます」

「調子に乗ってしまうのが玉に瑕だな……」

「肝心なところで詰めが甘いのも誰かさんに似ているにゃ」

「うるさいぞ」

「むにゃ!」

 御剣が又左をより強く抑え込む。一美が顎に手を当てて呟く。

「しかし、あの自己中心的ともとられがちな押しの強さ、あれくらいの方がちょうど良いのかもしれませんね……」

「ううん?」

「んん?」

 御剣と勇次がやや首を傾げる。

「次は赤目億葉さんですが……発明力はお見事ですね。ただ、他のことが一切目に入らなくなるようなきらいもあります」

「そのようなところは確かにあるな」

「意外と柔軟性に欠けるところも誰かさんによく似ていらっしゃる……」

「うるさいな」

「ぐにゃ!」

 御剣が又左をかなり強く抑え込む。一美が腕を組んで頷きながら話す。

「……ですが、研究熱心な部分が、将来的には教育熱心さに転じるのではないかと考えると、悪くはないのではないかと……」

「う、うん?」

「んんん?」

 御剣と勇次がかなり首を傾げる。

「次は豊園寺姉妹ですが……リモートでお話しをしただけですので、なにも言えません」

「ああ、それはそうだな……」

「それに少し若過ぎますね。まだそういう話は時期尚早でしょう」

「う、ううん?」

「ん、んんん?」

 御剣と勇次が大分首を傾げる。

「次は愛ちゃん……曲江愛さんですね。沈着冷静に立ち回ることが出来るのは、隊にとって非常に重要な存在ではないでしょうか」

「役割的に、少し負担をかけ過ぎてしまっているのがな……」

「その為には個々のレベルはもとより、連携面を充実させる必要があるにゃ」

「うるさ……くはないな」

「いい加減、手を避けるにゃ!」

 又左が御剣の手を強引に振り払う。一美が軽く頭を抑えながら話を続ける。

「う~ん、でも一歩引いちゃう感じが、周りの濃いメンバーに埋もれちゃうというか……」

「う、う~ん?」

「ん~?」

 御剣と勇次が大きく首を傾げる。

「可愛い幼なじみだから、贔屓したくなるんだけど、見てて歯がゆく感じちゃうのよね~」

「ちょ、ちょっと待て!」

 勇次が声を上げる。一美が勇次の方を見る。

「え?」

「さ、さっきから何の話をしてんだよ!」

「え、あなたのお嫁さんに誰がふさわしいかって話でしょう?」

「そ、そんな話してねえよ! 嫁さんなんて気が早すぎる!」

「いや、人生なんて結構あっという間なんだから、今のうちから真剣になって考えていた方が良いわよ」

「な、何を考えて任務に臨んでたんだよ! 真面目にやれ!」

「真面目も真面目、大真面目よ、だって将来の義妹になるわけでしょう?」

「真面目のベクトルが違う!」

「勇次、一応聞いておくけど……」

「な、なんだよ……?」

「三尋くんも候補に入るの? それはそれで今の時代ありだとは思うけど」

「入らねえよ! そもそも忘れていたわ!」

「三尋、酷い言われようだにゃ……」

 又左がぼそっと呟く。御剣が苦笑交じりで頬杖をつく。

「ははっ……」

「あ、お姉ちゃんは勇次には隊長さんがお似合いだと思うわ」

「んなっ⁉」

 御剣が驚き、頬杖をついていた手がズレる。勇次が困惑する。

「な、なにを言ってんだよ⁉」

「面倒見の良い人があなたには合っているのよ……って、ど、どうしたのよ?」

「ちょ、ちょっと、姉ちゃん疲れているみたいなんで! 今日のところは失礼します!」

 勇次が一美を連れて、慌てて隊長室を出る。御剣がため息をつく。

「ふう、全く……」

「う~ん? 御剣、なんだか顔が赤くにゃいか? どぅにゃ⁉」

「うるさい……」

 御剣が素早い手刀を又左にお見舞いする。
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